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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第29回】

小沢一郎いよいよ逮捕寸前!? 反小沢と検察批判に割れる週刊誌を読み比べ

ozawataiho.jpg「週刊現代」2月6日号

●第29回(1月19日~1月25日発売号より)

第1位
「小沢一郎逮捕へ 私はこう読む」(「週刊現代」2月6日号)

第1位
「暴走検察 小沢逮捕はあるのか」(「週刊朝日」2月5日号)

第3位
「トタンのボロ家で焼死した『桑田真澄』実の父」(「週刊新潮」1月28日号)

 PL学園で一緒だった清原和博が、あれほど貧しいのは見たことがなかったと述懐したことがあるぐらい、桑田の少年時代は貧しかった。この特集でも「砂糖水がご馳走だった」と書いているが、米穀店の店員で大酒のみだった父親にとって、妻と三人の子どもを養うのが、どれほど大変だったかは想像がつく。

 野球好きだった父親の夢を叶え、息子・真澄が、念願の巨人に入団すると、妻と姉弟も大阪八尾市から出て、東京へ移り、翌年、夫婦は離婚する。

 その頃桑田は、父親に毎月100万円以上の仕送りを続けていたようだが、やがて土地投機に手を出して失敗し、17億円もの巨額の借金を背負ってしまう。

 桑田を将来の監督候補と考えていた読売グループは、債務を肩代わりしてくれ、年俸から返済分を天引きされることになるのだが、そのために父親への仕送りもストップしてしまった。

 父親は借金を重ね、大阪にいられなくなって浜松に引っ越し、小料理屋から喫茶店に衣替えして、去年から、桑田の背番号だった「18」と店名を変えて、細々とやっていたたようだ。

 浜松ジャイアンツという少年野球チームを指導し、明るくて面倒見がいい親分肌で慕われていたという。その父親が、自分の誕生日の前日、自宅が火事になり、焼死体で発見されることになる。享年67歳。

 桑田はその日の夕方、父親が住んでいた家を訪ね、「現場に手を合わせると、2階に上がり、すぐ降りてきました。その間、およそ3分。すぐに報道陣の囲み取材に移りました」「終始無表情で、10分少々でその場を去った。あっさりしたものだと感じました」(スポーツ紙記者・新潮)

 だいぶ前に、日本テレビの氏家齊一郎社長(当時)からこんな話を聞いたことがある。

「江川卓を巨人の監督にしたいんだが、彼も、不動産投資で大きな借金がある。巨人も、桑田の借金を肩代わりしたものだから、江川の分まで持つわけにはいかない。江川も、借金さえなけりゃ監督にしてやれるのだが」

 江川は、借金を返すためにテレビタレントの道を選んだ。桑田は、巨人を退団後、大リーグに入団し、引退してからは早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学して、近い将来、巨人軍の監督になるための勉強をしている。

 桑田は、父親が亡くなったトタン屋根の家を見て、幼い頃の貧しかった生活が一瞬蘇り、今ある幸せを絶対手離したくないと思ったのだろうか。私たちの世代には、いろいろなことを思い出させる記事である。

「沖縄県名護市の市長選が24日あり、日米が合意した同市辺野古への移設に反対する新顔の稲嶺進氏(64)=民主、共産、社民、国民新、沖縄社会大衆、そうぞう推薦=が、移設を容認する現職の島袋吉和氏(63)を破り、初当選を確実にした。鳩山内閣は5月末までに移設先を決める方針だが、辺野古への移設は極めて困難になった」(1月25日のアサヒ・コムより)

 小沢一郎幹事長は検察に、鳩山由紀夫首相は普天間基地移設問題で、追いつめられている。

 小沢幹事長と検察との「勝負」の行方は、まだまだ予断を許さないが、週刊誌では、「逮捕される派」と「検察おかしいぞ派」が鮮明になってきた。

 検察のやり方に疑義を唱える代表は「朝日」。今週も、検察批判の先鋒である郷原信郎元検事とジャーナリスト魚住昭氏との対談で、こう語り合っている。

(以下、引用)

郷原 私は、石川議員への家宅捜査や逮捕は、現場である特捜部の暴発を検察上層部が統制できなくなったものだと考えています。検察がこんなことを、最初から組織として明確な意図をもってやったとは思えない。いや、思いたくないです。

魚住 でも明らかに意図的にやったことなんです(笑)。検察は結局、小沢氏を立件できずに失敗に終わった、昨年3月の西松建設の違法献金事件での失地回復をなんとしてもせにゃいかん。計画的な『犯罪』ですよ、この小沢つぶしは。(中略)

魚住 この問題は、検察と小沢氏、どちらが勝てばいいという話しじゃない。検察が勝てば、この国で政権交代が起こった意義がほとんどなくなってしまうし、仮に小沢氏が生き残っても、国民の政治不信はいやが応でも高まる。どちらにせよ、議会制民主主義はもうダメだという話しになってしまう。そうしたらもう選挙なんてまどろっこしいことはせず、テロとかクーデターに走る連中も出てきますよ。まさに戦前と同じようにね

 今号では、「『権力という魔物』東京地検特捜部 検察の内幕」という特集で、検察批判をしている「ポスト」だが、内容がちと弱い。

 表紙に「小沢はつかまる」と大書した「現代」は、グラビアで「小沢一郎 ワルの履歴書」を組み、立花隆氏と、最近はテレビで検察擁護の立場で発言している元東京地検特捜部長・宗像紀夫氏の対談「小沢一郎逮捕へ 私はこう読む」を掲載している。

 この対談が行われたのは、小沢氏が検察の事情聴取を受ける前だが、宗像氏は、「検察は小沢の事情聴取には期待していない」と言い切る。

「宗像 いま新聞紙上などで言われているのは、小沢氏が買った深沢の土地購入代金4億円の一部に、水谷建設から来たヤミ献金が含まれているか否かということですが、私は特捜部の狙いはもっと大きなところにあると思う。ずばり、今回の事件は東北地方における公共工事利権の全容、これを解明することでしょう。ゼネコンのウラ献金システム、利権構造を明らかにすること、これを最終着地点に見据えていると思います」

 立花氏は、今回の事件は、一部の現場の検察官の独走ではなく、「検察官一体の原則」により、検事総長をはじめ、地検・高検の幹部が集まって、あらゆる角度から検討を加えたものだという。

「立花 いま問題になっているのは、小沢が政治資金規正法違反の共犯に当たるかどうか、逮捕された3人の秘書が『小沢の指示、命令』を供述するかどうかですが、私は今回の事件をロッキード事件にたとえると、まだとば口にすぎないと思っているんです。ロッキード事件でも、はじめ田中角栄(元首相)は外為法違反で逮捕され、『別件逮捕だ』とか、『形式犯で元首相を逮捕するべきではない』などという批判が猛烈にあった。しかし結果的には、検察は5億円の授受を立証し、受託収賄罪で有罪(1、2審)にもっていったわけでしょう。今回もまだ事件全体の広がりというか、構図が見えないところで特捜部批判をしてもあまり意味がないと思いますね」

 立花氏は、現行の政治資金規正法は十数度も改正され、それの違反で逮捕起訴され、有罪服役までいくケースが増えてきていると指摘し、「つまり、公共工事のような公のカネを使ってやる事業に関与して、そこからかすりをとる(献金を受ける)という悪質行為を、いまやワイロ罪ではなく規正法で追及する時代になったということです」

「宗像 そうですね。ここ5年、10年の特捜の捜査手法を見ていると、かつてのような贈収賄や脱税でなく、政治資金規正法違反が主になってきている」

 角栄も、76年にロッキード事件が明るみに出たとき、会見を開いて疑惑を全面否定したが、その3カ月後に逮捕されてしまう。立花氏には、小沢の姿が、その時の角栄とダブって見えて仕方ないという。

 新聞が、検察のリーク情報で書きまくっているのは周知の事実だが、週刊誌は、さまざまな情報をもとに、多様な見方を提供するのが役割である。小沢疑惑を考える上で、この2本は欠かせないと思うので両方を1位にした。

 小沢幹事長の剛腕恐怖政治も怖いが、戦前の特高警察のような司法の暴走はもっと怖い。どちらか一方に偏らないためには、いくつかの週刊誌を読み比べることをお勧めする。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

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最終更新:2010/01/25 18:00
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