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「1秒でも歌でイリュージョンが生まれれば成功だ」 鬼才・豊田道倫が語るポップ論

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今回の新作は「豊田道倫&mtvBAND」名義でのリリースとなる。

【リアルサウンドより】

 昨年3月にアルバム『m t v』をリリースし、各方面から高く評価されたシンガーソングライター豊田道倫が、1月15日に早くも新作『FUCKIN’ GREAT VIEW』を発表する。今回の演奏を担当するのは、前作発表後のツアーを担った「m t v BAND」。宇波拓(ベース、アコギ、キーボード)、久下惠生(ドラム、Voice)、冷牟田敬(ギター、ピアノ、ヴォーカル/コーラス)という類まれな個性を持つ面々が集まり、豊田とともに研ぎ澄まされたロックサウンドを奏でている。それは詩情豊かな日本語ロックでありつつ、レッド・クレイオラやフレイミング・リップスにも通じる、突き抜けた音像体験でもある。2014年のシーンに突如として登場したこの怪作について、豊田自身がじっくりと語った。

――前作『m t v』から1年足らずという短いインターバルですが、今回の『FUCKIN’ GREAT VIEW』はmtvBANDでの活動の中でできた曲ですか?

豊田道倫(以下、豊田):『m t v』は去年3月にリリースして、4、5月にツアーをしました。こういうメンバーでやるというのは得がたいことなので、レーベルとしてはライブ盤も考えつつ、という感じでツアーを通して録音はしてたんですよ。ただ、僕はそれをリリースすることはあんまり考えていなくて、どうせならもう1枚作りたいと思ってました。ストックはアルバム3枚分くらいあるんだけど、春から夏にかけてササッと曲が生まれたので、ストックは使いませんでした。

――では、このバンドでやることを想定した新しい曲なんですね?

豊田:そこは半々という感じで、何となく自分でやって、バンドでもできる曲を、と。

――mtvBANDのメンバーは大変な個性派ぞろいですが、今回のアルバムはバンドのゴツゴツとした音の空気、ムードがさらに出ていますね。先程の「得がたさ」という意味で手応えがあったのでは。

豊田:手応えはあったけれど、かといって、このメンバーで「しっかりリハーサルを重ねて音を作り上げて、しっかりしたレコーディングをしよう」とは最初から思っていなくて。八丁堀にある、小さなアートスペースに全員来てもらって、宇波拓のコンピュータで録りました。みんな何の日か把握してなくて、普通に練習だと思ってたらしい(笑)。昔のレコードって、ビートルズとかにしてもけっこうそんな感じで、直感で録音していて、それほど作り込んでないでしょ? それをこのメンバーでやりたかったんですよ。

――それぞれ高い演奏能力を持っている人たちが、あえてスタジオで一気に録る。

豊田:きちんと作り上げたものをちゃんとしたスタジオで作り込むのは、逆にたいしたことではない、という感覚が僕の中にあって。ミストーンもOKするくらいの感じで(笑)。この4人は集まれる時間がなかなかないので、選択肢は他になかったね。オーバーダブも基本的になし。ミックスは東京でやって、マスタリングはAbbey Road。

――事前にデモなどはあったのですか?

豊田:ない。簡単なコード譜くらいでその場でパッと。そういう、すごく野性的というか素朴な録り方をしました。

――そうした結果、「Heavenly Drive」あたりの曲ではグラスゴーの名物バンド、パステルズのような浮遊感も出てますね。

豊田:ちゃんとしたスタジオで別々のブースに入って録音すると、音は分離しているし修正も可能だけど、化学反応は起こりにくいですね。日本のそういう盤を聴いても「ちゃんとやってるなー」しか感じなくて。非常に危なっかしいんだけれど、狭い空間で全員揃って録音して、音もかぶっている、そういうのもいいかな、と思ったんです。

――ただ、歌詞の面ではいつものシャープな豊田さんで、シンガーソングライターの作品という印象も強い。

豊田:結局は一人、という意識が強いせいか、これもソロアルバムという気はしてます。もうひとつ、アコギ一本で『naked FGV』という特典CDを作ったんだけど、あれでも成立するくらいの歌。極端に言えば、メンバーが演奏を間違っていても、歌があっていればとりあえずはいいと思っていて、丁寧に歌いました。いつもはボーカルを少し引っ込ませるくらいのミックスにするけど、今回はかなり歌が前に出ているかもしれない。

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