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写真家はレントゲン写真の夢を見る? X線写真家が写し出す、美しきスケルトンの世界

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 では、なぜそこまでの危険や苦労を冒しながら、彼はX線写真を撮影するのだろうか? その意図について「僕たちは見た目にとらわれた世界に生きている」と語るニック。「表面の下にあるものを見せることによって、そのような表面的な外見へのとらわれに対抗したい」と、単なる好奇心や美的欲求だけではなく、明確なコンセプトのもとに、彼はX線写真を撮り続けている。

 医療目的のみならず、郵便物のチェックや空港の手荷物検査などでもX線写真は使用されている。「監視社会に貢献する装置と技術でアートを作り、僕たちの生活から個性と自由を奪いかねない複雑で高度な機器を使って美を生み出すことができたら実に楽しい」と語る写真家。彼にとって、X線写真は社会への挑戦も意味している。毒を薬に変えることによって、新たな美を生み出しているのだ。

 一時期より薄れたとはいえ、福島第一原発の事故以降、日本人は放射線の恐怖を意識しながら暮らしている。雑誌や広告にも使用されている彼の写真は、単なる美的趣味だけにとどまるものではない。原発事故を経験し、放射線を身近に感じざるを得ない日本人だからこそ、また違った角度から美しさを眺められるのではないだろうか?
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

●ニック・ヴィーシー
1962年、イギリス出身。独学で写真を学び、数々の賞を受賞。『世界で一番美しいレントゲン図鑑』は2008年度IPA国際写真家協会賞書籍部門第1位獲得。

最終更新:2013/09/30 18:00
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