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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.260

ハローワークにはない闇ビジネスの就職読本! この世の“生き地獄”をシミュレート『東京難民』

tokyonanmin02.jpg看護師の茜(大塚千弘)はホスト遊びにハマってしまい、ソープ嬢に身をやつすことに。東宝シンデレラ出身・大塚千弘の初ヌードも見どころ。

 ネットカフェ難民となった修は即日払いのティッシュ配りでなんとか喰い凌ぎ、サイト登録した治験バイトへ向かう。朝から晩までベッドで横になっているだけで、1日で2万円になるおいしい仕事だ。ようやく運が回ってきたとぬか喜び。現金20万円を手にした修は、逆ナンしてきた女の子・瑠衣(山本美月)に誘われて入った歌舞伎町のホストクラブで大散財。ついに所持金ゼロとなり、ホストクラブの支配人・篤志(金子ノブアキ)に頼み込んでまさかのホストデビューへ。ビバ、素晴しき行き当たりばったりライフ! 社員寮とは名ばかりの狭~いマンションで先輩ホストの順矢(青柳翔)たちと共同生活を始めた修は、風俗嬢をメーンターゲットにした朝ホストとして逆転人生を目指す。

 当然ながら、売れっ子ホストになれるのは極ひと握りの人間だけ。ナンパでも枕営業でもして、とにかく金払いのいい常連客をキープするしかない。ホスト遊びは初めてというマジメそうな看護師の茜(大塚千弘)と修は仲良くなり、その後も茜は指名してくれるようになった。篤志は「あの客はツケでいいぞ」と囁く。ツケが溜まって支払えなくなったら、ソープに沈めればいいと。そうすれば、より太い客になってくれる。この世界で手早く成功する秘訣は、無知な素人たちからお金をむしり取ること。修は売れっ子ホストになれるかどうかの分岐路に立たされる。ネカフェ生活に戻るのは嫌だが、冷血ホストに徹することも修にはできない。瑠衣のツケを肩代わりするハメになった順矢と共に店からバックレることに。華やかなホストの世界から、汗と埃まみれの解体作業現場へと転がり込む。

 歌舞伎町から逃げ出した修たちにとって、寮と食事付き、即金払いの日雇い労働はかなり魅力的な職場だった。最低レベルの食事でも、肉体労働した後ならおいしく感じられる。しかも職場の同僚たちはみんな優しい。ようやく落ち着いた生活が送れることに安堵する修に、インテリ風の労働者・小早川さん(小市慢太郎)が親切に解説してくれた。寮費、食事代、作業着代は給料から差し引かれる。これは他に行き場のない貧困者たちから搾取し続ける貧困ビジネスなのだと。この状況に甘んじていると、社会の底辺から抜け出すことができなくなる。なるほど、確かに修と順矢以外の労働者はほとんど年輩者たちばかりだ。一度社会から落ちこぼれてしまった人間は、アリ地獄に堕ちたアリのようにそこから脱出することが不可能なことを修は思い知らされる。

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