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新時代・あらゆるコンテンツは「ニコ動」でイジられる!(後編)

mikumikunisiteyanyo.jpgニコ動の人気作品でよく見られる“弾幕”
ユーザー同士の同調具合に驚かされる

――かつては、ゴールデンタイムであれば、視聴率20%前後の番組が多かった。ところが今では、ゴールデンタイムでも平均10%前後という状況です。

白田 単純に言えば、余暇の過ごし方が多様化したということでしょう。また、ひとつの集団が同じ番組を見る時代ではなくなっています。「恋愛至上主義」の若者は『あいのり』(フジ)を見て、オタクは深夜枠のアニメを見るように、集団の性質に応じて番組が視聴される時間帯が分断されている。視聴者の嗜好が細分化し、それにテレビ局の番組編成が対応するのならば、ゴールデンタイムが存在しなくなるはずです。そして、幅広い一般的な視聴者を狙わなければならないゴールデンタイムの番組は、どの集団も満足できない中途半端な内容になるはずです。


 また、何よりテレビ受像機が、必ずしも番組視聴用として使われなくなった。DVDやゲームのモニターとして使われている時間のほうが多いんじゃないでしょうか。もはや学生たちの間ですら「あの番組見た?」が通じる時代じゃない。「ああ、その時間は『ひぐらしのなく頃に』をプレイしていた」と言われるのがオチです。そしてそこに、インターネットや携帯の登場です。テレビは時間を奪い合う最大のライバルたちの出現に、有効な対抗手段を講じなかった。従来の広告収入に頼ったビジネスモデル、政府から与えられた放送免許という既得権にあぐらをかいていたのです。

――NHKは番組のネット配信をスタートしましたね。

白田 それはNHKのビジネスモデルが、広告収入ではなく視聴料収入ベースだからやれることでしょうね。民放の場合、番組のネット配信というのは、既存のビジネスモデルや既得権の崩壊に繋がりかねない危険な賭けだと思います。しかし、ネットのもつコンテンツ拡散能力とコミュニケート能力を、放送メディアのもつ一斉同報能力と組み合わせる事業モデルを開発できなければ、遠からず衰退をむかえることは避けられないでしょう。

供給されるコンテンツを
享受する時代は終わった

――今後、テレビをめぐる状況はますます悪化していくと思われますか?

白田 もはや、ゴールデンタイムのバラエティやクイズ番組を、それ自体が楽しいものとして見ている古典的な視聴者は少ないのではないかと思います。学生たちとの会話から判断するに、彼らは、番組を批評や批判の対象として客体化し、ツッコんだり、茶化したりして楽しんでいます。そうした視聴スタイルが主流になってくれば、時間を問わず、たくさんの見ず知らずの人間と、テレビ番組を「ネタ」にツッコんだり茶化したりする経験を共有できる「ニコニコ動画」の優位は明白です。

 ネットが、今の若者の多くにとって、コミュニケーションツールになっている。「コンテンツを著作権で縛って一切いじらせない」という考えでは、これからの時代、元のコンテンツさえ見てもらえなくなるのではないか、と私は思います。角川グループが、自社のコンテンツを利用した2次創作であるMAD動画(既存の動画やアニメーションなどを個人が編集・合成し、再構成した映像)を個別に審査して、優秀なものには制作者に報酬を払う、という動きを見せています。こういった新しい試みを私は評価したいですね。

 もう、供給されるコンテンツをそのまま享受する時代は終わったんです。コンテンツを加工したり、「ワロタw」とかコメントをつけたりしたほうが、コンテンツそのものから生じるコミュニケーションに加えて、さらにコミュニケーションが増えるわけですから、より楽しいはずです。もっとも、「You Tube」や「ニコニコ動画」にしても、コストがかかり収益はそれほど出てないようです。しかし、ビジネスモデルの構築次第で、今後は高い利益を生む同種のサイトも出てくるでしょう。

――では最後に、今後のテレビ業界の進むべき方向性を教えてください。

白田 人間は、他人とコミュニケートすることを楽しむものだ、という前提を受け入れて、コンテンツをどのようにコミュニケーションの中に組み込んでいくかを考えるべきでしょう。もちろん、コンテンツがコミュニケーションの引き金になる品質や価値を持つためにも、コンテンツ制作者には対価が支払われなければなりません。しかし、現状のテレビ業界では、実際に番組を制作しているのは下請けの制作会社であるにもかかわらず、テレビ局が権利を保持している。コンテンツを作る能力を持つ制作会社は、テレビ局との距離をはかりつつ、徐々にネットなどの新規市場にシフトしていったほうが良いと考えています。テレビ局からお金が落ちてくるのを待っているのではなく、コンテンツを作っているのは自分たちだという矜持を持つべきです。こうした動きを促進するためにも、著作権法は、実際に創作している人たち、働いている人たちの利益を守る仕組みへと改善されるべきです。もっとも、今後作られるコンテンツは、受け手側で“イジられる”ことを前提としたものでなければならないでしょうが。
(若松和樹・構成/「サイゾー」7月号より)

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白田秀彰(しらた・ひであき)
1968年、宮崎県生まれ。一橋大学法学部卒業。法政大学社会学部准教授。専門は情報法、知的財産法。著書に『コピーライトの史的展開』(信山社)、『インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門』(ソフトバンク新書)。

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