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本

若者こそコミュニケーションの達人?『適当な日本語』



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金田一秀穂『適当な日本語』 アスキー・
メディアワークス(アスキー新書)

 世間では、若者の日本語力が低下していると言われて久しいが、考えてみれば日本語のみならずあらゆる学問でそんなことが言われている。その原因は「ゆとり教育」の責任だとか、携帯電話やネット文化によるものなど、様々な論説があるようで、ネットで『学力低下』と検索すると55万件ものヒットがあり、その原因分析に関しての議論が色々となされているのがよくわかる。

 日本語学者の金田一秀穂は、今の若者の日本語力低下には少し違った考えを持っているようである。日本語学者のイメージからはおよそかけはなれた『適当な日本語』というタイトルの本著において、いわゆる日本語力の低下=能力の低下ではないと言っている。


若者の国語力についてさまざまに言われますが、彼らは少なくともそれ以前の世代に比べて、コミュニケーション能力がかなり高くなっていると思えます。話すことが、格段に上手になっています。それは、言葉への柔軟な態度によるものです。決められた言葉遣いを必ずしも必要としないのだという、悪く言えば“いい加減”さは、コミュニケーション能力を伸ばし、物怖じせず、元気に日本語を使いこなしているように思えます。(本文引用)

 つまり、言葉がコミュニケーションの道具として使われるものだとするならば、その能力の高いと思われる若者こそが、まさに「適当」な日本語を使っていると言えるのではないだろうか。

 タイトルにある「適当」という言葉には、「適切」であるという意味と「いい加減」であるという意味があるが、著者はその2つの意味を加味して、「別に正しくなくても、より良く伝わるならばそれでいいじゃないか」と言う。本書は、まさに「適当」な日本語のススメなのである。

 本著では、世間に流布している日本語の誤用について丁寧に解説されているが、結果として若者を擁護する側に立っているのが面白い。たとえば、若者言葉の悪癖の象徴のように言われる略語については、「シンパ」という言葉を取り上げてこう言っている。

 団塊の世代は、若かりしころ、日本語にさまざまな新しい語彙を取り入れました。(中略)  全共闘世代が使って広めた言葉としては、他にも、「ゲバ棒」「バリスト(バリケードストライキ)」「大学紛争」「団交」などなど。  彼らは自分と違う意見に対しては、全て「ナンセーンス!」の一言で片付けました。いまどきの若者は語彙が少ない、などと団塊の世代に言われたくありません。(本文引用)

 また、昨今よく耳にする「KY」という言葉についても、「ローマ字書きにして、その頭文字を取る」という方法については、なんとも野暮ったい作られ方の言葉だとしながらも、取り上げたマスコミが勝手に騒ぎ立てただけであって、実際に若者たちの間で使われているのかと疑問を呈している。
 マスコミにだけ流れて、実際には誰も使わなかった言葉に、例えば「チョベリバ」(超Very Badの略)というのがあります。若者言葉には、ある種隠語的なことがあって、他の人にまで広く知られてしまうと、かえって使わなくなるという傾向があります。  いずれにせよ、空気を読むというのは、日本文化の非常に中心的な伝統的態度であって、それは今の若者に始まったことではありません。しかし今の若者は、大変日本人的な日本人であるということなのだと思います。(本文引用)

 つまり、若者言葉が大人に理解されないのは、隠語的要素を含む造語を操る高度なコミュニケーション能力についていけないから。そう言っているとも感ぜられる文章である。しかし理解できない言葉を使われるとイラっとくるのは誰もが同じではないか。変に背伸びをして難しい言葉を使うよりも、誰もがわかりやすい言葉を使うほうが、社会一般ではバリアフリーであるし、よりストレスがない。恐らく多くの人たちがそう思っているはずだ。

 そして、そういった歩み寄りがなされた言葉こそが空気を読めている日本語であって、適切な日本語なのではないだろうか。

(文/テルイコウスケ)


適当な日本語


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2008.09.01 月  



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