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「コミックボンボン」名物編集長×『プラモ狂四郎』作者

今こそ『ガンダム』を凌駕する新しいキャラが生まれるべきだ!!(前編)

bonbonmain.jpg写真/江森康之

 昨年末、休刊を発表した「コミックボンボン」。30代の男性であれば、かつて「コロコロコミック」(小学館)と双璧を成した月刊少年マンガ誌として記憶に残っている人も多いだろう。そんな同誌の人気を牽引していたのが『プラモ狂四郎』である。ここでは、同誌元編集長・池田新八郎氏と同作・著者のやまと虹一氏が再会。「ボンボン」休刊から児童マンガ誌の行方まで、不振の続く業界についてを語り合った。

──創刊は81年秋。当時は90万部を売り上げていた「コロコロ」が月刊少年マンガ誌では独り勝ちの状態でしたが、「ボンボン」では3号目から『プラモ狂四郎』がスタートし、同誌の快進撃が始まります。

【池田新八郎(以下、池田)】 創刊当初はあくまでマンガが中心で、アニメ化される予定だったジョージ秋山さんの『スパットマンX』を柱に考えていたんです。ガンプラは当時から人気があったので、創刊号の巻頭で特集を組んでみたら、そのページがアンケートでトップにきたんですよ。ただ、アニメ『機動戦士ガンダム』のストーリーを基にマンガを作っても、小学生にはまだ難しいだろうと思って、「ガンプラを軸にしたマンガはできないか?」と、特集を担当したフリー編集者の安井(尚志/『プラモ狂四郎』の原作者)さんに相談したのが始まりです。

──作画にやまと虹一さんが選ばれた理由はなぜでしょうか?

【池田】 何人か候補はいたけど、ガンダムは”メカ”なので、どうしてもカタい感じがしてしまう。だから、劇画タッチよりもやまとさんのような柔らかいタッチがいいだろう、と判断し、お願いしたんです。

【やまと虹一(以下、やまと)】 でも、当時は企画が二転三転して、安井さんから原作をもらったのは締め切りの3日前で、しかもカラー付き33ページ。実は、お仕事の依頼があったときガンプラを作ったことどころか、アニメの『ガンダム』すら見たことがなかったんです。ですが、「マンガ家として、ここで一発当てなきゃ田舎に帰るしかない」という瀬戸際だったんで、描くしかないと思いましたね。ただ、連載当初はバンダイから編集部に資料用のガンプラが送られてこなかったので、ただでさえ品薄だったガンプラを求めて、担当編集者が問屋さんから関東一円の模型店を駆けずり回ったり、新商品の発売日には僕も子どもに混ざって早朝から模型店に並んだりしてたんですよ。まさか、ガンプラブームに拍車を掛けたその作者が、ガンプラを求めて店頭に並ぶなんて(苦笑)。

【池田】 創刊号は15万部スタート、それが1万部、2万と部増えていき、1年後には50万部。連載も人気が出て、安井さんがMSV(モビルスーツバリエーション)【註】を考案して、モビルスーツの種類も増加、そうしてバンダイも次第に協力的になってきましたね。

【やまと】 おかげ様でコミックスも、1巻は初版5万部だったのが、すぐに増刷を重ねて、4巻までの累計で100万部を記録……6巻の初版は26万部でした。それに併せて、前の巻も増刷されるため、講談社で一番売れているコミックスだった時期もありましたね。

●契約書はなく口約束だけ? サンライズとの版権契約

──さて、マンガ業界でメーカーと組んで仕掛けていく手法というのは、『プラモ狂四郎』が最初でしょうか?

【池田】 そうでしょうね。私たちも『プラモ狂四郎』の成功例から、小学生をターゲットにした”マンガのあり方”を学んだところがあります。特に、小学校低学年だとストーリーを理解するのには限界があるので、ホビーの要素を盛り込んだ手法は鉄板となりました。それに、当時はサンライズとの版権契約もあいまいで、特に契約書を交わさずに口約束みたいな形で進んでいましたよ。連載当初は、サンライズに著作権料を支払っていなかったし(笑)。

【やまと】 その証拠に……というワケじゃないけど、当時のKC『プラモ狂四郎』のコミックスには、サンライズのコピーライト表記すら入ってなかったですね。今では考えられないことでしょうけど。

【池田】 途中からは掲載料という形でいくらかお支払いするようになったんですけど、それも高い金額ではなかった。『ガンダム』のストーリーそのものを使用しているわけじゃなく、ガンプラという商品をマンガでアレンジしただけだから、サンライズも当時は判断しかねていたんだと思うんですよ。

【やまと】 逆に、”パーフェクトガンダム”や”武者ガンダム”といった『プラモ狂四郎』から生まれたモビルスーツに関して、(サンライズやバンダイから)著作権料を頂くこともなかったですね。安井さんと相談して、名前を残そうという話で、「企画・協力/やまと虹一・安井尚志・講談社」とクレジットを入れてもらうことだけが条件でした。まさか、こんな事態になるとは……(笑)。

──ずいぶんと牧歌的な時代だったんですね(笑)。ですが、今やサンライズはバンダイの傘下に入り、あらゆるメディアと組むことによって生まれる膨大な版権料を見ても、『ガンダム』はひとつのビジネスとして確立されています。その利権を「講談社で独占したかった」という思いはなかったのでしょうか?

【池田】 私は「ボンボン」の前は児童誌「テレビマガジン」の編集部に所属しており、当時からサンライズとの間にパイプがありました。その頃はサンライズにも「講談社の系列雑誌で『ガンダム』を掲載してほしい」という意向があったから、やり取りしているうちに、自然と”講談社のサンライズ担当”といった立ち位置になったんです。そのせいか、当時公開された『機動戦士ガンダム 劇場版』は、講談社の雑誌で連合して10大都市試写会をやるくらい深い関係になったのですが、他誌でも講談社が窓口になって仕切っていたのでイヤな顔をされたものです(苦笑)。

 私自身は、「ここまで育てた『ガンダム』の企画は講談社独占で展開し、他社では絶対にやらせたくない」と思っていましたが、「ニュータイプ」(角川書店)からガンダムの特集を組みたいと相談された時は、「ボンボン」と読者層が重ならないから承諾したんです。編集者として先方の気持ちはわかるし、そもそも著作権者のサンライズが決める問題で、なんで私の所へ相談に来るのか不思議でしたが(笑)。

【やまと】 今となっては、「月刊ガンダムエース」(同)なんかを出している角川さんが独り勝ちですね。「ボンボン」育ちの『SDガンダム』まで、「ケロケロエース」(同)に持って行かれましたから。90~91年には安井さんが先頭になって、ガンダム専門マンガ誌「ガンダムマガジン」(休刊)を講談社から刊行していたんだけど、残念です。来年は「ガンダム生誕30周年」だというのに……。
(後編につづく/構成・大貫眞之介/「サイゾー」11月号より)

【註】『機動戦士ガンダム』モビルスーツに対応した、試作機や局地対戦型機のこと。これらからバンダイとサンライズのタイアップによるプラモデルやグラフィック中心の企画が生まれた。”ジョニー・ライデン少佐用ザクII”や、『プラモ狂四郎』で生まれた”パーフェクトガンダム”などが有名。

●やまと虹一(やまと・こういち)
第3回手塚賞応募作『エレジーママロボット』でデビュ−。「コミックボンボン」(82年2月号)より『プラモ狂四郎』の連載を開始し、ガンプラブームに拍車をかける。現在、講談社文庫『プラモ狂四郎』(全10巻)を刊行中。11月からバンダイより『プラモ狂四郎マニアックス』シリーズを発売予定。「ホビ−ジャパン」で『プラモ狂四郎コラム』連載中。現在は別ペンネームで歴史、昭和史などを執筆中。「続・やまと屋ブログ堂」http://kyamatospirit.blog50.fc2.com

●池田新八郎(いけだ・しんぱちろう)
1942年生まれ。講談社入社後、「少年マガジン」「テレビマガジン」の編集部に所属し、「コミックボンボン」の創刊に参画。「コミックボンボン」「覇王マガジン」などの編集長を歴任し、03年退社。

puramokyoushirou.jpg『プラモ狂四郎』
プラモデルを愛してやまない小学生の京田四郎ら個性的な登場人物が、仮想空間でプラモ同士を戦わせることができる「プラモシミュレーションマシン」を舞台に繰り広げるホビーマンガの金字塔。同作のヒットにより、多くのプラモデルマンガが作られた。

愛蔵版 プラモ狂四郎 【コミックセット】
amazon_associate_logo.jpg

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最終更新:2008/11/15 11:43
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