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ノンキャリ刑事の回想録……新聞には載らない、殺人事件の物語『刑事の結界』

keijinokekkai.jpg『刑事の結界 叩き上げ警部
補島田伸一の事件簿』(朝日新聞出版)

 過去には『太陽にほえろ!』『西部警察』、今は亡き藤田まことが人情刑事を熱演した『はぐれ刑事純情派』、あるいは古谷一行&木の実ナナ(もちろんお約束のヌードシーンも)でおなじみの『混浴露天風呂連続殺人』、近年では『相棒』や『踊る大捜査線』。刑事といえば、連続ドラマの定番テーマだ。そして事件の陰には、被害者やその肉親、刑事、犯人らの怒りや悲しみがつきまとう。

 神奈川県警の捜査一課特殊班として、数々の凶悪事件を追った警察官・島田伸一氏。2012年に退職後、今だから話せる内容をまとめたのが本書『刑事の結界 叩き上げ警部 補島田伸一の事件簿』(朝日新聞出版)だ。朝日新聞の地方版で連載され、好評を博したことから書籍化された。

 89年に発生し、日本中に一大センセーションを巻き起こした「竹やぶ1億円事件」や、地下鉄サリン事件に影響を受けて催涙スプレーをまいた「横浜駅異臭事件」(95年)、そして中国人グループの抗争によって5人の死傷者が出た「中国人集団強盗殺人事件」(99年)など、神奈川県内で発生した事件の数々を捜査してきた島田。本書では、現役時代に関わった事件のうち12を、捜査官の立場から振り返る。

 本書に描かれている事件の一つが、95年に横浜で発生した横浜国立大学の女子大生殺人事件。20歳の女子大生が一人暮らしを営むアパートに、元配送業者の男が押し入り、現金1万円やキャッシュカードを奪い女性を殺害した。島田らの懸命な捜査により、犯人は逮捕され、裁判にかけられる。

 しかし、大切な娘を失った両親にとって、その代償は大きい。事件を忘れるために一心不乱に働き詰めの毎日を送った結果、両親は病に倒れ、営んでいたそば屋も閉めることとなってしまった。3年を過ぎても娘を思い出し「ちぃちゃん、ちぃちゃん」とうなされる母。「もし横浜の大学に千瑞子が合格していなかったら……」。父の胸には、いまだに後悔の念がある。事件から17年後の3月、島田は一本の電話を受けた。「一生懸命やってくれたことはぁ、忘れません」。被害者の母親からだった。その月末に、島田は30年に及ぶ刑事人生にピリオドを打った。

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