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写真集『発光都市TOKYO』出版記念

写真家・野口克也が空の上で考えたもう一つの東京

ht01.jpg空から見たTOKYOはこんなにも美しかった!
(c) Katsuya NOGUCHI

 建設中の東京スカイツリーはにょきにょきと育ち、めまぐるしく変わり続ける都市・東京。そんな東京の夜景を上空から見下ろした写真集『発光都市TOKYO』(三才ブックス)が発売され話題となっている。上空1万フィートから見下ろす東京の夜景は圧巻の一言に尽き、六本木、歌舞伎町、羽田空港に平和島など、いつもの見慣れた東京とはまた別の景色が広がっている。この写真集の著者が、空撮紀行番組『空から日本を見てみよう』(テレビ東京系)などのテレビ番組でも活躍する航空写真家・野口克也さんだ。「年間700時間は空の上にいる」という彼が眺めた東京の夜とは?

 「東京の夜は格段に美しいんですよ。美しくもあり同時に迫力も感じます。この感覚はちょっと言葉にしづらいものがあります」と話す野口さんは東京生まれ。空から見る東京の街は、幼い頃から親しんだ地上からの視点とはまったく異なっているという。「当然の話ですが、明るい場所は人工の場所、暗い場所は自然の場所です。光で溢れる東京の夜景にぽっかりと空いた明治神宮や新宿御苑などの闇は、さながらブラックホールのように思えてくるんです」という比喩は航空写真家ならではだろう。

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 元々、”普通”の写真家を志し、世界各国を訪れていた野口さん。しかし、幼い頃からパイロットになるという夢を諦めきれず、日本に戻りライセンスを取得。そして、フォトグラファー兼パイロットという特殊な肩書きを武器に、空撮写真の専門家として一躍その存在を知られるようになる。普通のパイロットの2倍にもなる年間700時間以上も各地の空を飛び回り、日本を中心に都市や自然を撮影し続けているというから、その熱意には敬服するばかりだ。ところで、その裏には人知れない苦労も存在するのだろうか?

「やっぱり寒いことですね。空を飛んでいるので、地上とは比べ物にならないくらい寒いんです。また、フォトグラファーとしての苦労は、フレームを決めることでしょうか。地上での撮影と異なり作画の自由度がある種無限にあるので、うっかりするとボーっと見とれてしまって、スピードも求められているのに考え込んでしまうのです」と、その悩みも空撮ならでは。しかし、そこまでして野口さんが空の上から表現したいものとは何だろうか?

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「建物や都市なども地上にいれば、地面の上からの視点からしか見ることができません。僕は、空撮ならではの構図や、地上では絶対に見ることができない場所・カタチなどを探し続けて飛び続けています」

 そんな唯一無二の表現方法を獲得した野口さんが、今後、空撮をしてみたい都市は上海とドバイだという。「上海は猥雑な中国の雰囲気を残しながらも急速にビジネス都市として発展した街なので、その両面を併せ持っているところが魅力的です。また、ドバイは高層ビルが建ち並んでいるので、空撮写真ならではの三次元的な絵作りに挑戦したくなります」というから、今後の活躍も楽しみだ。

 最後に、生まれ育った東京について、野口さんはこう述べる。

「都市は生き物なんです。人という細胞の動きによって、衰退する場所もあれば栄える場所もあります。栄えた場所は三次元的にも大きくなっていくんです。それが如実に現れているのが東京だと思います」

LT03.jpg(c) Katsuya NOGUCHI

 地面にへばりついているだけでは何も分からない。翼の生えた写真家、野口克也の写真は、もう一つの東京を写すために、今日も空を飛ぶ。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

●のぐち・かつや
1971年東京都出身。写真学校を中退し、当時民主化の波が押し寄せていた東欧諸国へ赴く。日本に帰国後、パイロットのライセンスを取得。その後、ヘリコプター航空会社のカメラマンとして航空写真、空撮映像カメラマンとして全国各地を飛びながら作品を創作する。作品集に『江ノ電ミニチュア散歩』(三才ブックス)、『空から見た”おもちゃ”の街―Tokyo Miniature Collection』(文芸社ビジュアルアート)など。
<http://ameblo.jp/aerophotographer/>

『発光都市TOKYO』
空撮カメラマン・野口克也氏が”東京の夜景”を捉えた写真集。地上の我々にとって見慣れた東京の風景も、光と闇の世界として新たな視点を見せる。発行/三才ブックス、価格/2,100円(税込)
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最終更新:2010/10/19 15:00
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