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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第115回

オアシズ・大久保佳代子 セクハラ・下ネタで完全ブレークしたアラフォー女芸人の「変わらない」という強み

ookubokayoko1206.jpg撮影=尾藤能暢

 この1~2年、テレビ界では空前の「大久保佳代子ブーム」が起こっている。アラフォーと呼ばれる年齢に差しかかった頃からセクハラと下ネタの破壊力に磨きがかかり、じわじわと仕事が増え始めた。彼女は現在、単独で6本のレギュラー番組を抱える売れっ子芸人。しかも、そのほとんどの番組でMCを務めている。なぜ今、大久保がそんなに求められているのだろうか。

 大久保の芸風やキャラクターに何か急激な変化があったのかというと、そんな様子は見受けられない。彼女はいつも淡々としている平熱芸人。昔も今も変わらないたたずまいで、与えられた仕事をこなしているだけだ。なんらかの転機があって、急に評価が高まったわけではない。

 むしろ、彼女の強みは「変わらないこと」にある。大久保はもともと、芸能活動と平行して一般企業にも勤める「素人キャラ」として『めちゃ×イケてるッ!』(フジテレビ系)などに出演していた。そして、タレントとOLの二足のわらじを履く生活は、ごく最近まで続いていた。この二重生活を通して、大久保の「素人っぽさ」は純粋培養されていった。

 普通、テレビタレントはテレビに出続けることで、どんどんタレントっぽくなっていく。テレビを見ている一般人との考え方や感じ方のギャップが少しずつ大きくなり、良くも悪くも芸能人らしくなっていくのだ。

 だが、大久保はそうはならなかった。テレビの現場で多少ちやほやされることがあっても、翌日にはいつも通りの地味なOL生活という現実が待ち受けている。これでは調子に乗りたくても乗れない。しかも、お笑い芸人とは、女優やモデルのように女性としての自尊心を満たす仕事ではない。「ブス、ブス」と呼ばれ、笑われてなんぼの世界。大久保はいつまで経っても「プロの芸能人」を気取ることができなかった。

 その結果、大久保は「それなりのキャリアがあって、それなりの年齢に達しているのに、素人っぽさが消えない」という不思議な属性を帯びることになった。彼女は夢も希望も持たず、タレントとして与えられた役割を淡々とこなすようになった。それが彼女の独特のスタンスにつながっていった。

 大久保の代名詞といえば露骨な下ネタ。ただ、その下ネタには生々しさがなく、どこかカラッとしている。彼女は「下ネタを言う人」という役割を演じているだけ。その平熱ぶりが視聴者にも伝わっているからこそ、彼女の下ネタは支持されているのだ。

 例えば、同じ女性芸人の下ネタでも、友近の下ネタとはずいぶん印象が違う。友近の下ネタはもっと生々しく、血と肉のにおいがする。女性としての「業」をまざまざと見せつけるような、赤裸々で毒々しい下ネタだ。一方、大久保の下ネタは無味無臭。毒にも薬にもならないからこそ、気楽に笑って見ていられる。

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