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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.177

毒カレー、オウム真理教、光市母子殺害……“悪魔の弁護人”と呼ばれる男の素顔『死刑弁護人』

齊藤 「弁護士というとお金持ちなイメージがありますが、安田弁護士はブランド品など身に付けず、いつも質素な服装です。赤坂の事務所に寝泊まりして、自宅に帰るのは月に1~2度。毎日、深夜3~4時まで仕事をして、3時間だけ休んでから近くのサウナで汗を流し、また働き始めるという生活です。でも、安田さんはそういう普段の姿をカメラで撮ろうとすると『オレは芸能人じゃない、やめろ』と言うんです。どうしたものかと頭を抱えました(苦笑)。毎晩、取材が終わった後は安田さんに誘われて一緒に夕食を摂っていたんですが、安田さんがお酒を呑んで気分よくなっているとき、カメラマンがさっと小型カメラを持ち出して、安田さんの了承なしで撮り始めたんです。安田さん、お酒を呑むとガードが低くなるんですよ。そのことが分かってからは、安田さんと一緒にカメラマンもボクもお酒を呑んでからカメラを回すようにしました(笑)。いつもは取材対象者と親しくなり過ぎないよう、一定の距離を保つために一緒に食事などはしないようにしていたんですが、今回は特別でしたね」

shikei_bengonin4.jpg2011年10月に東海地区でオンエアされた内容に、
2012年2月の「光市母子殺害事件」の最高裁判決
の様子を追撮している。

 安田弁護士は“死刑廃止論者”として知られ、光市母子殺害事件など担当する死刑裁判を政治的に利用していると非難する声もある。

齊藤 「ボク自身は、冤罪の人が死刑になるなんて許されないことだと思います。かといって被害者の遺族を取材していると、簡単には“死刑廃止”とは口にできない。そんなグラグラした心境の中で、安田さんの『どんな悪人でも、必ず更生できる』という言葉を聞いて、深く考えさせられるものがありました。死刑制度が是か否か、ボク自身は今でも悩み続けています。死刑事件を取材していると、明るい気持ちにはなれませんね。どんどん暗い性格になっていきます(笑)。それでも、安田さんはバッシングに負けずに弁護を続けている。安田さんの人間としての魅力に惹かれて取材を続けたように思います」

 司法関連の作品を度々手掛ける齊藤ディレクターに、聞いてみたいことがあった。マスコミは世論を誘導し、バッシングを引き起こすトリガーの役目を容易に果たす。そんなマスコミが司法の過ちをただし、冤罪事件を救済する力を持っているのだろうか。

齊藤 「マスコミは裁判の判決が出ると、一斉に報道し、その後はさぁーと引いてしまいます。『平成ジレンマ』と同様、そのことに対する自戒の念も込めたつもりです。その一方、足利事件や布川事件はマスコミがキャンペーンを張ったことで、無罪を勝ち取っています。ただし、足利事件も布川事件も無期懲役刑でした。死刑判決を覆すのは非常に難しい。そこには大きな分厚い壁があるように感じます。死刑判決が覆ると、それは司法制度そのものの存在を根底から揺るがすことになるからです。でも、マスコミには権力を監視する役目があります。冤罪の可能性がある事件なら、徹底的に解明しなくてはいけないはずです」

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