”反抗の教祖”は尾崎豊の一面にすぎないーー今こそ音楽家としての功績を振り返る
リアルサウンド
フォークが出自の尾崎にロックを教えたのは須藤。彼はもっと幅広い音楽性の中から尾崎が自分で望む方向性を見つけるための手助けをしようと、音楽的な基礎知識を授けたり、様々なアーティストの音楽を尾崎に聴かせていった。その中でも特に尾崎が惹かれたのが、先行するロックアーティスト、浜田省吾や佐野元春の音楽だ。そこで須藤は彼らを支えた町支寛二と西本明の二人を迎え、ファーストアルバム『十七歳の地図』を制作。アレンジ的には、ブルース・スプリングスティーンなどの影響を消化した80年代ロック直球のサウンドであり、後のJ-POPのひな形、原型ともなった。 メジャーなフォーマットの上に乗った尾崎の透明でありながらも生々しく切実な声は、楽曲に緊張感を与え、彼の音楽を孤高で唯一無二のものにした。
そして忘れてはいけないのが抜群に優れた彼のメロディーセンス。最近ではMr.Childrenやコブクロ、宇多田ヒカルらによってカバーされた彼の楽曲によって、はじめて尾崎豊をしる若者も多いという。彼らのような尾崎を原体験していない世代が30年近くも前の曲に惹かれる理由、それは「大人への反抗」を歌った歌詞でもなければ、カリスマ性あふれる尾崎の出で立ちでもない。純粋に音楽として、メロディーラインの美しさに魅力を感じるのだそうだ。尾崎の曲が今も世代や国を超えてカバーされ続けていることは「作曲家・尾崎豊」の偉大さを如実に表している。
今回発売となるベストアルバム『ALL TIME BEST』には初回特典として1984年に秋田市文化会館で披露された「I LOVE YOU」と1987年に茨城県民文化センターで歌われた「路上のルール」のライブ映像を収録したDVDが付属となる。どちらも初めて商品化されるライブ映像。尾崎の残した珠玉の楽曲とともに、彼の貴重なライブパフォーマンスも楽しみたい。
(文=北濱信哉)
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