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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第11回

夢か現実か? ウソか本当か? 『悪夢ちゃん』の“自由”な授業

 『悪夢ちゃん』は恩田陸の小説『夢違』(角川書店)を原案とする、予知夢を題材としたSF学園ファンタジーだ。「今日も完璧に良い先生をやり切った」と“良い先生像”を演じているが「羊飼いは楽だけど、顔が疲れるのよ」と腹黒い本性を持つ武戸井のクラスに、恐ろしい予知夢に苦しめられている「悪夢ちゃん」古藤結衣子(木村真那月)が転校してくるところから物語が始まる。彼女の見る悪夢に巻き込まれ、それが暗示する悲惨な未来を変えようと武戸井が奮闘していくのだ。

 ある日、インターネット上に「わたしの先生はサイコパス」と題されたブログがアップされた。それは、紛れもなく武戸井に対するもので「わたしの先生は、一度もわたしたちに向かって本当に笑ったことがないんです」「好きも嫌いもない。心がないのだから」などと彼女の本性を暴くものだった。

 そして、悪夢ちゃんは夢を見る。

 それは、武戸井がそのブログを読み上げる生徒を、ガラスの破片でめった刺しにするというもの。そして彼女自身は赤いワニに頭を噛みちぎられ、首がもげてしまうのだった。今のテレビドラマで、このようなバイオレントで残酷な映像を流すことはなかなかできない。特に、大人が子どもを虐殺するなどタブーだ。しかし、それを「夢」というファンタジーで可能にしてしまったのだ。

 武戸井は、早くも第3話で自らの本性を生徒たちにカミングアウトする。クリームを塗ると透明人間になり「透明校則」に違反した者に罰を下す、という漫画を描き、それを現実に実行していた生徒に向けて語りかける。

「先生はサイコパスです! 本当は異常かもしれない。そう思って生きてます。あのブログに書いてあることは全部本当です。先生は笑いたくもないし、泣きたくもない。みんなに嫌われないようにしてるけど、好かれたくもない。殺したいけど殺さない。さてどっちの先生が本当でどっちがウソでしょう?」

 そして、自分の身体にクリームを塗る。

「先生は消えましたか? 自分を消すことなんてできない。本当の自分なんていない。人間はどこへ逃げようと、自分から逃げることはできないのよ! ウソと本当がクリームのよう溶け合って生きているのが人間だからです! 先生は異常かもしれませんが、それを抑えて生きていくことはできるでしょう」

 重苦しい空気に耐えかねて、「透明人間」を自称した生徒をフォローするように、ほかの生徒が「はしゃぎすぎだよ、何が『透明人間はここにいる』だよ」と笑うと、本人も救われたように「そ、そうだよな」と、照れ笑いとも苦笑いともとれる複雑な笑いを浮かべる。それを見た武戸井は「空気を読んで笑うな!」と一喝。「先生もこれからはなるべく無理に笑わないようにします」と。

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