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映画『戦争と一人の女』公開記念インタビュー

“ゆとり教育”の旗振り役からポルノ映画製作へ! 元文科省官僚・寺脇研が批判騒動の真相を語る

sensotohitorinoonna02.jpg戦争末期、作家(永瀬正敏)と元娼婦である飲み屋の女将(江口のりこ)は
同棲することに。死と隣り合わせの性生活が始まる。

──四畳半が舞台の戦争映画。いかにも邦画の伝統を感じさせます。

寺脇 そうです。四畳半を舞台に、低予算で人間のエロスを描いた作品です。ご覧になれば分かるように、日活ロマンポルノやピンク映画にオマージュを捧げたものです。私も脚本の荒井晴彦さんも、ピンク映画にどっぷり浸かって人生を過ごしてきましたから(笑)。

──製作費1500万円の低予算ながら、江口のりこ、永瀬正敏、村上淳ら実力派を揃えました。

寺脇 申し訳ないことに、キャストのみなさんには「価格破壊」と言われるようなギャラしか用意できなかった。でも無理強いで出てもらったわけではありません。「荒井晴彦の脚本なら出たい」と、みなさん言ってくれたんです。今はまた安倍政権がアベノミクスとか言って、「またバブルが来る」みたいな風潮がありますが、人間はお金だけで生きているんじゃないよということです。役者たちの心意気は、お金では買えないものです。そりゃ、メジャーな作品に出れば、数倍のギャラが出たでしょうが、ギャラのいい仕事が必ずしも楽しくて充実感が得られるかというとそうではないでしょう。

──脱偏差値教育を推進した“ミスターゆとり教育”ならではの発言ですね。

寺脇 もちろん、これがベストだとは思っていません。これからも映画製作は続けていくつもりです。まずは今回、映画業界に一石を投じることはできたと思います。限られた予算のインディペンデント映画でも、戦争を描くことはできましたよと。

■日本人は敗戦を経験しても何も変わらない?

──坂口安吾をモデルにした作家と不感症の元娼婦が、空襲を見物している。元娼婦の「戦争が好き。みんな燃えてしまえば、平等になるから」という台詞は、社会格差に苦しむ低所得層の共感を呼びそうです。

寺脇 戦争といっても、いろんな見方や考え方ができるわけです。戦争は瞬間的に見ると「戦争ってよくないよね。悪だよね」と感じるわけですが、日本は日中戦争、そして第二次世界大戦を8年間も続けた。非日常である戦争が、日常となっていた時代があったんです。毎日ずっと「天皇のために」と考えていたわけではないでしょうし、戦争が嫌で嫌でたまらないと思っていても、その中で生きていかなくてはならず、食事もし、働き、セックスもし、排泄行為もしていたわけです。空襲が日常化していくのは戦争末期のだいたい8カ月間くらい。いつ誰の頭の上に爆弾が落ちてくるか分からない状況の中で、人々はどのように暮らしたんだろうかとね。イラク戦争時のバグダッド市民や現在のシリアの人たちは、同じような不安の中で暮らしているはずです。映画を通して、世界情勢を考えることもできるわけです。本当は今の日本だって、北朝鮮からいつミサイルが飛んでくるのか分からない状況なんだけどね。

──強烈なインパクトを放っているのは、食料不足の状況下で「お米を分けてくれる農家を紹介するよ」という口実で婦女子を郊外に連れ出して強姦する帰還兵役の村上淳。戦後初のレイプ犯として処刑された小平義雄を連想させます。

寺脇 いや、そうなんだけどね、小平義雄の名前はなるべく出したくないんです。小平は戦争に行かなくても犯罪を犯していたでしょう。犯行の手口などは小平事件を参考にしていますが、描きたかったのはそこではないんです。小平と違って、村淳に演じてもらった大平は、自分の妻や子どもには優しい顔を見せる温和な男です。それが中国大陸へと出兵し、片腕を失って帰ってきた。性的にも不能になってしまった。戦争さえなければ、良き夫、良き父親のままで過ごせたはずだった。戦時下で暮らす男女の物語に、頭のおかしくなった帰還兵のストーリーを絡めたいと、私から荒井さんにお願いしたんです。役人だった頃は日本映画と韓国映画しか観なかったんですが、2006年に辞めてからは時間ができたので、アメリカ映画も観るようになった。その頃のアメリカ映画は、イラク戦争を題材に、帰還兵が別人になっていたという話が多かったんです。

──『ハート・ロッカー』(08)や『マイ・ブラザー』(09)などですか?

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