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なでしこの快進撃や、香川・長友の海外躍進の裏側で……金と利権にまみれた日本サッカー協会の内紛

【サイゾーpremium】より

 香川真司、長友佑都が海外ビッグクラブへ移籍、さらに女子サッカーのW杯優勝などで、ますます高まる日本のサッカー人気。それに呼応して金を求める有象無象も群がってきているようだ。特に日本サッカー協会が持つ権力・利権は莫大なものに膨れ上がっているが、そうした裏面は、ほとんど報道されない。今回は、日本サッカー協会に対する批評やサッカー誌記者座談会、かつて日本代表監督を務めたフィリップ・トルシエ監督へのインタビューなどから、昨今のブームの裏にある日本サッカーの現状を読み解く──。

「1992年当初、JFA(日本サッカー協会)の事務所は渋谷にある岸記念体育館の一室を間借りしており、職員は15人。年間の収入は約40億円で、総資産は14億円ほどでした。それから20年を経た今、職員は200人を超え、年間収入は165億円、総資産は20年前の10倍以上と、JFAは大きく成長しました」(『JFA公式サイトコラムより』)

 こう語ったのはJFAの会長職をこの6月に退任した小倉純二氏だ。JFAの中でも国際派といわれた小倉氏はFIFA(国際サッカー連盟)の理事を務めるなど、サッカーの普及に努めてきた。彼の功績は結果として、アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本男子代表(ザックジャパン)は2014年W杯ブラジル大会予選で快進撃を続けており、女子代表(なでしこジャパン)もロンドン五輪で銀メダルの快挙を成し遂げた。大仁(だいに)邦彌新会長の新体制になっても、小倉氏は名誉会長として、影響力を発揮すると見られている。

「10年、小倉会長就任直後にザック体制がスタート。ザック体制の5人のイタリア人スタッフに各2名以上の通訳をつけるなど、全面的にバックアップして、支えています。このおかげか、国内の親善試合は毎度満員御礼。満員になると、チケット収入だけで協会には約2億円、またテレビ放映権料は基本的に1試合1億円が協会に入ってくる。運営費用は、5000万円~1億円ですから、親善試合1試合ごとに2億円程度の利益が上がるのです」(スポーツジャーナリスト)

 協会の収益も右肩上がり。W杯南アフリカ大会が行われる直前(10年3月期)には142億円(経常利益は9000万円)だった年間収入は、155億円(11年3月期 経常利益は9億円)、165億円(12年3月期 経常利益は14億円)と毎年10億円ずつ増やしている。

「協会の収益の二大柱は、日本代表のスポンサー収入である事業関連収益(12年3月期・47億円)と親善試合の収入などの代表関連事業収益(12年3月期・42億円)です。オフィシャルスポンサーのキリン、オフィシャルサプライヤーのアディダス、サポーティングカンパニーのクレディセゾン、ソニーマーケティング、日本航空、ファミリーマート、三井住友海上、アウディといった数々の企業と、合計して年間数十億円のスポンサー契約を結んでいます。こうしたスポンサー集めには小倉前会長とべったりの広告代理店・電通が動き、利益を上げる構図です」(同)

 もちろん、こうした収入も日本サッカーの未来に寄与する支出に回されるのであれば、問題はない。だが、JFAの金の流れには疑問の声が多い。

「10年、日本プロサッカー選手会(JPFA)は協会に対し、代表選手の待遇見直しを要望しました。なにしろ、海外では当たり前の出場給が日本代表には存在せず、日当1万円と対戦相手によって変動する勝利給のみ、国際試合で負傷した場合の選手への補償もないなど待遇が悪い。この見直しを訴えましたが、協会は『相応な報酬を支払っている』として一切聞き入れなかった。しかし、協会には72億7884万円にも上る特定資産があります。企業でいう留保金です。毎年の全収入の50%以上は日本代表の関連収入であるにもかかわらず日本代表へは還元せず、内部にため込んでいます」(同)

■快進撃に隠された、カネのなる木をめぐるドタバタ劇

 こうした中、日本サッカー協会の内部は会長をめぐってドタバタ劇が続いている。

 世界的には4年に一度のW杯に合わせて、サッカー協会の会長は交代するのが原則とされている。このため、2期4年というのが会長人事の原則。ところが、日本ではここにきて、08年7月~10年7月/犬飼基昭会長、10年7月~12年7月/小倉純二会長、と1期2年で会長が代わるドタバタ劇を繰り返してきた。その裏には、川淵三郎最高顧問の存在が大きいという。

「もともとは川淵が会長時代に地位に固執して、02年から3期6年会長に居座ったことが発端です。川淵氏は、その次の会長職にも自身の影響力を行使しようと、国際派の小倉純二副会長が有力視されるなか、常務理事の犬飼基昭氏を推薦委員会で後継指名。ところが、W杯南ア大会で岡田武史監督の下、日本代表がベスト16に進んだにもかかわらず、犬飼氏の手法が協会内で強引だと問題視されると、一期で切り捨てた。会長を務めた人間はその後名誉会長を務めるのが通例でしたが、犬飼氏には名誉会長に就かせなかったほどでした。犬飼氏の後任には、本来なら定年を迎えて就任できない小倉氏を、FIFAの理事を務めている場合は就任できるという日本協会の規約を利用して会長に据えたのです」(スポーツ紙記者)

 そこで就任したのが現会長の大仁邦彌氏だ。

「『機を見るに敏。でも仕事はできない』というのが業界評。本人も就任記者会見で『私は第2(ダイニ)会長です。ほかに第1会長がいるのでは……』と笑えないジョークを飛ばしたほどですから(苦笑)。98年7月には強化委員会の委員長として岡田監督の後任にトルシエ監督を招聘した担当者でしたが、トルシエの言動が協会から問題視されるとすぐさま距離を置くようになった。また、かつては慶應義塾大学、三菱サッカー部(三菱重工所属)で先輩だった犬飼会長にベッタリでしたが、就任前の会長人事の際に、川淵派の反発で犬飼氏に会長再任の可能性がなくなるや、同派に寝返り、不信任を突きつけたのです」(同)

 今回の人事は、川淵氏が次期会長候補として念頭に置いている田嶋幸三副会長へのつなぎとしての就任と見られているという。

 こうした協会は12年4月、財団法人から公益財団法人に移行した。公益財団法人となると、協会の事業は「サッカー普及活動」という公益目的である限り、非課税になる。社会的に優遇を受けることになるのだ。これまでは役員の報酬なども非公開だったが、徹底した情報公開が求められるだろう。

 10年8月以来、快進撃を続けるザックジャパンの陰に隠れているが、次の会長選はW杯ブラジル大会直前の14年3月だ。そのときには協会内の内紛劇も日本代表同様に熱く、話題になっているかもしれない。グレーゾーンが多く、しかもますますその利権が拡大しつつある日本サッカー協会を、ジャーナリストや関係者、そしてフィリップ・トルシエ元日本代表監督の論から、現状を読み取っていこう。

(文/松井克明)

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最終更新:2012/11/05 10:30
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