日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > ダサさがクセになる『天誅』
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第45回

ダサくて古い、けどクセになる『天誅』のこってり味

 物語は、夫の暴力に悩む妻が逃げこんできたDVシェルターでボヤ騒ぎが起きたところから始まる。夫のDVや嫌がらせはエスカレートしていくが、警察は逮捕に消極的で頼りにならない。そうこうしているうちに、ついに夫が妻を襲いにやってくる。彼女の悲鳴を聞きつけたサナは、またしても街をムダに回転しながら救出に走る。そしてピン子は叫ぶのだった。「サナ、契約!」と。「承知!」と返事をしたサナは「どけよ、正義の味方のつもりか?」と声を荒げるDV夫に向かってこう言い返す。「正義など私にはない。握り飯、1つ分の仕事をする。それだけ」。激しいアクションの攻防の末、DV夫に“天誅”を下したサナ。しかし、助けられた妻はなぜかその後、自殺してしまう―――。

 痛快な人情モノだと思っていたら、まさかの後味の悪いエンディング。その意外性を含め、すべてが過剰だ。NHK朝ドラ『あまちゃん』では、アキ(能年玲奈)が「ダサいくらいなんだよ、我慢しろよ」と言ったが、その言葉がピン子の声で脳内に再生されてしまう。能年ちゃんに言われる分には構わないが、ピン子に言われるとすると、なかなか受け入れがたいものがあるのだけど……。

 ダサくて古くてTOO MUCH。人は新しくてカッコいいものばかりに惹かれるわけではない。この『天誅』のアクの強いこってり味には、どうしようもなく引き寄せられてしまう魔力がある。クセになってしまいそうだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

「テレビ裏ガイド」過去記事はこちらから

最終更新:2019/11/29 18:00
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