日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『死神くん』は大野のハマリ役
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第55回

『怪物くん』に続くハマリ役? 嵐・大野智が作り出す『死神くん』の距離感

  
 第3話からは、死神くんのライバルとなる悪魔が登場した。悪魔は人間の弱みに付け込み、魂と引き換えに、3つまでならどんな願いでもかなえる力を持っている。予定外の死者が出てしまうと困る死神にとって、厄介な存在だ。

「人間はいずれ死ぬんですから損な契約じゃない」
「人間は欲望で出来ている。人生とは欲望を叶える競争です。あなたはその特急券を手に入れた」

と、「契約」を迫っていくのだ。
 
 演じるのは菅田将暉。悪知恵が働く少年っぽさと不気味な存在感を併せ持つ稀有な俳優で、悪魔役にピッタリだ。うだつのあがらない生活をして自暴自棄になっていた桐嶋(柄本時生)は、悪魔と契約をしてしまう。そして、死期の迫った病弱の令嬢・瞳(杉咲花)と出会い、恋をするのだ。病魔に蝕まれた瞳は、思い出の海が見たいと願い、桐嶋はそれをかなえるため足を骨折しながらも、彼女を背負って海に向かう。悪魔は自分に願いを言えばすぐに海に連れていけると迫るが、死神くんは「あなたが死んだら、彼女が悲しむだけ」と思いとどまるように説得していく。

 『死神くん』は、「死」をテーマにしたドラマだ。だが、「死」を見つめ直すことで、「いかに生きるか」を描いている。

 大野の眉間にほのかに皺を寄せ、口角をわずかに上げた、ふてくされたようなふくれっ面は、物悲しさを漂わせつつ、どこか優しい。それは原作の『死神くん』の世界観そのものだ。だから死神くんを演じるのは、やはり大野智以外考えられない。

 死亡予定者の感情に流され、死後の結果を見せるという職務違反を咎める監死官(桐谷美玲)に、死神くんは反論する。 

「『死は人間にとって喜ぶべきおめでたいことだ』っていうアンタの教えはなんなんだ? あの子は死を恐れて悲しんでいる。だったら、死んでいく人間のささやかな願いをかなえるくらいは……」

 大野は終始、淡々としたセリフ回しで死神くんを演じている。それが物語との間に適度な距離感を生み、押し付けがましい「お涙ちょうだい」な展開になることを拒んでいる。それは死神くんと死亡予定者の距離感そのものだ。死神くんは死亡予定者にそうであるように、視聴者に冷めた目線で、時にささやかな温かさで寄り添っているのだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)

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最終更新:2019/11/29 17:59
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