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『コクリコ坂から』はジブリを救えるのか?【2】

宮台真司が語る『コクリコ坂から』と父性の関係──不自由を引き受けた先にある希望と未来

1108_kokuriko_miyadai_n.jpg「『コクリコ坂から』はポスト震災の
価値観に耐えうる物語だ」として、評
価する宮台真司氏。(写真撮影/田中
まこと)

──本誌連載陣であり、映画フリークとしても知られる社会学者・宮台真司氏に、社会学的な観点から『コクリコ坂から』について語ってもらった。

 東日本大震災の後に発表される作品は、作り手の意図とは関係なく、どうしてもポスト震災、震災後の社会についてどう考えているのか? ということが問われてしまいます。『コクリコ坂から』は、そのハードルを見事にクリアしていると思いました。

 主人公である海や俊は、異父兄妹かもしれないという自身の生い立ちや貧しい家庭環境など、自分で選択ができない不自由の中にいる。そして、それが宿命であるかのように、彼らに覆いかぶさってきます。それは歴史ある部室棟・カルチェラタンを守ろうとする連中もまったく同じです。彼女たちは、自身の出自や家族、歴史といった、入れ替えや選択が不可能な「規定されたもの」を、あえて「引き受け」つつ、それに抗いながら、未来に進もうとする。その姿はとても凛々しい。

 宮崎吾朗監督の前作『ゲド戦記』は、「父さえいなければ、生きられると思った。」というコピーに表れているように、自分の抱える問題を解決することが自分のいる世界を救うことに直結する、いわゆる”セカイ系”の単なるメンヘラによる父殺しの話でしたが、『コクリコ坂から』はそうではない。海が亡くなった父に向けて毎日旗を揚げていることに象徴されるように、父親を忘れられない、あるいは父親を忘れるということが何を意味するのか、を明確に意識して描かれています。

最終更新:2011/07/26 10:00
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