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アイドル映画専門映画監督・梶野竜太郎の【アイドル映画評】第12幕

セルフアフレコの美学『カンフーシェフ』加護亜依フォーエヴァー!

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アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。

●今回のお題
セルフアフレコの美学 加護亜依フォーエヴァー!
『カンフーシェフ』
監督:イップ・ウィンキン 女性主演:加護亜依

 幼い頃は、目に入れても痛くないくらい可愛くて可愛くてしょうがない娘が、国民的アイドルになり、「目に入れても痛くない」と思うファンが万単位で増えていく。

 だが、しかし、その娘は、思春期のちょっとした過ちを犯し、報道されてしまう。

 普通の女の子なら、親に引っ叩かれてごめんなさいなんだけど、国民的アイドルという立ち位置ゆえ、万単位の人に心を引っ叩かれてしまった。そんな女の子が心の底から反省し、自分の立ち位置をよく理解し、もう一回、がんばってみよう! という熱い思いに心から拍手し、その向上心を理性と感情に混ぜ合わせ、脳を撹拌(かくはん)させながら観る。

 加護亜依ちゃん主演の『カンフーシェフ』の美味しい観方です(長いよ、前振り)。

sundome02.jpg『カンフーシェフ』
加護亜依、ヴァネス・ウー、サモ・ハン・キンポー共演のカンフーアクション。料理と武術の達人であるシェフ・ピンイーが、料理学校を卒業したばかりのケン、おてんば少女のインらと共に、かつて料理長であった自分を失脚させた男に料理対決を挑む。(Amazonより引用)
(C)2008 My Way Film Co.,Ltd/Nihon Sky Way INC.

 加護ちゃん、久々のスクリーン復活! アニメを除けば、2002年の『ミニモニ。THE(じゃ)ムービー お菓子な大冒険!』以来!

 まぁ、『ミニモニ~』は、スクリーンを利用したスーパーのキッズコーナーみたいな作品でしたが、逆に言えば、ミニモニ。しかできない、老若男女全ての層を網羅したアイドルムービーだったわけです。

 当時の劇場には、小学生の女の子と、その親たちが後列に固まり、前列には、アイドル好きの男子が固まり、最前列はハロヲタが陣取っていた。

 でも、今思えばすごいメンバーですよ。矢口真里、辻希美、加護亜依、ミカ、高橋愛のミニモニ。に、当時、ハロプロキッズで、今はBerryz工房や℃-uteで活躍するメンバーが多々登場していましたからね。そりゃ、ヲタ系も、子どもも、親も、観に来ますよね。

 こんなバラバラな客層を最近も観たな……あ、『イングロリアス・バスターズ』だ。

 タランティーノをリスペクトする映画バカと、ブラピ好きの女子、ここまではいいけど、昼の上映とかになると、そこに、”ドイツ兵モノ系は必ず観る系”な、お年寄りがワンサカ。誰かタラちゃん作品は真面目戦争映画じゃないって教えてやれ~!

 話が反れましたが、そんな全世代を牛耳っていたメンバーの一人、加護亜依ちゃんが、あの頃を彷彿させる勢いでがんばっているのです!

 物語は、カリスマ・シェフのホアン・ピンイー(これ! サモハンですよ! デブゴンですよ!)が、実兄の息子の陰謀で村を追われてしまう。やがてピンイーはレストラン”四海一品”へ。

 その店は美人姉妹のチンとイン(これ、加護ちゃん)が、父の遺したこの店を守っていた。

 しかし、料理人に恵まれず、店の先行きは堕ち込むばかり。ピンイーは成り行きから自ら料理長として店の立て直しに乗り出し、料理学校をナンバーワンで卒業し、凄腕ながら、心がこもっていない青年ケンが、そんなピンイーの下で修行に励むのだったが……。

 ずばり、撮影も、演出も、展開も、今の香港映画というよりは、ジャッキー&サモハン&ユン・ピョウ時代のテイスト。

 つまり、ダサさが懐かしい感じ。でも、特殊効果は現代のハイクオリティ。そんな香港映画の”いいとこ取り”な皿の上で加護ちゃんが暴れまくりです。

 もちろん、この手の映画なので、メインは男同士のカンフー&クッキングバトル(料理の鉄人みたい)なんですが「これだけの出演で、ポスターのTOPに持ってくるなよぉ~」という映画が多い中、そこそこがんばってるんですよ。

 特に、スーパーマーケットでの加護ちゃんのアクションシーンはかなり見ごたえありますよ! 買い物に行く加護ちゃんと仲間たち、そこでさっき店で暴れていた実兄の敵たちと出くわして、いきなりケンカ売るんですから!

 けど、「おおっ!! やるじゃねーか! 加護ちゃんっ!」と、拳を空へ向けたくなる活躍!

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 そして! 今作品を! あえて! アイドル映画評に! なぜ持って来たかったかと言うとっ! 前回の『第11幕 ”机のなかみ”』とは真逆の面白さ。自分の声に、自分でアフレコするという、異例の違和感吹き替え版で観ることができるのです!

 加護ちゃんは芝居が上手いとは言えないが、それなりに面白い演技をする。でも、それは日本語を喋りながら、演技が進むので観ている方も、自然に物語が進む。しかし、この作品、加護ちゃんは日本語で喋っていない。香港映画なんで当たり前。ってことは、日本上映時には、アフレコが必要。もちろん、声はご本人。

 しかし、いくら自分で演技した映像とはいえ、アフレコは難易度が高い。そこで、加護ちゃんのアフレコ作品を思い出してみよう。

 『ハム太郎』やミニモニ。のアニメシーンで聴かせてくれた声……それは、もう過剰なくらいオーバーヴォイス! この映画の中でも、芝居上では「何するのよ」ってレベルの表現なのにアフレコでは「ぬわにぃするのよぉぉぉぉおおぉお!」ってくらいオーバーヴォイス! もちろん、日本語ではないので、口パクも合ってない映像なので、”物すごい”面白い作品になっている。言うなれば、『ドラゴンボール』第1話の悟空の映像で、声だけ『ドラゴンボールZ』の最終回になった。そんな感じ。要は、”スーパーサイヤキャピ系加護亜依”が、楽しめるというわけ。

 と、まあ、解説はこれくらいにしておいて、これは本当に楽しかった♪ 映画も楽しく、日本人しか楽しめない加護ヴォイスも楽しめちゃう。もっとたくさんの人に観て欲しい一作です。

 それにしても、このセルフアフレコ、面白い手法ですよ。この手でもう1回観てみたい映画とかヴァージョン代えで売れるかも。私が監督した『ピョコタン・プロファイル』とか、5年後、大人になった木嶋のりこにアフレコしてもらおうかな。(マジで)
(文=梶野竜太郎)

カンフーシェフ [DVD]

誰がなんと言おうと加護ちゃんは健在です。

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●かじの・りゅうたろう
映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。第2回したまちコメディ映画祭 in 台東にて、新作『魚介類 山岡マイコ』を上映。2010年に長編版として劇場上映が予定されている。現在、ニコニコ動画チャンネル『魚介類TV』(毎週日曜日20時~)に出演中。
詳しくは→http://mentaiman.com/
ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/

●アイドル映画監督梶野竜太郎の【アイドル映画評】INDEX
【第11回】鈴木美生ちゃんの真の萌声(もえごえ)が男の脳髄直撃!『机のなかみ』
【第10回】バカエロ映画の極×2『まぼろしパンティ VS へんちんポコイダー』
【第9回】「電車男」でカニバリズムで格闘映画の傑作『カクトウ便 VS 謎の恐怖集団人肉宴会』
【第8回】トップアイドルの制服(もちろんミニ)とM男君の快感『ときめきメモリアル』
【第7回】知的に低脳な『秘密潜入捜査官 ワイルドキャッツ in ストリップ ロワイアル』
【第6回】『インストール』──女の子が部屋でひとり。何をしているのか、見たくないか?
【第5回】『お姉チャンバラ THE MOVIE』──ビキニvsセーラー服の恍惚
【第4回】『デコトラ・ギャル奈美』──古きよき時代のロマンポルノ・リターンズ
【第3回】『リンダ リンダ リンダ』──王道的傑作に潜む”多角的フェチズム”
【第2回】『妄想少女オタク系』──初心者歓迎!? BLの世界へご案内
【第1回】『すんドめ』──オナニー禁止とチラリズムの限界点

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最終更新:2009/12/28 11:33
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