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タブー破りのドキュメンタリーDVD

超常現象の疑わしさを突破する未確認の「何か」に迫った映像

satokenji.jpg佐藤健寿氏(X51.ORG主宰)
超常現象等を調査するX51.ORG
http://www.x51.org/)主宰。
フォトジャーナリスト。奇妙な場所・
人・物を追って自ら世界中を取材して
いる。著書に『X51.ORG THE
ODYSSEY』(講談社)がある。

 一般的には記録映像、記録作品とも呼ばれるドキュメンタリー。演出を加えないことが前提であるため、放送コードや倫理規制をも凌駕する多くの名作が生まれた。CBSドキュメントの「ピーター・バラカン」、報道カメラマンの「不肖・宮嶋」ら、ドキュメンタリーに一家言を持つ賢人が、そんなタブー破りのDVDを選出する。

 今、UFOや超常現象の情報や映像は、ネットでいくらでも見ることができますよね。でも、以前は何よりもテレビの影響が大きかった。確かにそうしたネタは科学的に疑われたり、オカルティズムと見なされたりしてきましたが、UFOネタに関しては矢追さんのドキュメンタリー番組の切り込み方は、既存の超常現象モノの概念を超えていました。今回は、そういったオカルト・ドキュメンタリーの概念を打ち破った作品を紹介したいと思います。

 まずは、ファンからDVD化を望む声が多く聞かれ、ようやくリリースされた『矢追純一 UFO現地取材シリーズ』。あらためて観て「こんな内容だったっけ?」という意見もありますが(笑)、89~92年の放送当時はこの番組くらいしか超常現象にまつわる情報がなく、疑わしい映像だとしても視聴者にはウラが取れませんでした。

 しかし、矢追さんが取材を進めていく姿はとにかく迫力があって気おされてしまう。実際にお会いしたことがあるのですが、彼はUFO研究家である前に数字取ってナンボのテレビマンなので、こういうドキュメントの基本は「音」だと言うんです。要は音をバーンとカマして煽り、結論や真贋なんて明らかにしなくてもいいと。その力強い手法は決して色褪せませんね。

 しかしインターネットが登場すると、番組を検証する人が現れ、この手法は通用しなくなってくる。その象徴的な事件が95年に公開された『宇宙人解剖フィルム』です。これは日本でもテレビで放送されて盛り上がりましたが、ちょうどネットが爆発的に普及する時期で、ネット・コミュニティを中心にさまざまな疑問点が指摘されていきましたね。

 そして、06年にはついに映像を作った当事者たちがフェイクだったとカムアウトしたのですが、その騒動の顛末をコメディ調に仕立てたのが『宇宙人の解剖』です。入手した宇宙人解剖映像はフィルムの劣化などの諸事情で発表できなくなったが、すでに買い手がついているためフェイク映像を作らざるを得なくなった、というストーリーなのですが、これが事実に基づく映画と言われています。特典映像には解剖映像の製作者レイ・サンティが登場して「ホントに解剖映像はあった」と証言していますからね。宇宙人やUFOに関する混沌とした状況を良くも悪くも象徴した作品ですよ。

 ネットは情報を得るには確かに便利ですが、情報は錯綜するし、混沌としている。そんな状況の中で、矢追さん的なアプローチではないUFOドキュメントができないかと思って僕が製作したのが『X51.FILES』です。実際に現地に行って検証するというスタンスなのですが、取材を進めて、矢追さんの凄さがわかりましたね。実はこのときUFOに遭遇したのですが、現場にいた人間は全員ハッキリと目撃しながら、なぜか撮れていなかったんです。自分も昔「スタッフは見たけど撮れていない」というドキュメンタリーを観て「なんだよ、それ」って思いましたが、まさか自分がそうなるとは(笑)。でも一方で、この体験を通じて思ったのは、オカルトやUFOって結局「撮れない」からこそ成立し続けてきたジャンルでもあるということです。未知だからこそ面白いというか。

 ただ、UFOに関するいろんな現場を取材して感じるのは、ジャンルとしての衰退ですね。UFOコンベンションが中止になったり、研究家の高齢化が進んだりしている状況なんです。でも、未確認の何かに対する好奇心というのは人間の根源的な欲求だと思うので、こうした映像やドキュメンタリーにはまだまだ可能性があると確信していますよ。(談)
(構成:灸怜太/「サイゾー」10月号より)

矢追純一UFO現地取材シリーズ DVD-BOX
1989~92年放送/企画・構成・演出:矢追純一/7980円/パップ(日本)

「エリア51」という固有名詞を一躍有名にしたテレビシリーズ。世界各地に残されたUFOと宇宙人の痕跡を追って、現地ロケを敢行する気概に感服。
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宇宙人の解剖
2006年製作/監督:ジョニー・キャンベル/1500円/ワーナー・ホーム・ビデオ(ドイツ/イギリス)

95年に起きた実話を基に、ロズウェル事件で撮ったという宇宙人解剖映像を諸事情により捏造して大金をゲットし、時の人となった2人の青年が描かれる。
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宇宙人の解剖
2008年製作/監督:佐藤健寿/4200円/ビクターエンターテイメント(日本)

ロズヴェルUFO墜落現場やエリア51など佐藤氏らしい取材スポットだが、エリア52があったことに驚き。オール海外ロケという姿勢は矢追氏と通底。
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最終更新:2009/10/05 11:00
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