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サイゾースタッフ
チーフエディター/佐藤彰純
エディター/北村千晶
デザイナー/cyzo design
Webデザイナー/石丸雅己※
広告ディレクター/甲州一隆
ライター(五十音順)
竹辻倫子※/田幸和歌子※
長野辰次※/平松優子※
プロデューサー/川原崎晋裕
パブリッシャー/揖斐憲
※=外部スタッフ
愛されアナーキスト・笑福亭鶴瓶が極めた「玄人による素人話芸」とは
『ゆれる』で国内の映画賞を総なめにした西川美和監督による最新作『ディア・ドクター』が6月27日に公開された。医療問題を扱うこの作品で映画初主演を務めたのは、落語家の笑福亭鶴瓶。ある秘密を抱えながら僻村の診療所に勤める医師を熱演している。西川監督は、お年寄りに好かれそうなキャラだという理由で鶴瓶を主演に抜擢したという。
笑福亭鶴瓶は不思議な芸人である。いつも笑顔を絶やさず幅広い年齢層に愛されるキャラクターでありながら、ここぞという時にはテレビでも平気で裸になったり好き勝手に暴れ回ったりするアナーキーな一面もある。テレビタレントとして活躍を続ける一方で、近年は古典落語にも積極的に取り組む姿勢を見せている。
そんな彼が最も得意としているのは、バラエティ番組で見せるフリートークである。彼のしゃべりには、テレビのお笑い芸に必要な要素が全て含まれている。だが、そんな鶴瓶のトーク能力の高さは、一部の視聴者にはあまり理解されていないような気もする。
鶴瓶のしゃべりを好まない人の多くは、彼の話し方が「もたもたしている」「まわりくどい」などと非難の声を浴びせる。確かに、鶴瓶の話の組み立て方は少し変わっている。自分が体験したある出来事の話をするために、一から丁寧に細かい状況説明を挟んでいく。また、しゃべるスピードは遅くはないものの、語り口は決して明瞭ではなく、たどたどしくのろのろと話題が展開していく。これはせっかちな人にとっては耐えがたい芸風なのかもしれない。
だが実は、鶴瓶が長きにわたってテレビの第一線で活躍できているのも、そのゆったりした間合いのおかげなのだ。かつて、『鶴瓶上岡パペポTV』で共演していた上岡龍太郎は、鶴瓶を評して「素人話芸の達人」と言っていた。一見もたもたしているように見える素人っぽい語り口によって、話に妙なリアリティーが生まれる。鶴瓶は3年前にあった出来事もまるで3日前にあったかのように情熱を込めて語ることができるのだ。テレビという場で求められているのは、その種の「素人話芸」である。鶴瓶はそれを熟知しているからこそ、プロの技術であえて素人臭い話芸を極めてみせたのである。
また、このスタイルをとっていれば、途中で話を遮られても問題はない。例えば、『きらきらアフロ』では、共演者であるオセロの松嶋尚美が、しばしば平気で鶴瓶の話の腰を折る。それでも、彼は怒るそぶりを見せながらもそれを受け入れて、松嶋に翻弄されている自分の姿をさらけ出して笑いを取ろうとする。
我々の普段の日常会話では、誰かが他人の話を邪魔したり、話題が途中で脱線したりするのは珍しいことではない。トーク番組でも、そのような日常会話レベルのリアリティをかもし出すことが大事だと鶴瓶は考えている。だからこそ彼は、笑いのためならどんなハプニングやアクシデントも柔軟に受け入れてしまうのだ。
落語家でありながら、「自分の話が邪魔されても構わない」と達観できているのが鶴瓶の強みである。テレビタレントとして鶴瓶に匹敵するような資質を持つ落語家がなかなか出てこない最大の理由はこの点にある。自分の話を遮る共演者ですら利用して笑いに結び付ける貪欲さは、鶴瓶にしか備わっていないものである。鶴瓶の話芸の秘密は、素人芸と玄人芸の絶妙のブレンドにあるのだ。
(お笑い評論家/ラリー遠田)
●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ
日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる"お笑い愛"で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は2009年11月下旬予定。ご期待ください。きらきらアフロ 2008
サマソニにも出るとか出ないとか
●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第37回】島田紳助 "永遠の二番手"を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」
【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは
【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」
【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」
【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由
【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」
【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」
【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」
【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か
【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは
【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が"竜兵会"で体現する「新たなリーダー像」
【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」
【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」
【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由
【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来
【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代
【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中
【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性
【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」
【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在
【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは
【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ
【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者
【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略
【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由
【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」
【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃
【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力
【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」
【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児
【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」
【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ
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【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」
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