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着々と進んでいたソニー、ボーダフォンの買収話

ライブドア元幹部が語る、粉飾に仕立てられた(?)“事件”

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ライブドア元幹部が語る、粉飾に仕立てられた(?)“事件” – Business Journal(11月19日)

「堀江貴文の早期仮釈放支援の会HP」より

【前編はこちら】
『ライブドア元幹部が語る、ホリエモン仮釈放支援に取り組むワケ』

 2006年1月、有価証券報告書虚偽記載の疑いなどで、六本木ヒルズのライブドア本社に東京地検特捜部が家宅捜索に踏み込んだ。世にいう「ライブドア事件」である。同社社長のホリエモンこと堀江貴文氏らは、証券取引法(現・金融商品取引法)違反で逮捕、起訴され、時代の寵児は、一転してバッシングの的に転落した。11年4月、最高裁は堀江氏の上告を棄却し、懲役2年6カ月の実刑が確定、現在は長野刑務所で服役中だ。

 近鉄バッファローズやニッポン放送買収、そして上記の事件など、絶えず日本中に話題を振りまき、加熱するメディア報道の渦中にい続けたライブドア。そんな同社の取締役として、経営の中枢に身を置き、堀江氏も厚い信頼を寄せていたのが、熊谷史人氏である。

 熊谷氏は現在、「堀江貴文の早期仮釈放支援の会」(以下、支援の会)発起人として、署名募集活動など積極的に活動を行っている。そんな熊谷氏に、前回に引き続き、

 「誤って報じられたライブドア事件、裁判の深層」
 「堅実だったライブドアの経営」
 「着々と進んでいたソニー、ボーダフォンの買収話」

について聞いた。

――熊谷さんは、「支援の会」を通じて、堀江さんの仮釈放を求める活動なさっていますが、逮捕後、マスコミでは「堀江さんだけが特捜部と戦っていて、熊谷さんを含め残りの幹部は検察の描いたストーリーを認めている」と報じられていましたね。

熊谷史人氏

熊谷史人氏(以下、熊谷) それは事実を伝えていません。ああいう事件に至り株主に損害を与えたこと、そして有罪判決を受けたことは真摯に反省していますが、事件についてはいまだに誤解があると思っています。

 起訴事実のうち、いわゆる粉飾(2004年9月期の有価証券報告書の虚偽記載)とされたことは2つあります。「ファンド(投資事業組合)からの収益の会計処理」と「(取引先からの)売上の付け替え」です。検察の描いたストーリーは、これにより「約3億円の赤字を約50億円の黒字に見せかけた」というものですが、私はファンドにはタッチしていなかったので、検察での取り調べでも「全然知りませんよ」と言いました。ただ、売上の付け替えのほうは「違法性の認識はなかったにせよ、関与してました」と。

 ファンドのほうは、堀江さんも知らなかったと思います。ただ、売上の付け替えのほうは「全く知らない」というのは無責任な発言じゃないかと当時は思いましたね。なぜなら、付け替えの舞台が堀江さん直下の事業部だったからです。彼は毎月売上の確認をします。期末の売上が予算に対し1〜2億円足りないとき、「どうにか2億持ってきました」という話が部下から上がってきたら、「どこから持ってきたのか」を認識すべきだし、まったく知らないなら職務怠慢だと。ただ、違法性の認識はなかったという供述では、全被告が一致しています。

――「違法性の認識」が、事件のポイントだったと。

熊谷 一つはそうですね。上場会社では、会社内で経理処理をまとめ、それを会計のプロである公認会計士にチェックしてもらう。それを公認会計士が正しいと言えば正しいんだ、と考える。そのための会計士ですから。「専門家が合法だと評価したことを、なぜ素人のわれわれが違法だと思えるのか?」という話です。

 ファンドからの収益の部分は、架空の利益ではなく、ライブドアグループにお金が入ったことは間違いない。その収入を「会計上どこに分類するか」という問題です。

――そのことが、検察の言うほど悪質なのかは意見が分かれるでしょうが、自社株の売却益が還流したものを「売上」にすることに違和感はなかったんでしょうか?

熊谷 まったくなかったですね。なぜかというと、ライブドアにはファイナンス部門(ライブドアファイナンスという子会社)があって、そこではベンチャー投資をしていました。そこが金融事業で上げた売上を、子会社の単独決算で売上にするのは正しい。そして、グループの連結決算で、子会社の売上をグループの売上にするのも普通のことなんです。

●アイディアの源

――そうしたスキームのアイディアは、ライブドア社内から生まれたのでしょうか?

熊谷 ライブドアファイナンス(旧社名:キャピタリスタ)の社長をやっていた野口英昭さん(強制捜査直後に死去)が、2002年くらいに同社を辞め、某証券会社の副社長になる。同証券の投資部門ではトップですが、その野口氏が、買収案件とともにストラクチャー(事業の構造、スキーム)を持ってきました。

 株式交換で企業を買収すると、ライブドア株が被買収会社の元オーナーの手に渡り、元オーナーには、その株を早く現金にしたいというニーズがある。そこで、その株を引き取るファンドを同証券側で立ち上げるから、ライブドアもお金を出しませんかと。そのお金は、ライブドア側からすると「ファンドに対する出資」です。株の売買も、ライブドアの人間ではなく、同証券の人間がやった。株価は、上がるか下がるかわかりません。たまたまあのときライブドア株が上がったからファンドが儲け、ライブドアファイナンスは分配金を得ました。当時、ファンドから上がってくる分配収益は売上計上してよかった。また、ファンドの決算を本体の決算と連結処理しなくていい、というルールでした。

――つまり、「簿外」にしてもいいということで、当時は多くの企業が、ファンドをつくっていろんなビジネスをしたわけですね。

熊谷 そうです。「連結にしなくていい」という考えでいくと、ファンドからの投資収益の売上計上は合法だし、逆に「自社株の売却益だった」という考えでいくと違法になる。

――そうすると「ファンドを使った粉飾」容疑についての実質的な争点は、「野口さんが関わって立ち上げられたファンドが、ライブドアとは切り離されたものなのか、それとも事実上一体のダミーなのか?」ということだったのでしょうか?

熊谷 ええ。ファンドが、ライブドアの連結決算に入るかどうかということですね。裁判所の判断は、「連結かどうかの基準の議論はよそう。ファンドとライブドアは一体でダミーなんだから、連結処理しないといけない」というものでした。

 私は検察官に、「これは会計処理の問題じゃない。もしファンドがライブドアと一体で『自社株売買』だというなら、商法違反で立件すべきじゃないか」と言いました。なんで無理に「粉飾」に仕立てたのか? 堀江さんは会計の専門家ではないので、会計士が「これでいい」と言えば、当然売上計上しますよ。

●堀江氏と宮内氏の正義

――裁判で堀江さんの弁護団は、「宮内亮治元CFOが、人材派遣会社トラインの買収を通じてライブドアに入るべき利益の一部(約1.5億円)を、宮内さんらの個人会社に入れていた。それを材料に、検察は宮内さんと事実上の司法取引をし、検察に有利=堀江さんに不利な供述を引き出した」という趣旨の主張をしました。

熊谷 そのあたりについては、私は関知していないので、なんとも言えません。ただ、宮内さんと堀江さんは、それぞれの正義があって、会社のために行動していたと私は信じています。

●持続可能だったビジネスモデル

――ライブドアについては、堀江さんを広告塔にM&Aを繰り返し、時価総額を膨らませ、それをベースにまた株式交換で買収をしてという、M&Aを本業にしているかのような報道もされました。そうしたビジネスモデルは、時価総額が大きくなり続ける局面では成り立っても、いつかははじけたのではないでしょうか?

熊谷 いや、持続可能だったと思います。私は当時、資本政策もIRも担当していましたが、時価総額を維持するために純資産の確保に力を入れていました。事件の直近の決算では、純資産で2400億円くらいあった。当時の手元流動性はヤフーや楽天よりも高かった。表では株式交換でバンバン会社を買って不安定に見えたかもしれませんが、純資産を堅実に増やしていましたから、仮に市況が悪くなっても、ほかの会社みたいに株価は下がらない。だから上場廃止後、ライブドアの株を買い集め外資系のファンドは、200〜300億円くらいのレベルで儲かったといわれています。

――上場廃止後、ライブドア株がだいぶ割安になったところで外資が買い占め、資産を山分けしたということですね。もう一つ、ライブドアは果敢にM&Aを進めましたが、歴史もカラーも違う会社と高いシナジー効果を発揮するというのは難しかったのではないでしょうか?

熊谷 ライブドアは「社風がないのが社風」だったので、買収した後もライブドア・カラーを押し付けませんでした。堀江さんは面倒くさがりで、担当者に「あとはやっといて」というタイプなので、買収された企業は従来の経営スタイルを維持できるんです。

――ところで、ニッポン放送買収への道が閉ざされた後、ソニーとボーダフォンの買収を狙っていたと言われていますが、本当ですか?

熊谷 本当です。「(逮捕された)06年は、どっちかは買収しよう」と、前年末から雑談レベルで始めて、「ここの部門はライブドアが取って、ここはサムスンに売って」などと話していました。そして、投資銀行も含めて正式にキックオフミーティングを予定していたのが、強制捜査の翌日(1月17日)だったんですね。結局、やれなかったんですが。

――ニッポン放送買収の件では、日本中を揺るがせるほど世間のリアクションは大きかったですが、それは「想定内」だったのでしょうか?

熊谷 想定外ではないけど、想定以上でした。麻痺してましたよね、あのときは。一度、大きな案件の高揚感を覚えてしまうと、もっと新たな高揚感を得たくなるんですね。その連続だったじゃないですか。だから、どんどんディールも大きくなっちゃって。
(構成=北健一/ジャーナリスト)

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最終更新:2012/11/20 14:00
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