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本

食材・量・奔放な人々すべてが旅人の度肝を抜く『沖縄ディープインパクト食堂』



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『沖縄ディープインパクト食堂』
(著:カベルナリア吉田/ブックマン社)

 琉球王国として、古くから独自の文化が栄えてきた沖縄。

 ラフテー、ミミガー、スーチカー、ドゥルワカシー......など料理名からも分かるように、その食文化は本土とはまったく違う。とりわけ、昔ながらの地元の人向けの食堂には、ヤギの刺身、豚の顔のスモーク、ウミヘビの汁などが、看板メニューというわけでもなく、平然と登場し、どひゃーん、と旅人の度肝を抜いてくれる。

 そして、そういったお店の大きな特徴として、初めて訪れてもお店の人がものすごくフレンドリー。沖縄には「イチョリバチョーデー」=「会えば兄弟」という言葉があるぐらいで、人と人の距離が近い。

 『沖縄ディープインパクト食堂』は、そんな沖縄の食堂32軒を紹介したガイドブック。名護十字路のど真ん中の居酒屋では、店に入った途端、アニキと呼びたくなるギョロリとした目つきのマスターに「おう! どこから来たんだよ!」と声をかけられ、幼児から大人までが集まる沖縄特有のパーラーでは、カエルのから揚げを注文すると、美人おかみが「はい、わかガエル、生きカエル、よみガエル!」のかけ声とともに、飛ぶ寸前ような姿のガニ股カエルの脚を運んできてくれる。

 都会から沖縄に訪れると、最初はその近さに戸惑うかもしれないが、慣れてしまえば、それが楽しさに変わる。  

 著者は旅行作家のカベルナリア吉田氏で、沖縄を初めて訪れて早17年のベテラン。現地のコーヒーショップでコーヒー片手に11時間を過ごしてしまうほど、「イチョリバチョーデー」を満喫し、取材をしている。 

 紹介されているお店は、吉田氏が自分の足でコツコツと歩き周り、探し当てたお店のみ。掲載をお願いしたとき、ほとんどのお店の人から「え、ウチなんかでいいの?」と聞かれたというほど、当本人たちは何の特徴もない普通のお店だと思っている。
 
 けれど、どう考えても"普通"の枠を飛び出してしまった、草原に忽然と現れるシンデレラ城のような喫茶店や、床も天井も突き破る巨木が生えるジャングルうなぎ屋料理店など、明らかに見た目のインパクトがすさまじい店もあり、沖縄の人々の普通は、何かが違う。

 何かが違うと言えば、料理の量の多さと安さも半端ではない。バイキングなのに500円、富士山のようにうず高く盛りつけられたオムライスが小鉢付きで500円、沖縄ではちょっとお高めの食堂では、カボチャと玉ねぎでマリネした魚の南蛮漬け、海ぶどうとマガキ貝白身魚のお造り、ニンジンシリシリーとハンダマ、カボチャのそぼろがけ、これが前菜で、オジサン(魚の名前)のマース煮、青パパイヤのグラタン、大根とコンニャクの田楽、味噌汁、金時豆入りご飯、デザートの羊羹、アロエベラのワラビ餅風、コーヒー付きで1000円。前菜だけで腹がパンパンになりそうなフルコースが味わえたりする。

 さらに、読んでいて個人的に気になったのは、誌面に中でさりげなく主張する、沖縄の看板や張り紙写真たち。とくに目が離せなくなったのが、食事だけでも利用できる民宿のトイレに張られていたという謎の「トイレ法」。

「昨日いただいたご馳走は昨夜私があれほどぐっすり眠っていた間にも一刻も休まず消化され今血となり肉となり骨となり栄養となり今日1日どれだけ働いても全然疲れを知らないエネルギーとなった そして常に完全な健康体として今その不審物だけをスムーズに排泄させていただいたのである......(まだまだ続く)」(トイレ法より)

 この謎のトイレ法自体はともかく、メインの話以外にも、ひそかに笑え箇所が散りばめられているので、それを探しながら読み込むのも良いかも。

 本書では、楽しいエピソードを伝えるだけでなく、沖縄のステーキ事情ではアメリカとの歴史的背景を考えたり、ヤギを食べるのは人がたくさん集まる席が多いなど、沖縄の食文化についてもしっかり書かれているので、沖縄という県をいろんな角度から知ることができるはず。あ~、沖縄に行きたい!!
(文=上浦未来)


●カベルナリア吉田(かべるなりあ・よしだ)
1965年北海道生まれ。早稲田大学卒業後、読売新聞社、情報雑誌『オズマガジン』増刊編集長などを経て、2002年よりフリー。沖縄と島めぐりを中心に、全国を徒歩、自転車、ローカル線、船など「急がない手段」で歩き、雑誌や単行本に紀行文を発表している。近著は『沖縄の島へ全部行ってみたサー』(朝日文庫)、『ひたすら歩いた沖縄みちばた紀行』(彩流社)、『1泊2日の小島旅』(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。島旅雑誌『島へ。』でエッセイ連載中。趣味はバイオリン、レスリングなど。


沖縄ディープインパクト食堂


ディープ!


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2010.08.09 月  



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