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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第25回

“説明しない”櫻井翔の半笑いが狂気に変わる『家族ゲーム』 

 『今、この顔がスゴい!』(TBS系)で櫻井と共に司会を務める有吉弘行は、かつて彼に「説明」というあだ名をつけた。まさに櫻井のテレビでの役割を一言で表現しただけのあだ名に聞こえるが、実は有吉流の批評性を色濃くはらんだあだ名だ。それは櫻井から受ける印象が、「説明」しか残らないということである。

 いつだって櫻井は、ニュースの概要や番組の趣旨、そして自分の気持ちを真摯に言葉で「説明」する。ちゃんと言葉で「説明」しないと、と思い込んでいるから、その誤差に敏感でぎこちない。そしてそんなぎこちなさを表すように、いつだって彼はどこか居心地の悪そうな半笑いを浮かべている。

 だが、吉本荒野は「説明」しない。「説明」しない時の櫻井の半笑いは狂気に変わる。そしてそのぎこちなさは、言いようのない不安を掻き立てる。狂気と不安が交差した時、訪れるのは底知れない恐怖だ。だから、この武藤将吾脚本版『家族ゲーム』の吉本荒野は、もはや櫻井以外には考えられない。

 吉本は周囲を買収して本人が傷つくように仕向けたり、相手の弱みを握って利用しながら、壊れかけた家族を完全に破壊させようとしているかのようだ。弟・茂之から心酔され、母・佳代子とは共犯関係を結び、父・一茂を孤立させ逃げ道を奪った吉本は、その標的をいよいよ本丸「優等生」の兄・慎一に向ける。

「震えるほどの屈辱を味わったことがあるか? 痛みを知らないおまえに、俺が痛みを教えてやる。恐怖を知らないおまえに俺が恐怖を味わわせてやる。苦しみを知らないおまえに、悲しみを知らないおまえに。俺が、絶望を思い知らせてやる。俺が、おまえを壊してやる!」

 吉本の正体や過去は慎一によって暴かれるが、家族はもはや吉本に反旗を翻すことができない。家族を守ろうと必死に吉本の悪行を「説明」する慎一に、吉本は言い放つ。

「笑わせんなよ。おまえがいつ家族のために動いた? おまえが守りたいのは家族じゃない。自分に都合のいい、この生ぬるーい環境だ。カッコつけんなよ、“優等生”」

 櫻井と神木。どちらもパブリックイメージでは優等生。しかし、その優しげな顔の奥に狂気をはらんでいる。この2人の対決には、思わず「いいねぇ」と唸りながら見入ってしまう。果たして彼らは天使のような顔をした悪魔なのか、悪魔のように振る舞う天使なのか。そして、その真意が「説明」される時は来るのか。

 慎一を追い詰めた吉本は、最後にこう吐き捨てた。

「想像力だよ、慎一くん」
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

最終更新:2019/11/29 18:06
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