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アイドルの自己紹介はなぜ長い? テレビドラマとSNSで「キャラクター化」する人々

 人々が自覚的にキャラクターを作り始めるようになると、テレビドラマや小説における人間の描き方も変わってくる。白岩玄作の小説を原作とした『野ブタ。をプロデュース』では、主人公は学校のクラスの人間関係を一種の“仮面劇”として捉えている。みんなが「こういう風に見られたい」というキャラクターを演じていることに自覚的な主人公が、いじめられっ子の女子をクラスの人気者にするため、「キャラクターのカスタマイズ」をする物語だ。『電車男』や『桐島、部活やめるってよ』、2013年に直木賞を受賞した『何者』でも、他者に対し自分をどんなキャラクターに見せ、どう承認を得るのかという悩みは、大きなテーマとして扱われている。

 このようにキャラクターを軸とした文化が発展してくると、コミュニケーションの方法にも変化が生まれる。テレビドラマでアニメや漫画のような演技をするキャラクターのように、人々は記号的な振る舞いによって認知や承認を求めるようになる。それをわかりやすく表しているのが、アイドルとファンの間のコミュニティだ。「自己紹介に次ぐ自己紹介」と『あまちゃん』ではギャグにされていたが、アイドルは印象的なキャッチフレーズと、アニメキャラのような振る舞いで、長い自己紹介をする。ファンはそれに対し、合いの手で承認をする。そのコミュニケーションは、端から見ると風変りに映る場合もあるが、当人たちにとっては心地良く親密だ。AKB48やももいろクローバーZといったグループは、ファンと親密な関係性を築くため、そういった“キャラクター作り”を自覚的に行ってきたのだ。

 成馬氏は、テレビドラマを軸にこの「人々のキャラクター化」について考察しているが、このような現象はもっと普遍的に、あらゆる文化に根付いていくのでは、と予測している。たとえばAKB48は自分たちのキャラクターについて歌ったりしているが、その傾向はほかの音楽でも起こり得るというのだ。神聖かまってちゃんやゴールデンボンバー、あるいはきゃりーぱみゅぱみゅといった、漫画やアニメのキャラクターのようなアーティストが人気を博し、ゆるキャラのふなっしーが新曲を発表するのも、あるいは無関係ではない話かもしれない。

 テレビドラマを軸に、現代文化を鋭く評した『キャラクタードラマの誕生』は、音楽ファンにとっても興味深い読み物といえそうだ。
(文=編集部)

■関連情報
『キャラクタードラマの誕生』
著者:成馬零一
四六判並製232頁
本体1600円(税別)
河出書房新社

<概要>
 『銭ゲバ』岡田惠和、『最高の離婚』坂元裕二、『家政婦のミタ』遊川和彦、『あまちゃん』宮藤官九郎、『すいか』木皿泉、『リーガルハイ』古沢良太……最も刺激的なテレビドラマを作る6人の脚本家の作品を読み解きつつ、テレビドラマの文学的評価を高めた『岸辺のアルバム』や『北の国から』といった《文芸ドラマ》、八〇年代後半に若者の風俗を描き一世を風靡した《トレンディドラマ》に続く、新しいドラマの潮流を《キャラクタードラマ》という新概念で説き起こす。岡田惠和氏、遊川和彦氏のスペシャル・インタビューも収録。さらにカバー写真には、業界大注目「ミスiD2014グランプリ」蒼波純さんが登場。なぜ『家政婦のミタ』は、『あまちゃん』は、『半沢直樹』は、ムーブメントになったのか……この一冊ですべてが判明する。新時代の本格的テレビドラマ評論。

最終更新:2013/12/16 09:00
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