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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.230

聞け、“泡沫候補”と呼ばれる男の魂の叫びを! 闘う父親たちのエレジー『立候補』『選挙2』

rikoho_2.jpg2011年11月に行われた大阪府知事・大阪市長のW選挙の中心人物・橋下徹。巧みな弁舌で聴衆を盛り上げる。『立候補』より。

 「スマイル、してまっか?」「10度、20度、30度!」。NHKの政見放送で、街頭演説で、暴走するマック赤坂。公職選挙法に守られたマック赤坂に、警察もうかつに手が出せない。『立候補』の主演スターがマック赤坂なら、助演男優賞級の好演を見せるのがマック赤坂の息子・健太郎氏。伊藤忠退職後に貿易会社マックコーポレーションを立ち上げ、レアメタルの輸入でひと儲けしたマック赤坂だが、今は会社経営を息子に任せ、スマイル選挙に全力投球中だ。父親の見事な壊れっぷりと対照的に息子の健太郎氏は常にクール。「スマイルだけじゃ、会社は経営できません」「選挙は手伝いません」と父親とは一定の距離を置いている。かといって父親を軽蔑しているのではない。「目立ちたいから立候補したと思っていたけど、最近は違うのかなって。逆に道楽だったら失望しますね」と健太郎氏はカメラに向かって語る。父親の中には闘わずにはいられない、荒々しい業が渦巻いていることを息子は感じ取っている。

 ドラマではありえない、予想外のシーンが飛び出すのがドキュメンタリーの魅力だろう。『立候補』のクライマックスはダブルでやってくる。最初のクライマックスは、大阪府知事選最終日の難波。当選が確実視される松井一郎と前府知事・橋本徹がツーショットで並ぶ選挙カーへと、マック赤坂はゲリラ兵のごとく襲い掛かる。だが哀しいかな、その場を盛り上げるテクニックに秀でたタレント政治家の舌先によって、簡単に手のひら上で弄ばれてしまう。チキショー、マック赤坂はこのまま負け犬で終わってしまうのか!? 2012年10月に新潟で試写会を開いたものの、「何かが足りない」と感じた藤岡監督は追加撮影を敢行し、2012年12月の東京都知事選の様子を2度目のクライマックスとして挿入した。秋葉原に現われたマック赤坂は「恥ずかしいよ!」「帰れ!」と罵声怒声が投げつけられる中、安倍晋三らが演説する自民党の集会へと突撃していく。このとき、カメラは奇跡の瞬間を収める。自民党という巨大政党を相手に、マック赤坂が『ロッキー・ザ・ファイナル』(06)のロッキー・バルボアのようにほんの一瞬だけまばゆい輝きを放つ。

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