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『風の谷のナウシカ』が現実になる日は近い――? 倉本聰『ヒトに問う』

 私自身、南アフリカW杯の取材で現地に滞在した際、夜間出歩けないことにストレスを感じた。私が宿泊したホテルは簡易的な朝食会場しかなく、夕食がとれるレストランは併設されていない。FIFAメディアセンターにあるのは、舌に合わない日替わりのもの(まれにおいしい食事があるが)か、チーズバーガー。食事をとりに外出したいが、電灯も少なく、治安の悪い南アフリカでは危険極まりない。睡眠、食事、排泄は確保されているものの、どこか満たされない。そんな生活が3週間を超えると、ストレスがたまってくる。食べたいものを食べたい。開放的な空間で過ごしたい――。人間の欲望はキリがない。本書も、そんな現代人の性(さが)を浮き彫りにする。

 こんな興味深いデータがある。これからの人間生活のあり方について、京都府宮津市の講演会場で約800人に問うたところ、一般市民90%が「過去に回帰する」ことを選んだ半面、高校生の70%が「現在享受している生活を捨てられない」と答えたという。また、渋谷の若者に生活必需品を聞くと、1位:金、2位:ケイタイ、3位:テレビ、4位:車という回答だったのに対し、富良野塾(倉本による脚本家や俳優の養成施設)では、1位:水、2位:火、3位:ナイフ、4位:食料という結果だったと記されている。「若者達は生まれた時から恵まれた暮らしと便利さがあり、それのない生活は考えられないのだ」と倉本氏が指摘しているように、現代人が過去の生活に戻るのはそう簡単なことではない。私自身もそれに当てはまるから耳が痛い。

だからこそ、いま一度、真剣に考えるべきだと思う。「ヒトが生きるために何が必要なのか」という、根本的なことを。本書は、便利さ豊かさを享受しすぎた日本人の目を覚ます一冊になるだろう。
(文=石井紘人@FBRJ_JP)

最終更新:2014/01/22 11:27
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