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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.210

奥西死刑囚は“村社会”を守るための生贄にされた!? 名張毒ぶどう酒事件の闇に迫る再現ドラマ『約束』

yakusoku_002.jpg5人の女性が亡くなった凄惨な事件を再現。
懇親会の席で振る舞われたぶどう酒を飲んだ女性たちが次々と倒れていった。

齊藤「僕が初めて撮ったドキュメタリーが『重い扉』で、名張毒ぶどう酒事件について合わせて3本のドキュメンタリーを作りました。でも奥西死刑囚にはまだ取材できずにいます。死刑確定囚に会えるのは家族か弁護人、一部の支援者だけに限られているんです。これまでは面会した関係者をインタビューしたり、直筆の手紙をナレーターが読み上げることで、いつ処刑されるか分からない日々を過ごす死刑囚の心情を伝えようと試みてきました。でも、3本のドキュメンタリーを作り、もう手はないなぁと。ある種、ドキュメンタリーとしての限界にぶつかってしまったんです。そこで、まったく経験はなかったけれど、奥西死刑囚を主人公にしたドラマを撮ろうと思い付いたんです」

 仲代達矢は『毒とひまわり』のナレーターを務めており、冤罪の可能性の高い奥西死刑囚に強い関心を持っていた。舞台公演のスケジュールを調整して、難役のオファーを快諾した。樹木希林は当初、ローカル局が作る“再現ドラマ”への出演を拒んだ。しかし、齊藤ディレクターが事件に関わる資料を送るとちゃんと目を通し、「一度、村を見てみたい」と申し出てきた。名古屋からローカル線に乗って片道約3時間かかる三重県と奈良県の県境にある集落まで、齊藤ディレクターと2人で足を運んだ。さらに奥西死刑囚の妹にも会っている。再現ドラマへの出演に気乗りではなかったはずの樹木の周到な役づくりが始まっていた。2人の名優に対し、齊藤ディレクターから演出することはなかった。ただ、これまでに取材してきた情報をもとに、奥西死刑囚がどのような状況で独房で過ごしているのか、ひたすら息子の無罪を信じ、釈放を願ってきた母・タツノがどのような手紙を残してきたのかをそれぞれ仲代と樹木に説明したそうだ。シーンごとの状況を理解し、後は半世紀にわたり独房に閉じ込められている死刑囚と「人殺しの母親」と罵られながらも息子の帰宅を待ち続けた老女の内面を名優たちは演じてみせた。

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