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過熱する『オーラの泉』批判、ゴールデン進出は失敗!?

「宗教の価値が曖昧な日本では、『自分さえよければ』というような考え方が横行しがちですが、守護霊の存在を知ると、利己的な考え方がなくなります。私は前世を知ることで、自分の苦手なものに対する原因がわかり、前向きに生きられるようになったんです」

 と話すのは、人気バラエティ番組『国分太一・美輪明宏・江原啓之のオーラの泉』(テレ朝)を支持する、江原信奉者、“エハラー”の女性だ。

 自称スピリチュアル・カウンセラー江原と美輪明宏がゲストを霊視し、前世や未来をズバリ言い当てる同番組は、今年4月にゴールデンタイムに進出した。だが5月下旬時点で、バラエティ番組部門の週間視聴率ベスト10に食い込んだのは4月21日放送のSP版のみ(ビデオリサーチ調べ)で、決して好調とは言い切れない模様。

そんな中、江原が牽引してきたスピリチュアルブームに対し、「Newsweek日本版」(5月16日号)が批判の声を取り上げたり、精神科医の香山リカ氏ら著名人や、宗教関係の学会、科学者からも問題視する声が上がるなど、どうやらブームに陰りが見え始めているようなのだ。

 このムードを後押ししている背景に、今年2月、全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下、全国弁連)が、昨今の行き過ぎた霊感番組に対し、その是正を求める要望書を、民放連や日本放送協会、BPO(放送倫理・番組向上機構)、NHK、各民放キー局に提出したことがある。これは『オーラの泉』『天国からの手紙』(フジ/不定期放送の特番)のような霊感番組が、各局が準ずる、民放連の定める放送基準──具体的には、放送基準の第7章の「宗教を取り上げる際は、客観的事実を無視したり、科学を否定する内容にならないよう留意する」、第8章の「占い・運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」など──に明らかに反するとして、番組の是正を要請したもの。全国弁連の紀藤正樹弁護士は、次のように語る。

「テレ朝の言い分は、『江原がやっていることは、宗教でも占いでもない』なのですが、これはまったくの詭弁ですよ。我々の申し入れを受けて、4月21日放送分より、『「前世」、「守護霊」は現在の科学で証明されたものではありません。人生をよりよく生きる、ひとつのヒントです』というテロップが番組の最後に表示されるようになりましたが、是正措置はこれのみです」

 テレビ局にとってご都合主義ともいえる、こうした言い分がまかり通っているのも、民放連がその機能をほとんど果たしておらず、事実上、番組作りが各局の自主的な判断に任せられているからだと、紀藤弁護士は言う。

「本来、テレビ局は『報道機関』であり、たとえバラエティ番組でも、取材に基づかない内容は放送してはいけないはず。視聴率が取れるからといって『あなたの前世はヨーロッパの騎士』だの、検証不可能かつ有意性のないことを断定的に報じるべきではありません。今のテレビ局は、“報道機関の仮面をかぶった、バラエティ集団”ですよ。報道機関のふりをして、視聴者を信用させすぎる。現にその悪影響は出ており、霊感番組の世界観を利用した、悪徳な霊感商法の被害が増加しています。統一教会に至っては、勧誘の際、教団の名を隠して各地のビデオセンターに誘いだし、ゲストを教化するために『天国からの手紙』などの録画を使用しているんです」(同)

 そこで、当の江原氏に、番組が霊感商法の呼び水になりつつある現実を、どう受け止めているのか伺うべくオファーしたところ、取材拒否。江原氏に代わり、前出のエハラーの女性が、こう反論する。

「騙されるのは本人次第なので、江原氏のせいにするのは違うと思います。『AVビデオを観ると性犯罪が起こるから、AVビデオの生産を廃止しろ』と言っているようなものですよ」

 確かに、先般の「あるある捏造」問題しかり、テレビの情報を鵜呑みにする視聴者の姿勢にも問題はあるだろう。しかし、視聴者に情報をフィクションとして受け止める余地を与えるためにも、今回なされた『オーラの泉』のテロップ処置は、あまりにお粗末ではなかろうか。ゴールデン進出によって、これまで見過ごされてきたブームの闇が明るみになってきたとは、皮肉な話である。(遠藤麻衣/「サイゾー」7月号より)

最終更新:2008/06/06 15:32
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