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藤原紀香の「顔」は誰のもの!? “音事協”に聞く肖像権の行方(中編)

音事協が01年から展開している肖像権啓蒙キャン
ペーンの雑誌広告。業界内だけではなく、一般市
民に広く理解を求めている。

前編はこちらから。

──肖像権の侵害に対して、抗議や法的手段に訴えたような事案としては、どのようなものがありますか?

【音】 80年代に入ってからですが、放送局が番組用に撮影したタレントの写真を商品に無断転用したり、新聞社が広告にアーティスト写真を使用したりしたことに対して抗議をして、謝罪を得ています。その後、雑誌媒体での肖像の使われ方に関しても、出版社側に意識を高めてもらおうと働きかけてきました。そのために、まずは肖像権に関する「協定書」を結んでもらうようお願いしてきています。

──協定書とは、どんな内容なのでしょう?

【音】 肖像権を遵守し、撮り下ろした写真については、個別の権利者に使用料を支払うこと、またその写真を二次使用する際には個別の権利者に許諾を取ることなどを定めています。最近では、ネットでの使用に関しても定めていますね。一度ネットに出てしまうと、拡散するのを抑えらないので、入り口に当たる出版社に対して、使用範囲を守ってくださいと。

──その協定書は、何社くらいと結ばれているんですか? 

【音】 すでに二十数社、媒体数でいうと40媒体以上と結んでいます。会社単位で結ぶ場合と、編集部単位で結ぶ場合がある。芸能記事を扱う頻度が高いところから、お声掛けして協力を仰いでいる感じですね。サイゾーさんとも、そろそろ結びましょうか。

──その打診が来るのは、出版社からしたらうれしいことなのかどうか(苦笑)。

【音】 それは確かにそうでしょう。メディアによってもそれぞれ特色があるでしょうから、協定書の内容についても、こういうことは承諾できるけど、こういうことは難しいというのはあるはず。そのあたりは、個別に覚書で結んでいます。もちろん、記者会見だとか、慶弔事とか、舞台取材のときの写真などに使用料は求めません。報道ですから。ただ、その写真を商業目的では使わないでくださいということです。

●タレントは商品だから事務所は出荷調整をしたい

──たとえば、こういう使用目的であれば、プロダクションとしては肖像権の侵害を主張しないというボーダーラインというのは、明文化できるものなのでしょうか?

【音】 肖像使用の様態がそれぞれ異なりますから、一概に明文化できるとは言い難いですね。私たちは、基準のための基準を作りたいのではなく、プロダクション・ビジネスの本分として、タレントの露出量や露出のされ方をコントロールしたいんです。タレントという商品を抱える側としては、自分たちが入れた仕事によって、タレントがどのように、どれくらい露出するかはわかっている。でも、それ以外に、私たちの手が届かないところで勝手に肖像が使われる。つまり、勝手に商品が市場に出回っているという状況は看過できないわけです。それが、正当な報道や批評目的であれば認めるべきですが、商品の価値やマーケティング戦略を崩すようなものは困る。情報露出の出荷調整だってしたいわけですね。売れているタレントだって、一時期はあえて露出を控えて、飢餓感を煽って一気に出すとか、プロダクション側はいろいろ考えているわけですから。

──そのためのコントロール装置として、肖像パブリシティ権というものを持ち出しているということになると、メディア側の表現の自由を奪うことにならないでしょうか? つまり、自分たちは公正な範囲での使用と思っていても、明文化されていない音事協の判断でいきなり訴えられるようなことがあると思うと、萎縮して、表現の範囲を狭めてしまうのでは?

【音】 そこは大事なところで、いきなり訴えるなどということはしませんし、正当な表現の自由にまで踏み込まないということは大前提です。しかも、我々が杓子定規に肖像パブリシティ権を持ち出さないのは、基本的には相互のスタンスを理解して、妥協点を見つける余地を残しておきたいからです。たとえば、正当な報道目的の記事であれば、我々としては歓迎すべきものではなかったとしても、肖像パブリシティ権を持ち出すことはありません。でも、どこかの雑誌のように、その写真を使って、読者の性的関心に訴えるような記事を書かれたら、これは許せない。その場合はまず、抗議書を出したり、直接会ったりして、こちらの考えを伝える。結果的に我々の考えを理解してくれるメディアが多いので、訴訟にまで発展するケースはほとんどありません。今までに5件くらいです。

──では、音事協内では、どのような過程を踏んで、メディアへの抗議まで行き着くのですか? すべてのメディアをチェックしているわけではありませんよね。

【音】 月に一度、マスコミ委員会が開かれて、そのメンバーが、書店やコンビニなどで入手した雑誌などを持ち寄って、検討するわけです。そこで問題になったものは、次に理事会に上がって、問題ありと判断されたものは出版社側などに対してアクションを起こす。でも、合議制ですから、そこで意見が異なることもあります。会員社が100以上あるわけですから、「これは絶対に許せない」というところもあれば、「これくらいはいいんじゃない?」というところもある。訴訟に踏み切る際にも、積極的でないタレントまで巻き込んでやることはありません。

──出版社とプロダクション側の利害関係や政治的なつながりの有無が、不法行為であるか否かの判断に影響してくることもありませんか? 大手出版社などとは、普段は仕事をこなしている仲なので、見過ごしてあげることが多いけれど、逆にメリットがない出版社は抗議や訴訟を受けやすいという側面が出てくるような気がします。たとえば、「ブブカスペシャル」事件にしても、同誌のような雑誌は他社でもたくさん出しています。過激なお宝写真を多数掲載してきた同社を、一罰百戒的に狙い撃ちにしたのでは? という見方もあるようですが。

【音】 それはありません。コアマガジンに対しても抗議書を送付し、理解を求めるという対応を繰り返していたのですが、それが得られなかったため裁判になって、肖像パブリシティ権を尊重するという条件で和解したことがあったんです。それ以降は、一時、協定書も結んで、肖像使用に関しては、申請を出してもらうようにしていました。ただ、申請される企画に対しては、雑誌全体の内容を考えて、どのプロダクションもNOだった。コアマガジンからの申請は一度も承認されたことはなかったですね。結果的に、コアマガジンは協定書の延長も拒否して、肖像の無断使用をするようになった。中でも「ブブカスペシャル」の内容が過激だったので、音事協系プロダクションのタレントたちが立ち上がって、02年に提訴したわけです。

●作り手やメディアに大義があるかどうかが大事

──コアマガジンの関係者に話を聞いたことがありますが、彼らとしては、肖像パブリシティ権というものは法律的規定がないもので、表現の自由を制限するものではないし、同社の出版物における肖像の使用のされ方は、報道や論評の範囲内という認識のようです。

【音】 確かに、終始どこが悪いんだというスタンスでした。でも、そうしたコアマガジン側の考えは、高裁で否定され、先頃、最高裁でも高裁の判決が認められています。他の出版社も似たようなことをしていましたが、我々が抗議する中で、問題があることを認めて、「次号からやめます」と是正してきた。最近では我々の活動が浸透してきたこともあって、目に余るような肖像の使い方をしている雑誌は、全体的には減ったと思います。その代わり、写真に頼らずに、ゴシップネタを集めたようなコミック本サイズの実話誌のようなものが増えた。と思ったら、判型は小さいんだけど、中は写真だらけというものが出たり……出版社も試行錯誤している感じですね(苦笑)。

──最近も、音事協から厳しく警告を受けて、「芸能スマッシュ」(晋遊舎)のように休刊を決定したという雑誌もあったようですね。

【音】 こちらが「休刊にしろ」と言うことはまずない。自主的に判断されたんでしょう。
後編に続く/編集部/「サイゾー」1月号より)

芸能Smash! 4

休刊に追い込まれた!?「芸能スマッシュ」

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最終更新:2009/04/16 00:02
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