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日本経済を破壊する“巨艦”メガバンクがついた嘘の正体

ufjmitsubishi.jpg総資産187兆を超える、三菱UFJフィナ
ンシャルグループの本社ビル

 たった2年前の春のことだ。バブル崩壊後の不良債権問題が片付いたメガバンクは、2006年3月期決算において、それぞれ約1兆2066億~5200億円の最終利益を計上、大手銀行合算の最終利益は、バブル景気前を含めて過去最高を記録した。これを受けて大手マスコミは、「バブル崩壊後の痛手からメガバンクが立ち直った」と喧伝、東京・日本橋本石町の日銀本店内にある金融記者クラブに姿を見せた各メガバンクのトップは、「これからは攻めの経営に転じる」と、一様に笑顔を見せた。

 それから2年。たった2年で、一転、メガバンクトップの笑顔は凍り付いてしまったかのように見える。アメリカの低所得者向け住宅ローンの焦げ付きに端を発するサブプライム問題で、メガバンクの業績は大打撃を受け、07年9月中間期におけるサブプライム関連損失額は、3メガバンク(三菱UFJ、みずほ、三井住友)合計で、約5000億円に達した。大損失を被ったメガバンクは、一度は足を踏み出した「攻めの姿勢」から後ずさりせざるを得なくなる。

 このサブプライム問題についてメガバンクのトップは「投資に失敗した」と弁明しているが、銀行事情に詳しいあるエコノミストは、「今回の問題は、投資の失敗などといった小さな問題ではない」と指摘する。

「『バブル崩壊後の苦境から抜け出せない』というイメージをまき散らしながら、一方でここ数年のメガバンクは、儲かりそうな話とあれば、サブプライムローンに限らず、なんにでも手を出してきた。その最たるものが消費者金融。リターンの大きさから、各メガバンクは競って消費者金融に貸し出しを行ったほか、系列にも信販会社といったノンバンクを持つに至った。銀行の社会的責任などハナから度外視し、儲かることのみを考えたこうした事業展開が、結果的として、今回のサブプライム問題のような大損失を生じさせたといえる」

 この結果を見れば、「バブル崩壊後に苦しんでいたメガバンク」などというイメージは、失笑ものの嘘だとわかる。メガバンクがつき続けてきたこうした嘘が、サブプライム問題によって
白日の下に晒されたというだけなのだ。

「国益」などどこ吹く風
権力争いに奔走する各行トップたち

 そもそも、バブル崩壊自体が大銀行の嘘によって深刻化したということを忘れてはいけない。バブル景気の真っただ中、「儲け話に乗り遅れるな!」とばかりに野放図な融資を行い、その後のバブル崩壊で業績が悪化した貸出先から回収できない不良債権が大問題となったことで、日本にはどん底の不景気が訪れる。だが、責任を取りたくない銀行経営者は、「不良債権はこれしかない」と過少な額を発表。不良債権の全貌を隠し続けたことで、むしろ損失が膨れ上がることになり、問題は悪化の一途をたどった。不良債権問題の解決には、02年に小泉純一郎政権下で竹中平蔵金融担当大臣(当時)が作成した「金融再生プログラム」で抜本処理を迫るまで、実に10年近い時を要した。この異常さは、今回のサブプライム問題の震源地となった欧米の金融機関が、損失の全容を開示するまでに1年しかかからなかったことを見ても、十分に理解できる。

 この未曾有の金融危機を回避するために政府が金融機関に投入した公的資金は、98年以降だけでも、35機関に対して計12兆3869億円に上る。自らの失敗を血税で尻ぬぐいさせた上に、さらに大銀行は、「事業の健全化のため」という名目で個人や中小企業への貸し渋りを進めた。そして、貸し渋りで余った資金をサブプライムローンへの投資や消費者金融への貸し出しに振り分け、着々と懐を肥やした結果が、冒頭で述べた06年3月期決算での、あの最高益という訳だ。

 大銀行のことしか考えないバブル崩壊後のこうした後処理は、銀行と官僚が一体となって進めてきたものである。例えば、公的資金注入行は、国に経営健全化計画を提出し、収益がその計画を3割以上下回ると業務改善命令が出されるなど、国の経営監視下に置かれる。しかし金融庁などは、銀行の収益状況ばかりを見て、銀行による不当な貸し渋りなど、肝心の国民生活に直結することには目をつぶってきた。さらにこの間、官僚や政治家は、「金融機関が駄目になれば、国民生活も成り立たなくなる。金融機関が健全性を取り戻すまで、我慢をしてもらいたい」などといった主張を繰り返してきた。しかし、サブプライム問題による損失で再び銀行の経営が危なくなる中で、すべての言葉は嘘だということがわかったのである。

 しかし、この状況に至ってもなお、メガバンクの目はいまだ預金者や国民には向かない。バブル崩壊後に合従連衡を繰り返してメガバンクが誕生したのは、巨大な資本を持つ銀行に成長することで国際競争力を備えた邦銀を作ることが、結果として日本の国益になるという理屈から。しかし、いざ実際にメガバンクができてみると、国益になるような事業にはまったく手を付けないばかりか、各行トップは権力争いばかりを繰り広げているありさま。「サイゾー」6月号では、その内実を3大メガバンクにりそなを加えた4行について詳述しているので、ぜひ参考にされたい。

「大きくなりすぎたメガバンク内で、旧行出身者同士が主導権争いを繰り広げている。みずほなんかは、その良い例、というか悪い例だ(苦笑)。いわばメガバンクは、彼ら経営陣にとっては権力争いのための面白い“おもちゃ”にすぎない。国益や国民、預金者なんて、はなから眼中にはないのだろう」(金融関係者)

 いわば、メガバンクという存在自体が、嘘そのもので塗り固められているというわけなのである。
(千代田文矢/「サイゾー」6月号より)

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最終更新:2008/06/12 09:00
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