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米国では誰も買わない? 破産したのに、なぜアジア各国へ進出するのか?

大人気クリスピードーナツ日本進出は、米国での破綻処理の一環!?

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大人気クリスピードーナツ日本進出は、米国での破綻処理の一環!? – Business Journal(10月24日)

「クリスピー・クリーム・ドーナツ HP」より

 日本進出と同時に大人気となった、クリスピー・クリーム・ドーナツ(以下、クリスピー)。

 開店当初は買い求める客たちが長蛇の列をなし、時には数時間待ちになるほどの騒ぎとなった。しかし、このクリスピー日本進出の背景には、少々興味深いストーリーがあることは、あまり知られていない。それは、ドーナツとはまったく縁のなさそうな「ITベンチャーバブルの崩壊」にも通ずるものがあるのだ。

 クリスピーは米国ケンタッキー州が発祥。ある人物が地元で人気のド-ナツ店を買い取ったことからスタートした。1930年代半ばから家族経営で奮闘した後、20年ほどを経てチェーン化。70年代半ばに総合食品加工大手のビアトリスに買収され一大チェーンとなるも、80年代初頭にはそのフランチャイズ加盟店のグループに逆買収されながらも経営は継続した。

 転機となったのは21世紀を間近に控えた2000年のこと。当時、米国ではITバブル真っ盛り。ある種の投資ブームとなっていた。このブームに乗じろとばかりに投資家たちはさらなる出資先を探し、これを機にとクリスピーも出資者の確保と株式の上場を模索。01年に上場を果たし、多額の経営資金を手にすることとなる。

●ITベンチャーと同じ手法で成長

 当時の投資家たちがとった手法は、ITベンチャーによる市場掌握の常套手段と同様のもの。つまり、目の前の収支には多少目をつむっても、とにかく市場を席巻することを優先するというもの。競合他社との競争に打ち勝てば、その後に利益はついてくる、という考えだ。この手法はIT分野のみならず、米国のあらゆる産業界で投資家たちが好んでとる戦法。市場独占こそが自社の唯一生き残る道であり、投資に対して最大の利益を上げる手であると信じられており、現在でも多々見られるいかにもアメリカ的なやり方である。

 そこでクリスピーも一気にチェーン網の拡大に邁進する。本拠地がノースカロライナ州であったということもあり、特に米国東海岸一帯を中心に出店。加えて海外への出店も積極的に行った結果、03年には400店以上にふくれあがったチェーン店網で、100億円以上の売り上げを記録。まさにこの世の春を謳歌していた。

 ところが04年以降は米国経済の低迷もあり、一気に売り上げは低下。都会を中心にブームとなった健康志向もあり、極端に甘いドーナツへの嫌悪感も増すばかり。莫大な損失の計上と、その過程における会計上の不正を疑われたことで米国連邦証券取引委員会の査察が入るなど、一転して経営が立ち行かなくなっていき、05年に経営陣を刷新するも、ついに06年に経営破綻。08年末までに250カ所以上の店舗が閉鎖になるなどしたことで、現在はごく限られた店舗でのみ経営を継続。再建への道筋を模索している最中だ。

 12年現在、筆者が住むニューヨーク市には、店舗はたった1カ所。それも大きな駅の構内の一角にしか過ぎず、次に近い店舗はといえば、州を2つまたいだ先となってしまう。かつてはありとあらゆるところでその看板を目にしたものだが、今やかつての勢いは見る影もない。

 「株式上場による投資家からの莫大な出資」
 「身の丈を超えての急激な拡大路線」
 「その失速による経営破綻」
 「倒産後の資産分割による、投資家たちの資金回収」

というクリスピーが辿った悲劇は、まさにITバブル期に生まれては消えていった、シリコンバレーのベンチャー企業そのもの。多くの投資家たちがとにかく有望な投資先を探し、早期の資金回収と利益確保を行いたいという、真の意味での成長を無視したやり方が、このクリスピーの破綻劇にも見ることができる。

●残りかすを売りつけられた日本市場

 そして、その残りかすのような資産を売りつけられたのが日本市場。日本進出は06年。つまり米国での破綻後ということになる。

 その背景には、経営が立ち行かなくなった後に、投資家たちが少しでもその投資資金を回収しようと奔走した結果、未進出の国々へなんとかブランドを売りつけたという事情がある。現在では日本とともにフィリピンやタイ、インドネシア、そして韓国や中国など、これまで展開が遅れていた中東を含む広域アジア圏を中心に、新たな市場開拓を行っている最中である。

 すでに本国では倒産したブランド。しかもその破綻劇は、あまりにも欲をかきすぎたというしかない、いささか乱暴な手法により引き起こされたもの。そう思うと、「アメリカで大人気の」というキャッチフレーズはともかく、破綻処理の一端として売りつけられたブランドに、虚飾でしかないような宣伝に踊らされて長い行列に並ぶ前に、少しだけこうした現実を見直してみてもよいのではないだろうか?
(文=田中 秀憲/NYCOARA,Inc.代表)

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最終更新:2012/10/25 07:00
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