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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.271

ネット社会が生んだ新しい孤独にどう対処する? 家族の崩壊と再生の物語『ディス/コネクト』

disconnect03.jpgネット専門の探偵マイク(フランク・グリロ)。自分の息子がパソコンで何かトラブルを引き起こしたことに気づくが……。

 同じ5月24日(土)に公開される早見和真原作、石井裕也監督の『ぼくたちの家族』と同様に、『ディス/コネクト』もまた家族の崩壊と再生が描かれる。『ぼくたちの家族』の父親(長塚京三)はマイホームさえあれば温かい家庭を築くことができると信じて働き続けてきたが、母親(原田美枝子)の入院がきっかけで多額のローンが残っていることが発覚。子どもたち(妻夫木聡、池松壮亮)は母の介護と膨大な借金に向き合わざるをえない。幸福な家族のシンボルだったマイホームが、一家を苦しめることになる。『ディス/コネクト』の弁護士ボイドもネット探偵のマイクも、家長である自分が懸命に働けば、子どもたちはその背中を見て真っすぐに育ってくれると信じていた。だが、子どもたちには、いつも背中を向けている冷たい大人としてしか認識されない。ネット上で知らない人と仲良くなるのは簡単なのに、同じ屋根の下で暮らす家族とは顔を向き合って本音を語り合うことは容易ではない。だが、本音で向き合うことを避けていては、再生の道は開かれない。タッチパネルの操作と違って、それはとても煩わしく、鈍い痛みを伴う作業だ。

 『ディス/コネクト』の後半、弁護士のボイドは息子のベンがなぜ自殺を図ったのか真相が知りたく、ベンのネット上の履歴を調べ始める。息子のパソコンを覗くという行為は、思春期の少年の心の闇に足を踏む込むことと同じだった。ボイドはそこでジェシカという少女に出会う。彼女もまた心に深い闇を抱えていることをボイドは知る。事件の真相が分かったところで、ベンの意識が回復するわけではない。父親であるボイドにできることは、ただひとつ。病院で眠り続ける息子の手をしっかりと握り、その温もりを確かめることだった。
(文=長野辰次)

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『ディス/コネクト』
脚本/アンドリュー・スターン 監督/ヘンリー=アレックス・ルビン 出演/ジェイソン・ベイトマン、ホープ・デイヴィス、フランク・グリロ、ミカエル・ルクヴィスト、ポーラ・パットン、アンドレア・ライズブロー、アレキサンダー・スカルスガルド、マックス・シエリオット、コリン・フォード、ジョナ・ボボ、ヘイリー・ラム 
配給/クロックワークス PG12 5月24日(土)より新宿バルト9ほか公開 
(c)DISCONNECT,LLC 2013
http://dis-connect.jp

最終更新:2014/05/22 18:00
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