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『風の谷のナウシカ』が現実になる日は近い――? 倉本聰『ヒトに問う』

hitoni.jpg『ヒトに問う』(双葉社)

 『ヒトに問う』(双葉社)読了後、頭に浮かんできたのは『風の谷のナウシカ』だ。ジブリ作品の多くは、現代社会にあふれるコンクリートジャングルではなく、森や空などの自然が中心に描かれている。そんな主観的形象があり、『風の谷のナウシカ』も現代社会とは違う、ある種のパラレルだと思っていた。

 だが、そうではない。第一話には、こんな冒頭文が添えられている。

「ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は、数百年のうちに全世界に広まり巨大産業社会を形成するに至った。大地の富をうばいとり大気をけがし、生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は、1000年後に絶頂期に達し、やがて急激な衰退をむかえることになった。『火の7日間』と呼ばれる戦争によって、都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し、複雑高度化した技術体系は失われ地表のほとんどは不毛の地と化した」
 
 『ターミネーター』が、人間が社会の機械化を進めたゆえに生んだ怪物ならば、『風の谷のナウシカ』は、人間の欲が生んだ地球の生態系の崩壊といえる。本書の著者・倉本聰氏は、それが現実のものになるかもしれない、と警鐘を鳴らす。

 『北の国から』などの脚本家と知られ、30年以上前から北海道の富良野に住み、自然破壊や崩壊した社会秩序について作品を通じて問題提起している倉本氏。本書は、3.11で壊滅した福島を歩き、今後の日本のあるべき姿について2年半にわたり書き綴った、渾身のメッセージ本だ。

 「最悪の場合、首都圏の3000万人が避難対象となることを想定していた」(菅直人元首相)という福島第一原子力発電所事故。その恐ろしさから、脱原発を訴える人も少なくないが、その先に新たな代替エネルギーを求めていることに、倉本氏は疑問を呈する。「エネルギー量そのものを減らすことしか根本的解決策はない」と。

 倉本氏の代表作である『北の国から』には、こんなやりとりがある。「電気がなかったら暮らせない」という純に対し、「夜になったら寝るんです」と父・五郎が返すシーンだ。
 
 屁理屈にも聞こえるかもしれないが、夜になったら寝るというのは人間の本能的な行動だ。東京ベイ浦安市川医療センター長の神山潤氏も「早起き 早寝 生活リズム」(http://www.hayaoki.jp/gakumon/gakumon.cfm)で推奨している。睡眠をはじめ、食事や排泄など人間本来の行動を基本としなければ、体は蝕まれていく。減少傾向にある睡眠時間を増やすだけで、BMI(メタボリックシンドローム)が下がるというデータもある。それなのに、生活が改善されないのには理由がある。それは、人間の欲だ。

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