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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.278

女性の中に潜む少女性とおばはん的要素の妙味。『怪しい彼女』の“妖女”に男はみんな首ったけ!

ayakano02.jpg女手ひとつで息子を育て上げたオ・マンス(ナ・ムニ)だが、気がついたらおばあちゃんになっていた。叶えられなかった夢が胸に去来する。

 オ・ドゥリの豪快な弾けっぷりには理由があった。若くして結婚したものの、愛する夫は出稼ぎ先で事故死。お腹に子どもを宿していた彼女はそれからは死にもの狂い働き続けた。子どもを食べさせることを優先させ、自分の靴や衣服を買う余裕はなかった。子どもの進学のために、世話になった人を裏切って後ろ指をさされる汚いまねもやった。子どもが一人前になり、ようやく首が回るようになったと思えば、もう自分はすっかりおばあちゃんになっていた。オ・ドゥリがステージで歌う曲には、人生の重みと青春のはかなさが込められている。

 20歳に若返っても頭はおばさんパーマのままというシム・ウンギョンのコメディエンヌぶりが冴え渡る。かわいい顔して、口から出てくるのはおばはん言葉の大洪水。「噓ついたら、その口を引き裂くよ」なんてバイオレンスな台詞が平気で飛び出す。テレビ局の独身プロデューサー、ハン・スンウ(イ・ジヌク)と2人っきりでいいムードになったときは「好きな男性のタイプ? しっかり家族のために稼いでくれて、夜は強いほうがいいねぇ」とイヒヒと笑う。下ネタも全然OK! 見た目のかわいさと中身とのギャップに周囲の男たちは散々振り回される。でも、男たちはそんな彼女に振り回されるのが楽しくて仕方ない。

 主人公が若返って人生をやり直すという物語は、『アゲイン』をはじめこれまでに幾多もあったが、『怪しい彼女』が特別な作品となっているのは、シム・ウンギョンという生身の女優が20歳のオ・ドゥリ、70歳のオ・マンスンという2つのキャラクターを見事に同居させながら演じていることに尽きるだろう。本作の大きな見せ場である歌唱シーンは、製作サイドは当初は吹替えを用意するつもりだったが、シム・ウンギョンが自分で歌うことを申し出た。歌唱トレーニングの効果もあるのだろうが、人生の酸いも甘みも嗅ぎ分けたベテランのシャンソン歌手のような堂々とした存在感で、青春まっさかりのアイドルみたいにキャピキャピッと歌い上げる。ひとつの曲を歌い上げる中で、メロディと歌詞の間を様々な時間が流れ、そして交差していく。ステージシーンは、まるでシム・ウンギョンが自分の人生をタイムトラベルしている様子を見ているかのようでもある。

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