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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第45回】

忘れてはいけない悲劇「水俣病」その50年目の笑顔が語りかけること

motoki0526.jpg「週刊朝日」6月4日号

●第45回(5月19日~5月25日発売号より)

第1位
「桑原史成が撮った 水俣の50年」(「週刊朝日」6月4日号)

第2位
「女が嫌いな『鳩山総理』」(「週刊文春」5月27日号)

第3位
「『大関琴光喜』が『口止め料1億円』と脅された!」(「週刊新潮」5月27日号)

 いやー、感動した。もちろん、鳩山由紀夫首相が沖縄で謝罪したことではない。「オークス」で、G1史上初の同着1位の瞬間だ。

 1番人気のアパパネが直線中程で、先に仕掛けた5番人気のサンテミリオンに並びかけ、抜き去ったと思ったところ、サンテミリオンが二の足を使って差しかえし、鼻面を揃えてゴールに飛び込んだ。

 斜め後ろから見ていると、ややサンテミリオンが優勢に思えた。騎乗している横山典は全身で喜びを表し、アパパネの蛯名はややうなだれていた。

 10分を超える長い写真判定。私は、馬単で両馬から買っていたから、特にそうだったのだが、できるのなら同着にしてやれよ、そう思っていた。それほど素晴らしいレースだった。

 二人の騎手が、お立ち台で抱き合うシーンも感動的だった。女子ゴルフで、約2年ぶりに優勝した不動裕理が、通算47勝目とは思えないぐらいはにかんでインタビューに答えている姿も、印象的だった。

 それに比べると、大相撲は一強総弱時代で見るべきものはなく、話題になったのは「新潮」の記事ぐらいだった。記事によれば、大関琴光喜は、5年以上前から野球賭博に手を染め、通算の負け金が数千万円に上っているという。それが暴力団関係者に漏れてしまって、口止め料を払えと脅されているのだ。

 仲介役は阿武松(おうのまつ)部屋の元力士で、琴光喜が相談を持ちかけた大嶽親方(元関脇貴闘力)も、長年の野球賭博の上客だったというのだ。相撲協会関係者が、こう語る。

「コトは琴光喜1人の問題ではない。相撲界の”野球賭博汚染”。今回のトラブルをきっかけに、その実態が暴かれる可能性があるのです」

 さらに、この騒動に登場する人たちは、今年2月の相撲協会理事選挙で、貴乃花親方を推したグループの関係者ばかりだというのだ。

 「ポスト」によると、「情報の出所は、貴乃花改革を快く思わない武庫川理事長側近のPではないか。2月の理事選直前に貴乃花親方や大嶽親方の”暴力団同席パーティ”の写真が暴露されたことがあったが、それと同様の構図だ」。だとすると、今度の件だけは、驚くほど迅速に相撲協会が関係者の事情聴取を始めたのも、貴乃花派を追い落とすためなのか。

 またまた相撲界の暗部が、この記事をきっかけに明るみに出るのだろうか。それとも、保身を考える連中が、臭いものには蓋をして、知らん顔をするのか。これからに注目である。

 話は変わるが、私は、まさかここまでひどいとは思っていなかった。鳩山首相のことである。普天間基地移設問題で、「少なくとも県外」と繰り返していたのに、何もせず、漫然と日を過ごしたあげくが、この様である。沖縄の負担を軽減するために、アメリカ側と、日米同盟、日米安保条約の見直しを含めて、膝詰め談判してみようという意欲さえ見せなかった。早くその座を辞したほうが、彼のためでもある。

 「文春」が、一家言もつ女性3人に、鳩山氏を嫌いな理由を語らせているが、これがすこぶる面白い。

 佐藤愛子氏は、「そのうち鳩山さんは友愛ということをいい出した。こりゃアカンと私は思いました。友愛が理念だなんてそんな政治は成り立ちますか? 理想主義の学生ですよ、まるで。政治家はアッチもわかり、コッチもわかる。わかってるんだけれども犠牲に目をつむって断行しなければならないという人間性を越えたところで生きなければならない、たいへんな仕事だと思うんです。きれいごとの世界ではないんじゃありませんか?(中略)鳩山さんは学校の先生になればよかったんです。言葉は丁寧だし優しいし、PTAのお母さんたちには大いにウケると思います。でも校長は無理かもね」

 曽野綾子氏はこういう。「説明能力、表現能力ともに、鳩山さんは不足なんでしょうね。(中略)たとえば、『コンクリートから人へ』と一言でおっしゃいますが、渇水で苦しんでいる国が今、この瞬間どれほどあることか。西アフリカのペナンという国へ行ったら、泥水で洗濯したり、さらに内陸では牛のおしっこで人が顔を洗っているんです。それほど水不足の国が、世界中にたくさんあります。日本がそうなっていないのは、先人の努力でダムを作り、国家としての備えができたおかげでしょう。それに対して感謝の言葉もなく、すべてを否定するような言い方は無礼ですね」

 中野翠氏は、鳩山氏の奇抜なファッションセンスに突っ込んでいる。「鳩山首相の公務でのファッションで有名なのは金色ネクタイだ。占い好きで知られる幸夫人がラッキーカラーとして選んだといわれる。金色のタイなんて店でめったに見たことがない。どこで買っているんだろう。鳩山夫妻は『政界オカルト夫婦』と呼ばれているらしい。これまた一般国民ならどうでもいいが、一国の運命を左右する立場にある人には、ホドホドにしてもらいたい趣味である」

 1位は、写真家・桑原史成氏が、穏やかな不知火海をバックに、37人の水俣病の患者や遺族たちを写した、「朝日」のカラーグラビアである。

 桑原さんが、初めて水俣を訪れたのは、写真学校を出たばかりの1960年の夏だった。その頃の報道は、水俣病をほとんどローカルニュースとして扱い、原因企業のチッソ(当時は新日本窒素肥料)に抗議する漁民たちに冷淡ですらあった。

 差別と偏見が強く、家族が水俣病になったことを隠す人が少なくなかった。桑原氏は、最初はカメラを持たずに訪ね、信頼関係を築いてからシャッターを切ったという。

 こうして撮られた幾多の写真が、水俣病を全国に認知させる大きな力となったのだ。

 それから50年。今回の集合写真を撮るために、桑原氏は、患者の家を一軒一軒訪ねて、参加を呼びかけた。

 われわれ日本人が、決して忘れてはいけないことがいくつかある。そのなかでも、次世代に語り継いでいかなければならない大きな「悲劇」の一つが、水俣病である。うららかな春の日差しの下、石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」が流れるなかで撮られた人たちの表情は、思いの外、屈託なく見える。それは、長い間苦しんできてやっとたどり着いた、一瞬の「安寧の時」を切り取っているからかもしれない。多くの人に見てもらいたい写真である。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

水俣病の50年―今それぞれに思うこと

終わらない戦い。

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最終更新:2010/05/25 15:00
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