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13の世界遺産を巡るファンタジー『落下の王国』に要注目!

rakkanooukoku.jpg『落下の王国』/(C)2006 Googly Films, LLC. ALL Rights Reserved.

 メディアもこぞって取り上げ、興行ランキングでも上位に入っている……そんな”話題作”を見にいってガッカリすることも少なくないが、逆にあまり話題になっていない作品でも、見てみたら意外によかったという映画もある。現在公開中の『落下の王国』は今年のそんな”掘り出し物”な1本だ。

 主人公は映画スタントマンの青年ロイ。撮影中に落馬事故で脚を骨折し、さらに恋人が映画の主演俳優に寝取られて失意のどん底。彼が入院中の病院には、オレンジの樹から落ちて腕を折ってしまった少女アレクサンドラが入院しており、ロイは歩けない自分の代わりに、薬剤室から自殺のための薬を彼女に取ってこさせようと考え、無邪気なアレクサンドラの気を引くために即興で考えた物語を語り始める。その物語は、暴君に反旗をひるがえす6人の勇者たちの愛と復讐の物語だった。

 監督はジェニファー・ロペス主演のSFサイコサスペンス『ザ・セル』を撮った、インド出身のターセム。『ザ・セル』以来となる彼の監督第2作なのだが、前作とは180度も趣きが異なる作品で、これがまた意外な発見。『ザ・セル』はハリウッドのスタジオ製作で、最先端のCGを派手に使ったドギツイ映画だったが、一転して本作ではほとんどCGは使われていない。しかも、この映画は監督個人の資金で製作された、いわば自主制作映画なのである。俳優もほぼ無名で、撮影もコツコツと4年がかりで行われたという。映画の時代設定が「昔々のロサンゼルス」ということで、主人公たちが入院する病院は南アフリカで撮影。それ以外のシーンでは、フィジー、ナミビア、バリ、インド、イタリア、チェコ、トルコ、アルゼンチン、ペルーなど、ワンカットだけ使われた場所も含めれば、撮影地は24カ国に渡り、その中には13の世界遺産も含まれているとか。

 これらのロケ地は、主にロイがアレクサンドラに語って聞かせる物語の中のシーンで使われるのだが、青々とした南海に浮かぶ孤島から、灼熱の砂漠、欧州の中世の建築物、エッシャーの騙し絵を思わせる幾何学的な寺院などが登場し、CGやセットの助けを借りずに幻想的なファンタジー世界を描き出している。主人公の青年と少女の交流もほほえましく、少女役のカティンカ・アンタルーは撮影当時5歳。彼女はロイ役のリー・ペイスが本当に骨折して動けないと誤解して信じ込んでおり、監督はあえてそれを信じ込ませたまま、彼女の演技というよりも、反応そのものをとらえていったそう。そんな彼女の無垢な表情もまた、数々の絶景とともに心に残る。監督は「物語るということ」をテーマに本作を製作したそうで、おそらく子供におとぎ話を語って聞かせたことのある大人なら共感を覚えそうだし、話を聞く子供の想像力の豊かさが、傷つき、疲れた大人を助ける。

 色鮮やかだが優しさにあふれたイマジネーションの世界は、知らず知らずのうちに心に焼き付けられる。上映館数が少なく、公開から1カ月が過ぎているのでそろそろ終了してしまう劇場もあるかもしれないので、お見逃しなく。
eiga.com編集部・浅香義明)

作品の詳細は以下より。
『落下の王国』
『ザ・セル』

ザ・セル デラックス版

ターセム独自の映像美を堪能。

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最終更新:2008/10/13 00:10
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