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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.269

戦争中のベトナムで撮影した幻の作品が初公開!『ナンバーテン・ブルース/さらばサイゴン』

number10blues03_s.jpg戒厳令が敷かれたサイゴン市(現ホーチミン市)での撮影。長田監督らは民間機の最終便で日本に帰国。その10日後にサイゴンは陥落した。

長田「ベトナムで撮影していたときから忸怩たる想いはあったんです。戦争をしている国にまできて、娯楽映画を撮っている自分たちは一体何なんだと。お蔵入りしたことは、これはある種の報い、こういう形で落とし前をつけるしかなかったんだと納得するしかなかった。それが40年近く経って、劇場公開されることになった。運命論者である川津裕介さんは『それがこの映画の運命だったんだ』と言ってますよ(笑)。僕にしてみれば、この映画は大傑作ではないかもしれないけど、非常に生命力が旺盛な作品だということですね。僕は『映画を撮りたい』『監督をやりたい』とベトナムに行くまでずっと思っていたけれど、日本に帰ってから憑き物が落ちるように薄れていったんです。『一本の映画で数本分の体験をしたんだからもう充分じゃないか』と諦めていたんです。ところがどっこい、僕の子どもであるこの映画は生きていた(笑)。戦時中に生まれた僕が、1970年代の高度経済成長という日本の転換期にベトナムで映画を撮り、東日本大震災後の原発再稼働問題で揺れる今、公開されることになった。そこには大きな意味があるように僕は感じているんです」

 杉本の恋人を演じたベトナムの人気女優ファン・タイ・タン・ランは戦争終結後に亡命を果たし、現在は米国で暮らしている。2013年の「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」で完成した『ナンバーテン・ブルース』を初めて鑑賞し、今はなき母国の風景に涙を流したそうだ。『ナンバーテン・ブルース』には“懐かしい戦争”の匂いが刻み込まれている。
(文=長野辰次)

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『ナンバーテン・ブルース/さらばサイゴン』
監督・脚本/長田紀生 音楽/津島利章 撮影/椎塚彰 照明/松尾清一 録音/菊地進平 編集/大橋冨代 出演/川津裕介、ファン・タイ・タン・ラン、磯村健治、ドァン・チャウ・マオ、きくち英一 配給/プレサリオ 4月26日(土)よりテアトル新宿にてロードショー (c)2012 PRESARIO Corp.
https://www.facebook.com/Number10Blues

最終更新:2014/04/24 18:00
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