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“鉄ヲタ”くるりほか全17曲を収録! 無性に旅に出たくなるCD『鉄歌』

tetsuuta.jpg『鉄歌~鉄道会社の歌~』キングレコード

 企業がらみの曲ばかりを集めたコンピレーションアルバムなのに、何とも微笑ましいCDが発売された。タイトルは『鉄歌~鉄道会社の歌~』。日本各地の鉄道会社の社歌、イメージソング、CMソングなど計17曲をセレクトしたもの。企業がらみの曲と聞くと、お金の匂いがプンプンしそうな印象を受けるが、本作に収録されている曲の多くは、鉄道関係者もしくはその路線に愛着を持っているアーティストたちが作詞作曲しており、心をなごませる。南国・九州の雄大なスケール感を伝えるJR九州の名社歌「浪漫鉄道」や、大の鉄道マニアとして有名なくるりの岸田繁が作詞作曲した京急電鉄のテーマソング「赤い電車」など、鉄ちゃんでなくても聴きごたえのある選曲となっている。

 JR九州の社歌「浪漫鉄道」は、国鉄から分割民営化されて間もない1989年に社内公募によって歌詞が採用されたもの。伊藤アキラの補作詞、鈴木キサブローの作曲を経て、旅立つ者の高揚感、さすらい人の感傷的な心象風景が巧みに楽曲化されている。ハイ・ファイ・セットの美しいハーモニーもあって発表当時から全国の鉄道ファンの人気が高く、現在も特急「かもめ」「ソニック」で博多駅到着時の接近メロディとして車内に流れている。九州出身者の多くは、この曲を聞くと自身の青春時代や故郷に残してきた初恋の相手のことを思い出して涙ぐむという。

『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)の”タモリ鉄道クラブ”でゴールド会員に認定されているほどの鉄道マニアであるくるりの岸田繁だが、とりわけ京浜急行に愛着を持っていることを知った同鉄道会社の広報宣伝担当者から依頼を受け、多忙なスケジュールの合間を縫って「赤い電車」を完成させた。東京のローカル路線を愛情たっぷりに歌い上げているところは、ロングラン上映中の映画『色即ぜねれいしょん』でぐうたらな家庭教師役を等身大で演じている岸田らしい。

 声優のまこぴぃが歌う「デキちゃんはトコトコ走る」は、車両の検査費用捻出のため”ぬれ煎餅”を売り出したことで有名な銚子電気鉄道の名物電気機関車への応援歌。1922年に製造された高齢電気機関車デキ3型に捧げる曲として、サウンドクリエイターのみらあじゅが作詞作曲し、インターネット上で流していたところ、銚子電鉄の耳に届き、正式な応援歌として採用されたものだ。

 本作の監修を務めているのは、ジャーナリストの弓狩匡純(ゆがり・まさずみ)氏。日本唯一の”社歌評論家”としてノンフィクション本『社歌』(文藝春秋)を2006年に上梓したのに続き、今年1月に世界初となるコンピレーションアルバム『社歌』(キングレコード)を監修したところ、数ある日本の社歌の中でもJR各社をはじめとする鉄道関係会社のものには列車が走る光景が目に浮かぶ佳曲が多いことに気付き、本作の企画に至った。

「鉄道会社にまつわる名曲を集めた本邦初の試みです。『社歌』は”元気が出る”楽曲が中心でしたが、『鉄歌』はどちらかと云えば”癒し系”、しっとりとしたラインナップとなりました。日本国有鉄道(旧国鉄)の社歌『鐵道精神の歌』は1935年にレコーディングされたもの。SP盤を音源にしているので音は決してクリアではありませんが、歴史的価値があり、鉄道ファンなら一度は聞いておきたいレアな曲。また、地方のローカル線の応援歌は、路線の存続化を願う地元の人たちの想いが曲と結び付いており、味わい深い手づくり感のある曲が多いのも印象的ですね。許諾が下りるのに時間がかかったり、権利関係がはっきりせず、今回のアルバムに収録が間に合わなかった曲も多いんです。第2弾でそういった隠れた名曲もそろえてほしいという鉄道ファンからの声が寄せられています」(弓狩氏)

 本作は告知をほとんどしていないにも関わらず、情報に敏感な鉄道マニアたちのお陰で初動は好調らしい。『鉄歌』は赤字ローカル線だけでなく、CDが売れなくなっている音楽業界への応援歌にもなっている。
(文=長野辰次)

『鉄歌~鉄道会社の歌~』
監修は著書『社歌』(文藝春秋)が話題となった弓狩匡純氏。収録各曲の制作秘話やエピソードが満載の解説付き。小田急電鉄ロマンスカーのCMソング「ロマンスをもう一度」、東武鉄道スペーシアCMソング「私を連れて帰ろう」など鉄道マニアを泣かせる名曲17曲を収録した本邦初となるコンピレーションアルバム。キングレコードより10月7日より発売中。税込み定価2500円
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最終更新:2009/10/23 17:00
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