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上場は終わりの始まり? 栄光の後に襲った内部クーデター、経営危機…

リブセンスは大丈夫か? 史上最年少上場社長たちのたどった苦悩

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リブセンスは大丈夫か? 史上最年少上場社長たちのたどった苦悩 – Business Journal(9月30日)

『リブセンス』(日経BP社/上阪徹)

 9月7日、東証は求人情報サービスのリブセンス(6054)を、10月1日にマザーズから市場変更すると発表した。その後の報道によると、変更先は第1部になるという。

 リブセンス社長の村上太一氏は現在25歳。昨年12月7日に25歳1カ月で株式新規上場を果たし、インターネット広告代理業のアドウェイズ(2489)の岡村陽久社長が持っていた26歳2カ月の最年少記録を更新したが、東証1部でも100円ショップのキャンドゥ(2698)の城戸一弥社長(27歳)を抜き、現職で最年少の社長になる。

「上場企業の最年少社長」といっても、20代の若さで社長職を受け継いだ経営者は過去にもいる。任天堂(7974)の山内溥相談役は、未上場時だが1949年に22歳で3代目の社長の座に就いており、64年に急死した堤康次郎氏の後任として、堤義明氏が国土計画(後のコクド)、西武鉄道の社長に就任したのは29歳の時である。現職では富士急行(9010)の堀内光一郎社長が89年6月に27歳で4代目の社長に就任しており、現在27歳のキャンドゥの城戸社長は2代目である。

 だが、後継者ではなく自ら会社を創業した社長で、株式を上場させた時、それまでの最年少記録を書き換えた者は、最近25年間で以下の7人しかいない。

 ・電話機の販売から通信事業に進出した新日本工販(現・フォーバル/8275)の大久保秀夫氏(現会長)
 ・パソコン雑誌の出版社から出発したアスキー(消滅し、アスキー・メディアワークスが継承)の西和彦氏(退任)
 ・全国で携帯電話ショップを運営する光通信(9435)の重田康光氏(現会長兼CEO)
 ・インターネット広告とブログ運営を主力事業とするサイバーエージェント(4751)の藤田晋社長
 ・ホスティング(レンタルサーバー)の事業を手がけていたクレイフィッシュ(現・e-まちタウン/4747)の松島庸氏(退任)
 ・アドウェイズの岡村陽久社長
 ・リブセンスの村上太一社長

史上最年少になれなかった孫正義、堀江貴文

 この7人は全員、濃淡の差はあるが通信・IT業界に関わっている。彼らの周辺には、94年7月にソフトバンク(9984)が店頭登録市場に上場したとき36歳11カ月で、アスキーの西和彦氏に3歳及ばず最年少になれなかった孫正義氏、00年4月にライブドアが東証マザーズに上場した時は27歳6カ月で、クレイフィッシュの松島庸氏に1歳2カ月及ばず最年少になれなかった堀江貴文氏らがいる。

 孫氏や堀江氏を加えて、『史記』など中国の歴史書のように各経営者の「列伝」を並べれば、それだけで通信・IT企業の経営者が若く、熱かった時代がよみがえる「激動の通信・IT業界25年史」が編さんできそうだ。

 その中身は、アスキーの経営幹部の終わりなき暗闘がつづられた「西和彦伝」、ITベンチャーのきら星が興亡する「藤田晋伝」もかなり面白そうだが、その中で最もドラマチックなのはクレイフィッシュの「松島庸伝」と言っていいだろう。

 株式上場最年少社長のその後はおおむね、苦労はしても経営破たんして行方不明になるような最悪の結末は迎えていない。

 フォーバル(旧・新日本工販)の大久保氏は、10年に社長職を退いた後は「大久保秀夫塾」を主宰して経営者や起業家の育成に力を注いでいる。アスキーは消滅したが、創業者の西氏は現在、複数の大学で教鞭をとるなど主に教育者として活躍している。光通信は一時経営危機に陥ったが、03年に会長になった重田氏は自ら私財100億円を投じるなどして約3年で再建を果たし、現在も経営の第一線に立つ。サイバーエージェントの藤田氏は今やIT業界の重鎮として多くの若手経営者から尊敬を集める存在だ。

 だが、その藤田晋氏や堀江貴文氏とともに、一時「若手IT起業家の三羽ガラス」と呼ばれ、史上最年少でマザーズ、NASDAQ同時上場という日本初の離れ業を演じたクレイフィッシュの松島庸氏はというと、その後は苦難の道を歩んだ末、わずか1 年2カ月後に会社を追われている。その後は上海や香港に渡って投資事業を手がけたり、07年に逮捕者が出た「梁山泊事件」のからみで名前が取り沙汰されたりしたが、通信・IT業界の表舞台からは姿を消して久しい。

元クレイフィッシュ・松島庸氏の悲劇

 会社設立から追放されるまでの一部始終は、『追われ者-こうしてボクは上場企業社長の座を追い落とされた』(東洋経済新報社)という自著にくわしく書かれている。

 日米ダブル上場で時価総額約1兆円、個人資産約2000億円を手にした直後、クレイフィッシュの最大のスポンサーで営業委託先の光通信に「寝かせ」と呼ばれる大量の架空契約が発覚する。兜町で「光通信ファミリー」を意味する「ヒカリモノ」と呼ばれたクレイフィッシュの株価は、光通信株と一蓮托生的にピークの5000万円から35万円まで大暴落した。松島氏は光通信との業務提携を解除するが、光通信は株価暴落で生じた約1000億円の負債の穴を埋めようとクレイフィッシュの虎の子の資金を横取りする謀略に出て、松島氏は必死で抵抗するものの、結局、村上ファンドを味方につけた光通信の退任要求と幹部の裏切りにより、会社を追われてしまった。

複雑な感情と友情

 この本からは、株式上場最年少社長の先輩にあたる光通信の重田康光社長(当時)に対する「恩人だが、今は敵」「憎んでも憎みきれないけれど、縁を切るのは寂しい」といった、実に複雑な感情が読み取れる。
 
 重田氏のことを「何を言ったところで、この人が動くのは、金と株だけだ」と言ったかと思えば、本のあとがきでは重田氏から届いた「今回の件は残念だった。君に才能はある。頑張れ」という手紙に心動かされ、「将来、私が再生できて世間も認めてくれたときには『私が育つきっかけを与えてくれてありがとう』と言えるようになるのかもしれない」とまで言っている。何でも敵と味方に分けたがり、白黒をつけたがり、勝ち負けにこだわる昨今の風潮からすると、むしろ新鮮に見えてくる。

 退任後、生活費にも事欠くようになった松島氏を見かねて、自分たちのおごりで東京・赤坂の高級レストランで「残念会」を開いたのが、松島氏と共に株式上場最年少社長のタイトルを重田氏から奪取した藤田晋氏と、堀江貴文氏だった。「三羽ガラス」が揃った席上、堀江氏はこう言ってなぐさめたという。

「これで自由になれるじゃないか」

「アンファン・テリブル」が、元気のないニッポンを活性化するか?

 そんな、まるで映画のような話から10年以上が過ぎて、才能とマネーが交錯して個性派がひしめいたITバブルは遠い昔の物語になった。当時、まだ中学生だったリブセンスの村上太一氏が株式上場最年少社長の記録を書き換えたが、この先も、時の流れと共に世代はどんどん移り変わっていく。

 今は、株式会社は資本金1円でも設立できる。もしどこかの子どもが「会社をつくって社長になりたい」と言い出した時、正式には何歳以上であればなれるのか?
 
 会社法では、保護者の承諾書さえあれば未成年であっても取締役にも社長にもなることができ、年齢の下限はない。「15歳以上」と言っている人がいるが、それは法務局が法人登記の際、代表権を持つ人全員の印鑑証明を要求しているからで、市区町村役場では15歳未満の印鑑登録を受け付けていないため印鑑証明が取れないという理由による。15歳未満は代表取締役社長はダメだが、代表権なしの取締役社長であれば問題はない。

 昨年7月、カードゲーム開発のベンチャー企業・ケミストリー・クエストが神奈川県相模原市に設立され、当時12歳の小学6年生が「取締役社長」として登記されて「小学生の社長が誕生!」と話題になったが、その代表取締役は父親が務めている。もし、この会社が7年以内に上場すれば、未成年の上場企業社長が誕生する。

 極端に言えば、話題づくりのために書類上、赤ちゃんを社長に就任させて、映画『ラストエンペラー』の主人公で清朝最後の皇帝、宣統帝(溥儀)即位「2歳10カ月」を破らせるのも、法的に不可能ではない。

 それでも、上場を目指すには社長が代表権を持っていないと何かと不都合だというのなら、印鑑登録ができる15歳になるのを待って設立すればいい。設立から上場までの最短記録は00年9月にナスダック・ジャパン(現・ヘラクレス)に上場したまぐクリック(現・GMOアドパートナーズ/4784)の364日なので、15歳の誕生日に会社を設立すれば、15歳11カ月で創業社長の上場最年少記録を更新するのも、決して夢ではない。

 そんな「アンファン・テリブル(恐るべき子どもたち)」によるベンチャーがどんどん出てきて、大人たちに元気がないニッポンのビジネス界をかき回して、活性化してほしいものだ。

 だが、くれぐれも、カネの亡者のような大人、卑怯な謀略が大好きな大人のマネをしないように。そして、そんな大人にだまされないように。
(文=寺尾淳/フィナンシャル・プランナー)

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最終更新:2012/10/01 07:00
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