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週刊!タレント解体新書 第4回

坂上忍は「毒舌キャラ」じゃない!? 『くりぃむしちゅーの超!怒られた発表会』(6月15日放送)を徹底検証!

 では、「毒舌キャラ」と「正論キャラ」の違いとは何か。「毒舌キャラ」を評するときに多くの視聴者は「自分が普段思っていたけど言えないことを言ってくれる」といった感想を述べがちだが、実はそうではない。結果的にそうなってはいるが、「毒舌キャラ」とは基本的に、視聴者が思いつかないが無意識下で願っている言葉を現実に投下するのがその役回りだ。そして結果的に、視聴者に「自分が普段思っていた」と勘違いさせる。そんなトリックが「毒舌キャラ」にはある。対して「正論キャラ」は、もっとストレートだ。「正論キャラ」は、より真っすぐに、視聴者が普段思っているが言えないことを口にする。少なくとも、2014年6月現在の坂上忍は、そういった存在である。

『超!怒られた発表会』で、坂上忍は受ける側のポジションである。「被害者」の言い分を聞き、その上で、理詰めで彼らを「正論」によって説得する。あくまでもフラットな立ち位置を崩さない。だがこの番組の中で、坂上忍は一度だけ、本気のテンションで怒る姿を見せる。その相手は富田マネジャーである。富田マネジャーが坂上忍に対する言わば愚痴を言う際、緊張して顔がにやけたふうに見えるのだが、そこで初めて坂上忍は立ち上がってこう怒るのだ。

「大事な問題のときに、なんでお前そうやってヘラヘラ言えるんだよ!」

 これは明らかに「毒舌キャラ」の言葉ではない。むしろ、坂上忍本人の心からの叱責だと言って間違いないだろう。これを聞いて、溜飲を下げる中年以上の社会人は少なくないはずだ。思っているが、言えない。昨今の社会事情や立場を考えてしまい、たとえば会社の部下に対して言えないことを坂上忍が言ってくれている。だからこそ、坂上忍はいまこの時代に必要とされているのだ。「正論」を直接言えない時代だからこそ、坂上忍という「正論キャラ」が求められているのだと言ってもよい。

 そう。坂上忍の発言は、芸能界というムラの中での「キャラ」から発せられるものではなく、むしろ大きな社会から「正論」を怒鳴る。これは我々視聴者に対して、坂上忍が子役を叱って育てるという生業をほかに持っているというイメージも大きく加担しているだろう。坂上忍は芸能界にいながらも、芸能界の住民ではないというイメージ。この人は芸能界だけではなく、通常の社会とちゃんと接しているのだというイメージだ。だからこそ、その言葉には説得力があり、明日からもまた、坂上忍は「正論」を口にし続けるだろう。「正論」が直接口に出しにくくなった現代の日本社会が生んだ徒花。それが坂上忍なのである。

【検証結果】
 坂上忍はタレントとして、かなり異質な存在である。「かつての天才子役」「苦渋をなめた経験がある」「ギャンブル好きの無頼漢」そして「現在は子役に対しての教育者」と、数々の歴史と顔を持つ。それらすべての要素が「正論」を述べるためにプラスに働いていて、それが時代から要請される形で、今の坂上忍の状況がある。少なくとも今後数年は、この日本社会のギスギスした感じはなくならないであろうことを考えると、本人が望む限り、この坂上忍という現象はかなり長く続くことが予想される。みのもんたの後を継ぐ形で、朝のニュース番組のメインキャスターに坂上忍が立つ未来は、案外早く到来するのではないか。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2014/06/19 11:26
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