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声優業界の“パワハラ”事情(後編)

水樹奈々や平野綾など、オリコントップ10 常連のアイドル声優も多く、声優人気はいまだ高い。しかし、業界大手アーツビジョン社長の淫行事件をきっかけに、ファンの間で声優業界に対する不信感が強まっている。謎多き、この業界の実態とは?(後編)


今も相変わらず厳しい労働環境

 通常、声優は地道にオーディションを受けたり、同じ事務所の人気声優とのバーター出演などで仕事を得ているという。だが、ほとんどの声優事務所が出来高払いなので、そのような仕事の取り方では、生活が安定しないのだ。

「そこそこ名の知れた声優でも、アルバイトをしていますよ。声優のギャランティは、『ランク制』で決まっていて、たとえば、最低ランクの新人が30分のテレビアニメにレギュラー出演する場合、1回のアフレコの基本出演料は1万5000円程度。これに目的別使用料、テレビであれば放映料80%が加算されますが、そこから事務所にマネージメント料などを引かれ、最終的に貰えるのは2万円を切るくらい。アフレコは、あったとしても月4回くらいなので、当然声優としての収入だけじゃ生活できません」(元声優)

 ランク制とは、日本俳優連合(以下、日俳連)と日本音声製作者連盟との間で決められた出演料規定のこと。日俳連に加入する声優事務所の所属声優のランクは、経験実績などで決定し、ランクが高くなるほど出演料も上がる。

 ただ、声優の待遇は、これでも良くなったほうだという。アニメの制作現場は今も昔も予算が少なく、そのしわ寄せが声優に来ていた。そのため、日俳連と声優らが、過去にストライキやデモ行進を行い、ギャランティアップを勝ち取ってきたのである。

「近年はアニメのタイトル数が増え、ゲームなどの仕事も増えてきました。でも、いまだ予算の厳しい現場では、ギャラの高いベテランは使われにくい状況にあります。そのため、自分のランクを下げて仕事しているベテラン声優もたくさんいる」(前出・元声優)

 さらに、こんな声もある。

「下手なアイドル声優より、ベテランのほうが厳しい。アイドル声優はCDなどの物販で稼げますから。60年代前半から70年代に活躍したベテラン声優で、最後は貧しさにあえぎ、餓死同然に病死された方もいます」(前出・B氏)

 声優を取り巻くこうした厳しい状況を見るにつけ、今回、業界の〝ドン〟が起こした事件が、ひたむきに頑張っている声優たちをいかに裏切り、傷つける愚行であったかがわかるだろう。

「この件で、業界にいる者すべてがそうだと見られがちですが、信念を持って真面目に取り組んでいる人も大勢います。非常に悔しい」(前出・A氏)

 アニメDVDビジネスも行き詰まり、また、90年代に盛り上がりを見せた声優ブーム時ほどの勢いはないにもかかわらず、志願者だけは飽和状態という、決して明るくない声優業界の現在。職権を乱用し、のんきに女のコの下半身を触っている場合ではないのである。この罪は重い。(小石川光希/「サイゾー」8月号より)

最終更新:2008/06/06 15:55
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