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サイゾーナイト第2回レポート

宇野常寛がリミッター解除で「テレビドラマ」を語る! 第2回サイゾーナイト開催

IMG_9539_f.jpg左から中川大地氏、宇野常寛、木俣冬氏、大山くまお氏。

※当初(11月4日)掲載した本イベントレポートにおいて、宇野氏の発言として「堤幸彦フォロワーは多いが、そこから10年の間、新しい人材が出てきていないと実感した」「テレビドラマは、堤以降新しいことができないのでは?」という二文を掲載いたしましたが、これは編集部による不正確な記事化であり、上記本文のように訂正いたしました。謹んでお詫び申し上げます。

 サイゾーがマニアックでためになるライブを開催する「サイゾーナイト」の第2回は、カルチャーマガジン「PLANETS」主宰で、気鋭の批評家・宇野常寛氏を中心に、それぞれ個性的な活躍を見せるライター・大山くまお氏、中川大地氏、木俣冬氏の3人をお迎えし、10月27日夜・ネイキッドロフトにて行われました。

 テーマは「テレビドラマ」。誰でもアクセスしやすいゆえに、一歩間違うと「ヌルいカルチャー」と思われがちで、きちんとした批評もなかなか出てこないのが現状のテレビドラマですが、毎クールほぼ全部のドラマの初回をチェックするという宇野氏が、「サイゾーナイト」と銘打って語るからには、「ヌルい」などとは言わせません。冒頭で会場の「Tsudaり禁止」を条件に、宇野氏による「リミッター解除宣言」がなされた徹底ドラマ批評の模様を、ダイジェストでお届けします。

 まずは、ちょうど面白くなってきたところの今クールで、登壇メンバーが注目している作品が話題となりました。

 真っ先に挙げられたのは、月9『流れ星』(フジテレビ系)。宇野氏は「第1のつかみとしては上戸彩のおっぱい以外見るところがない。今後吾郎ちゃんの暴走とか、中野Pらしいはっちゃけに期待」と一刀両断。木俣氏は「韓流ドラマ的。メロドラマ回帰」とコメントするなど、のっけからドラマに対する厳しい見方を示した登壇メンバー。

 そんな登壇者たちが一番注目していたのは、なんといっても、堤幸彦の最新作『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』でした。『ケイゾク』(ともにTBS系)など、数々の名だたるドラマ作品で確固たる地位を築いたものの、最近は『20世紀少 年』『BECK』など、映画での(宇野氏いわく「目も当てられない」)活動が主だった堤幸彦。その彼が3年ぶりにドラマという「ホーム」に戻ってきた時、果たしてどうなるか……? 宇野氏はその感想を、「結局日本のドラマシーンは堤幸彦の衝撃を受けとめきれなかった」と表現。この「堤幸彦問題」は、このライブで最も重要なキーワードとなりました。

 そのほか、大山氏がAKB48・前田敦子がロボット役で出演する『Q10』(日本テレビ系)を今期見続ける予定の作品として挙げ、宇野氏が嵐・二宮和也主演の『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)を「無難な出来」と話しました。

 ちなみに、今年これまでに最終話まで見続けたドラマは、中川氏が『うぬぼれ刑事』(TBS系)、『ゲゲゲの女房』(NHK)、『曲げられない 女』(日本テレビ系)、木俣氏が『JOKER 許されざる捜査官』(フジテレビ)、大山氏が『モテキ』(テレビ東京系)だったそう。ドラマファンの日刊サイゾー読者の皆さんとしてはいかがでしょうか?

 続いて、1980年代から現在までという広めのスパンの中で、登壇メンバーそれぞれが印象に残った作品を複数挙げ、思い入れも含めたドラマ論が繰り広げられました。

 中川氏は『セーラー服通り』(TBS系)、『振り返れば奴がいる』『素晴らしきかな人生』(ともにフジテレビ)といった80~90年代の作品を中 心に挙げ、「ドラマ史の大きな変化はだいたい20年スパン。1970年代後半~80年代前半までは向田邦子、山田太一、鎌田敏夫の作品など、作家性の強いヒューマンドラマの時代だった。そこから80年代後半~90年代前半のトレンディドラマの時代を挟んで潮目が変わって、90年代後半~2000年代には野島伸司、堤幸彦、宮藤官九郎といった次世代の作家たちの台頭によるキャラクタードラマの時代が到来。そして2010年代現在は、もう一度トレンディドラマ時代のような爛熟・模索期に入っているのでは」という、日本ドラ マ史を俯瞰した興味深い論を披露。

 一方、ドラマ・映画・演劇ライターで、『トリック2』のノベライズや『堤っ』(角川書店)の編集など、くだんの堤幸彦に深くかかわる仕事をしてき た木俣氏は、「テレビドラマは、家事をしながら流し見できるように作るものだったので、とにかくインパクトのある場面を作って視聴者の目を引く『ジェットコースタードラマ』が量産された。その流れを変えたのが堤幸彦」と「堤幸彦問題」に言及。そして、「その革命家・堤幸彦の最も美しい革命」と熱弁を振るっ たのが、堤作品のなかでは異色ともいえるベタなラブストーリー、『愛なんていらねえよ、夏』(TBS系)。「ギャグや小ネタに注目が集まることが多いけど、それ以外のところに本質があると思う」と話しました。

 「あまりドラマには詳しくないんだけど……」と謙遜しつつも、「僕が言わないと忘れられそうなものを」と、玉置浩二出演の『キツイ奴 ら』(TBS系)や、高城剛監督・脚本(!)の『バナナチップス・ラヴ』(フジテレビ系)など、知る人ぞ知る作品をチョイスしたのは、大山氏。その中でも イチオシだったのは、安達祐実がカンフーで悪と戦うアクションドラマ『聖龍伝説』(日本テレビ系)。

 安達祐実と言えば『家なき子』(日本テレビ系)ですが、大山氏はあえてこの日本のドラマ界では珍しいタイプの作品を挙げ、「これが成功していれ ば、日本のドラマシーンはまったく別の可能性がひらけていた。『ロード・オブ・ザ・リング』みたいな作品もできていたかも!?」と発言、それに対して中川氏が「『聖龍伝説』がうまくいっている日本もなんか嫌だな!」とツッコむという展開に、会場は笑いに包まれました。

 上記の3人が挙げた作品のほとんどについてコメントしていた様子からも、そのドラマ好きぶりが改めてうかがわれた宇野氏が、ラスト近くに取り上げ たのはNHKの朝ドラ『ちりとてちん』。ドラマファン的には「鉄板」で、大山氏が「テレビドラマという特殊なコンテンツの形態に最もアジャストした作品」 と話すこの作品について、宇野氏は「ヒロインの成長物語としては賛否両論がある」としつつも、「朝ドラマニアかつ上方落語マニアである脚本家・ 藤本有紀さんがふたつの『データベース』を融合させることで魅力的なキャラクターを生み出しているところが素晴らしい」と論じました。

 以上、約3時間にわたってテレビドラマを語った第2回「サイゾーナイト」。第1回は今をときめくSKE48、今回第2回には気鋭の評論家たちを迎 えるなど、その幅広さの片鱗をお見せできたのではないかと思います。次回第3回にはいったいどんな企画が待っているのか!? ぜひご期待ください!
(文=萌えしゃン)

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最終更新:2010/11/08 14:59
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