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「ご自由にお使い下さい」ファンキー末吉、楽曲を無料”開放” 真意を本人に直撃

funkysueyoshi.1207jpg.jpg“怒れるドラマ―”ファンキー末吉氏。
今度はレコード会社にキレた!?

 爆風スランプで活躍し、LOUDNESSの二井原実、筋肉少女帯の橘高文彦らとのバンド・X.Y.Z.→Aのほか、中国でも演奏活動を行うドラマーのファンキー末吉。彼がブッキングマネジャーを務める音楽バーの著作権料の支払いについて、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に意見を申したことでも知られている(記事参照)。

 そんなファンキーに、ある声優への楽曲提供のオファーが来た。彼が作曲した爆風スランプの代表曲、「Runner」のようなライブで盛り上がる曲というオーダーに対し、ファンキーは知恵を絞り、作曲を行った。だが、発注先から「テンポ感を早めてほしい」など一部訂正を求められ、ファンキーは修正したが、「サイリウムを振る合いの手が入るようなノリで」など再度変更を依頼された。

 すると、ファンキーは「どうもこれ以上直しをやるには気が進まない」と宣言。「このメロディーに愛情を持っていない人にいじられて曲がどんどんと悪くなるぐらいなら、これをネットにUPしますので、『この曲はいい』と思った人がご自由にお使い下さい!!」と、その楽曲をネット上で”開放”。彼のブログやTwitterを通じて話題を呼び、二井原や彼らのファンも賛同して、楽曲にオリジナルの歌詞を付け、曲のアレンジを変えて掲示板に投稿。一般ユーザーによってすでに10曲の歌詞が公開されており、ボーカロイド・初音ミクが歌ったものがニコニコ動画、YouTubeに掲載されるなど新たなムーブメントが起きている。

 そこで、渦中のファンキーに突撃取材。売り上げに応じて支払われる日本の印税制度と、1曲10万円以上での買い取り制という中国の作曲事情にも触れながら、今回の事態の顛末、現在の音楽業界に対して思うことを聞いた。

――声優への楽曲提供ということですが、クライアントはどのような曲を求めていたのでしょう?

ファンキー(以下、フ) 私は声優の音楽を聴いたこともなければ知識も全然なかったんですけど、オムニバスのCD用のようです。参考として先方から送られてきた資料はアニメキャラが歌っているものでした。「そのキャラクターに合うかどうかだけが大切であって、いいメロディーかどうかでは曲を判断していない」というメールが先方から来ました。

――アニメのキャラクターを描いた楽曲をその担当声優が歌う”キャラソン”だったようですね。曲作りの面では、例えば、爆風スランプのころは、今回のように誰かの指示で、メロディー、アレンジを変えることはなかったのでしょうか? バンドだと、メンバーで曲を出しあってスタッフと一緒にレコーディングする曲を選定し、アレンジを固めていくと思います。メンバーの曲からいいもの選ぶだけで、メロディー自体はイジらないんですか?

 爆風スランプの場合はアレンジャーやプロデューサーを立ててる場合が多かったので、まずレコード会社、事務所などのスタッフ、ディレクター、プロデューサーなどと曲出しミーティングをして、「この曲がいい」となったらどのアレンジャーに発注するかを決めます。少しメロディーを直すこともありますが、基本的にメロディーが悪いとその時点でボツになります。X.Y.Z.→Aの場合はアレンジャーやプロデューサーを立てないので、メンバーの誰かが「この曲はいい!!」と強く推すような意見からバンドでリハーサルをして、メロディーは基本的に二井原が歌いやすいように変えていきます。それができるのがボーカリストであり、爆風はそれに比べたら”歌謡曲的”だと言えるでしょう。どちらの場合も歌う人が特定されていて「この人に歌ってもらいたい」という気持ちを込めて曲を書くので、今回のように「アニメのキャラクターが歌う」という発注は私にとっては初めての経験です。

――なるほど。バンドはセッションしながら曲を作って、リフから曲に発展させることもありますから、根本的に作曲法が違う面もありますよね。J-POPでは、作曲しないアーティストの場合、曲はコンペ(コンペティション)で決める場合が多いと思います。人気アーティスト、大手レコード会社ほど楽曲ストックを何百曲と集めて、その中からアーティスト、スタッフが選んで決めていく。そういう音楽の作り方はどう思われますか? 極端な話、時にAメロ、Bメロ、サビでそれぞれ別の作曲者のものを組み合わせるような場合もあるようですが……。

 日本の場合、作曲した時点ではお金にならないので、逆に言うとそんな作曲家の方々はどうやって生活しているのでしょう……それが私の一番の疑問です。中国でもそういう風に”工場”みたいな音楽制作会社はありますが、日本と違って採用された段階で必ずお金が発生するので十分生活出来ます。”印税”に対する神話は日本では根強いですが、(サンプリング分配の特質上)JASRACは売れてない人の印税を売れてる人に支払う現状のシステムで、レコードが売れなくなった現代、1曲作曲して印税契約して10万円以上の収入になるんでしょうか……日本で長く仕事してないのでその辺はよく分かりません。

――ヒットを出し、かつそのクオリティをキープしていくのは大変な苦労だと思います。大ヒット曲のある末吉さんが、楽曲を”開放”されました。すでに反響を呼んでいますが、どう思われていますか? 

 ボーカロイドは私も使っていて、いろんな作品がUPされてることも知ってます。今回もボーカロイドでデモ版を作ろうとしたのですが、ライセンス関係のトラブルがあってソフトが立ち上がらず、シンセサイザーのメロディーでデモを作ったので、イメージが湧かずボツになってしまったという可能性もあるかもしれません。また、その(発注された)キャラクターを真剣に分析して、ボーカロイドでデモを作っていたら同じメロディーでも通っていたかもしれません。でもそれだと完璧に”お仕事”であって”表現活動”ではないと思います。私はお金にならない仕事でもドラムだったら一生懸命やらせてもらってます。ドラムは自分の表現活動であり、どんなジャンルでも飛び込んで行くと確実に上手くなり、すべて自分の財産になります。しかし”工場”のような現場で曲を作ったって悲しいだけですし、それで上手くなったって自分の音楽は決して豊かにならない。だから今回は、最後まで”表現活動”として作曲をやったことがボツになった一番の理由だと思います。”お金を稼ぐ”ためにはそのようにやっていかなければならないのが日本の音楽業界なのかもしれませんが、「スティックだけ持っていけば世界中どこに行ってもメシが食える」と思っている私にはそこまでの”覚悟”がなかったのでしょうね。また次の発注が来ているので次は自分を殺して、”お仕事”としてがんばりたいと思います。そうやって作ったものの方が通りやすいのかも知れません。しかし皆さんに問いたいのは「音楽ってそれだけでいいの?」ということです。

――表現活動と実益との狭間で葛藤があるは、仕事をしている人間なら誰もが直面する問題ですね。ファンキーさんの音楽への信念を詳しくお聞かせください。

 長らくバンドの世界にいて、今も中国でアンダーグランドバンドと一緒に暮らして活動している私としては、そのバンドに書いた1曲が中国ロック界の新しい伝説になろうとしている姿を目の当たりにしています。私はそういう風に生きてきたし、そういう風に音楽を作ってきた。だから今回のようないきさつではありますが、この世に生まれたこの曲を、”お仕事モード”にして生命力を奪うよりは、この曲を愛してくれる人に生命を吹き込んでもらった方がこの曲のためだと思ったのです。今はボーカロイドで歌を作ることもできますし、日本には山ほどアマチュアバンドがいて、曲に恵まれない歌手の卵だっていっぱいいる。そういう人たちが自分の思いを詞に込めて、この曲にその人の”生命”を込めてもらえれば、それが一番素敵なことなんじゃないかなと思うのです。もちろん爆風やX.Y.Z.→Aのメンバーが気に入ってくれたら、そのバージョンも作りたいと思います。二井原は非常に気に入ってくれてるのでX.Y.Z.→Aバージョンが先かな。二井原がブログで書いたように、いろんなバージョンが何曲も入ったオムニバスCDを作っても面白いと思う。幸いうちにはスタジオがあるし、我こそはと思う人はレコーディングしてもいいと思ってます。コネがなければレコードが出せない、お金がなければレコードが出せない、宣伝費がなければレコードも売れない、そんな世知辛いことばかりが世の中ではないと思ってますから。

* * *

 中国で活動している経験があるがゆえに、日本の音楽界に疑問を呈し、新たな試みを行ったファンキー。有志のユーザーによって、アコギ、メタル、クラシックなどのバージョンも作られ、掲示板では一つの楽曲の可能性を最大限に試す音楽サロンの様相を呈している。今後もこの動きを注視するとともに、表現の自主規制や、枷にがんじがらめで閉塞した日本の音楽シーンの実態にも迫っていきたい。
(文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>)

◆ファンキー末吉・ご自由にお使い下さい
http://web.me.com/funkystudio2000/LicenseFreeSong/Index.html

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