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「もっと恐ろしいものを表現したい」坂本慎太郎が追い求める“一線を越えた”音楽とは?

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【リアルサウンドより】

 2ndアルバム『ナマで踊ろう』を5月28日にリリースする坂本慎太郎のインタビュー後編。「人類滅亡後の音楽」をテーマとした新作について語った前編に続き、後編では音楽における歌詞の役割から、作者と作品の関係、さらには表現のリミットをどう認識するかまで、聞き手の小野島大氏と大いに議論してもらった。(編集部)

「時間がたつことの恐怖のようなものも入れたかった」

ーー「人類滅亡後の地球に流れる常磐ハワイアンセンターのハコバンの音楽」というコンセプトは、歌詞がなくても成り立ちますよね。

坂本:うん、成り立ちますね。

ーー実際、前作もそうでしたが今作もインストのCDが同梱されるわけですよね。にもかかわらず歌詞をつけたというのは、音だけでは伝えきれない思いがあるということなんでしょうか。

坂本:いや、そうではなくて…日本語の歌詞にこだわって音楽をやるのが自分のテーマで。日本語の歌詞がちゃんとのってる良い曲を作るというのが、自分のやることだって、どこかで思ってるところがあるんですね。インストの音楽とか…聴きますけど、自分がやらなくても誰かほかの人がやるだろうって思いがあったりします。曲を作るって行為は、日本語の歌詞がついてる曲を作る、ってことになってますね。

ーー歌詞があるとそこには意味が出てきますし、聴き手はそこからなんらかのメッセージを読み取ろうとするわけですが、そこも含めて歌詞を書きたい、と。

坂本:そうです。言葉の意味とサウンドの組み合わせから生じる表現ということですね。歌詞で何かを言いたいというのではなくて、この言葉とサウンドが一緒になった時に出てくるもので、何かを伝えるということをずっとやってるつもりなんです。今回はこういうサウンドに、こういうストレートな歌詞が乗った時に出てくるムードがおもしろいと思ったってことですね。

ーー今回の歌詞はかなり強いですよね。裏読みの余地がないぐらいストレート、という話もありましたが、これが、ある種のどかな音楽と組み合わされた時の違和感がすごく強烈ですね。

坂本:ほんとの意味で恐怖感を与えるような音楽をやりたいっていうのがありましたね。

ーー全体を象徴するのは一種の終末思想的な。

坂本:ありますね。あとは…すごく時間がたつことの恐怖というか。そういうのも入れたかったですね。

ーーそれは「死」ということですか。

坂本:もちろん「死」も含まれるんですけど、個人的な死とかじゃなくて、もっとスケールの大きい…ただ時間が流れることへの恐怖っていうか。身近なことでいうと、昔のマイナーなソウルのコンピレーションとか買うと、当時のレコーディング風景の写真が載っていて、みんな20歳ぐらいですごく楽しそうに録音してる。昔は何も思わなかったんだけど、最近見るとすごく怖くなったりするんです。この人たちはもういないんだけど、その念だけがレコードに閉じ込められている。当時のムードなり空気なりが時空を超えて自分の部屋にやってくるわけで。で、プレイするとそのムードが立ちあがってくる。そのへんに音楽の重要な要素もある気がしますね。それってミュージシャンが目の前で演奏してるのとまったく違う感覚じゃないですか。もう死んだ人の声が生々しく聞こえる。かければ当時の雰囲気がそのまま自分の部屋で再現されるっていうのも、考えるとちょっと怖い…それは死が関係してるんですけど。道を歩いてると、この道も江戸時代はちょんまげ結った人が歩いてたんだなと思うと(笑)。すごい不思議なのと同時に怖くなる。そういう感じを全体的に入れたかったんですよ。

ーーなるほど。

坂本:あと自分が死んでーー自分が死ぬのはもはやどうでもいいんですけどーー死んだあともそのまま何万年も時が流れていく感じ。そういう途方もない感じというか。

ーー普通の人だったら、死んだらそれでオシマイですけど、クリエイターの人は死んでも作品が残りますよね。それは意識することはあります?

坂本:意識することはないですね。自分が死んだら終わりだと思ってるんですけど、今言ったことは作品を作る原動力にはなるっていうか。

ーーそういうことを想像することが。

坂本:そうですね。

ーーある音楽家がね、10年後20年後に自分という存在が忘れられても、自分の曲なり作品なりが残ってくれればいいと言っていたんですが、その気持ちはわかりますか。

坂本:う~~~~~~ん………そうですねえ……わかるとこもありますけど…うーん…わかんないとこもありますねえ。

ーー自分が死んだらあとはどうでもいいっていう感覚。

坂本:うん、その感じもすごくありますねえ。自分を出すんじゃなくて作品だけ世に出て、自分は消えたいとか、そういう思いもあるんで、半分わかるとこもあるんですけど。

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