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親子で一緒に見てはいけない!? トラウマ必至の昼ドラ『ぼくの夏休み』

 脇を固めるのも、キャラ立ちした面々だ。和也が身を寄せる上条旅館の主人には升毅。カネと保身のため、鬼畜的な所業で和也たちを苦しめる。その二男・勇作役の森永悠希は爬虫類のような目つきで視聴者の怒りを呼び起こす、完璧なヒールっぷりだった。彼らの謀略により、はる菜は女郎部屋に売られ、兄妹は離れ離れになってしまう。それでも、若き日の樹木希林を思わせるような強烈な個性を画面から漂わせた伊藤麻実子演じる菊ちゃんの助けで、はる菜は体を売ることなく女郎部屋を逃げ出し、ついに2人は再会を果たす。が、その刹那、米軍の空襲が2人を襲うのだった。

 容赦ない展開は第2部「青春編」になっても続く。第1部から7年後、空爆の混乱で再び生き別れになってしまった兄妹を演じる役者は、井上正大と有村架純にバトンタッチ。運命的な再会を果たすが、お互いの素性は分からぬまま。心配する和也が止めるのを振りきって、はる菜は生活のためにパンパンになり、米兵に処女を売ってしまうのだった―――。

 毒にも薬にもならない“良性”のエンタテインメント主流の昨今のテレビ界の中にあって、このドラマのように、ある種のトラウマを植えつけるような“悪性”のエンタテインメントは貴重だ。今、テレビで放送される野心的な作品は大抵の場合、それと分かるような姿で放送される。だから、見るときはそれなりの覚悟を持って臨むことができる。けれど、本当の意味で刺激的なのは、それが不意打ちで訪れた時だ。『ぼくの夏休み』という楽しげなタイトルと、ほのぼのとしたパッケージに隠された猛毒に打ちのめされるように。その時受けたトラウマは、子ども心の奥深くにくさびを打つように、ずっと脳裏に残るだろう。そのくさびが精神世界にどんな変化をもたらすかは、分からない。でも、それこそが本来テレビが持つ醍醐味の一つではないだろうか。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

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