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前田敦子が挑んだ異例の「ミュージック・シネマ」――映画女優路線を進む彼女の野望とは?

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前田敦子の「ミュージック・シネマ」『Seventh Code』

【リアルサウンドより】

 前田敦子が主演を務めた映画『Seventh Code』が1月11日から一週間限定で公開され、小規模公開ながら、劇場では連日満員の状態が続いている。この映画は、元々は3月5日に発売されるシングル、『セブンスコード』のMVとして制作されたものだ。ザクザクとしたギターのリフレインが耳に残る、アップテンポな疾走感のあるロック楽曲。そのイメージを元に、『CURE』『カリスマ』などで知られ、海外の受賞経験もある鬼才黒沢清監督がメガホンをとった。AKB48のプロデューサー秋元康に「映画らしいものを」と依頼され、監督自身が脚本を書き起こした。結果的に、エンディングで突然前田敦子が歌いだすという、MVの枠を超えた異例の「ミュージック・シネマ」が仕上がった。

 黒沢清といえば、熱狂的なファンを持つ、海外からの評価も非常に高い監督。今回の『Seventh Code』もMVでありながら『第8回ローマ国際映画祭』で監督賞と技術貢献賞の二冠に輝いた。前田敦子も頻繁に名画座通いをするなど、大変な映画好きで知られる。その2人のコラボに期待して、映画ファンが押しかけた。

 デビュー映画『あしたの私のつくり方』以来、定期的に映画に出演してきた彼女。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』などのライトな層に向けた映画だけではなく、最近は、映画通から評価が高い山下敦弘の作品(『苦役列車』『もらとりあむタマ子』)に出演するなど、本格的に映画女優としての道を歩もうとしている。今回の黒沢清監督とのコラボは、前田敦子としても願ったりかなったりの企画だろう。黒沢清監督も、前田敦子を唯一無二の存在であるとして絶賛の声を送っている。

 「世界の黒沢」が認めた彼女の魅力はどのようなところにあるのだろう。映画評論家の前田有一氏は以下のように分析する。

 「もともと彼女は映画が大好きで、女優志向が強い方でしたよね。AKB48のセンターを務めていたのに、大作映画からは背を向けて、山下敦弘監督作品などのように少々マニアックな映画ファンが見るような映画に出演する。自身が映画ファンであるだけに、アイドルとしてだけ見られるというのではなく、本格的な作品で女優として認められたいという思いがあったのでしょう」

 「アイドルがやらない役も引き受ける」という、彼女の体当たり的な役作りも業界筋からの評価が高い一因のようだ。

 「批評家筋からも認められた『もらとりあむタマ子』では、20代のやさぐれたニートという、だらしのない汚れ役を演じるなど、アイドル女優なのに度胸の据わったところがあります。コタツでだらだら過ごして、お尻をかいたりするような役なんて、他のアイドル女優はやりたがらないですよね。すごくプロ意識が高いところがある。こういう役柄はやりたくない、というのではなく、演技力を高めるために様々な要素を吸収していこうという気概が感じられます。だからこそ前田敦子は映画監督からも評価されているのでしょう。大きな事務所に所属するタレントさんを起用した場合、事務所からの色々な制約の中で映画監督は映画を撮らなくてはいけない。例えば、戦争モノを撮るのに坊主にはなれない、これはいやだ、あれはいやだ、というような。そんな中で前田敦子は先に述べたニートの役など、監督の意図どおりに、なんでもやってくれる。『苦役列車』では下着一枚になって水辺で戯れるというシーンもあったり、『あしたの私のつくり方』では、16歳で入浴シーンにチャレンジしたり、役作りのためにばっさりと髪を切ったりしています。そのような真面目な姿勢が業界では評価されているのでしょう。いまどきの映画のギャランティーはそれほど高くありませんから、専業俳優の方でも、一本の映画のために役作りをしてしまうと他の映画出演時に影響が及んでしまうので、極端なキャラクター付けが必要な映画を避ける傾向があります。そのようなキャラクター付けを厭わない前田敦子は貴重な存在なのでしょう」

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