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仕組まれてた? 倒産した新風舎を“買った”文芸社の真の狙い

20080312_shinpusha.jpg東京・青山の新風舎オフィスがあったビル

 今月6日、民事再生を模索していた自費出版系出版社「新風舎」が、同じく自費出版系大手の「文芸社」に事業を譲渡し、破産手続きに移行することが各所で報じられた。産経新聞などによれば、今後文芸社は、新風舎とすでに自費出版契約を結びながら、本が完成していない著者約1000人に改めて出版契約を提示することになっている。譲渡額は明らかにされていないが、一説には4000万円とも言われている。

 今回の新風舎騒動は、かねてより業界の一部で囁かれていた「自費出版ビジネスはヤバい」という印象を一般にも広く知らしめた。また、「文芸社以外の出版社は事業引継を固辞した」とも報道されている。では、この逆風が吹く状況下で、わざわざ文芸社が新風舎の事業を引き継いだのは、なぜなのか?

 文芸社に聞いてみると、「このような事態に心を痛め、著者さまの気持ちを考えて、我々で出版のお手伝いさせていただこうと考えております」とのこと。引き継いだ顧客への対応など、細かい点についてはノーコメントだった。これが本当なら美談だが、一方では、次のような噂があるのだから穏やかではない。

「今回の破綻は、新風舎から書籍を出版していた著者から、当初の契約より大幅に少ない数の書店でしか販売されなかったとして、民事訴訟を起こされたことが発端ですが、以前から、文芸社サイドの人間が、新風舎で被害にあった人をあおって訴訟を起こさせたのではないかという噂が出回っていたんです。自費出版系の出版社では、『いかに出版志願者を集めて発行点数を増やし、契約金を稼ぐか』が、最重要課題。その中で文芸社と新風舎の大手2社は、顧客のパイを取り合ってきたライバルですからね。片方が倒れれれば、一気にシェアが増えるでしょう」
(新風舎関係者)

 また、新風舎の事業内容に対して早い段階から疑義を呈していた写真家の藤原新也氏も、自身のブログで「このことはいまだにその真偽のほどは不明だが」と前置きした上で、「この問題の炎上(編註:新風舎商法の被害について、ネット上で情報が流布されたこと)に関しては新風舎と競合関係にある文芸社に関連のある者が油を注いでいるという情報が複数もたらされてもいた」と書いている。さすがにそれは考え過ぎと思えるが、「そうした噂と合わせて考えると、今回の譲渡劇も、筋書き通りに進んだと思えてしかたがないですね」と前出の新風舎関係者は訝しがる。

 ある出版関係者によると、文芸社が事業譲渡の際に支払ったといわれている4000万円をペイするには、新風舎から引き継いだ著者のうち、5~6割以上が文芸社からの出版を希望しなければならないだろうという。だが、それも決して不可能な数字ではないようだ。著者たちは、追加料金を支払うことで製作中だった作品を文芸社から出版することができるが、改めて提示された契約で合意できない場合は作品を返却される。その場合、あらかじめ新風舎に支払った出版費用は返ってこない。それならば、追加負担をしてでも出版しようと考える人はいるだろう。特に文芸社は、徹底的なコスト管理により、低料金で自費出版を行える体制を持つ反面、出費の大半は、出版希望者を集めるための宣伝・営業費だという。そんな同社からしてみれば、4000万円で約1000人の顧客候補を抱えることができる新風舎からの事業譲渡は、決して高くない買い物だったのだろう。

業界最大のライバルがいなくなった今、文芸社は果たして自費出版業界の“巨人”として、その責任を果たすことができるのだろうか。自費出版志願者の受難が、これ以上続かないことを願うばかりだが……。

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最終更新:2008/03/13 10:48
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