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20世紀フランス哲学者の名脇役が集結『思想史の名脇役たち 知られざる知識人群像』

51+CXdG6R3L.jpg『思想史の名脇役たち』(河出書房新社)

 哲学――。それは、神は存在するのか、一体なぜ自分は存在するのか、幸せとは何か、自由とは、人は死んだらどうなるのか……と、ナゾだらけの世界や人生の根本原理を追求するという、なんとも壮大で、ナカナカ難しい学問である。

 代表的な哲学者といえば、ギリシャ哲学の父・ソクラテスに始まり、近代では宗教改革で有名なルターやカルヴァン、『社会契約論』の著書などで知られるルソーなど、教科書にも出てくるような人物たちが頭に浮かぶのではないかと思う。

 だが、『思想史の名脇役たち』(河出書房新社)の主役は、そんな偉人たちではない。ジャン・グルニエ、シャルル・ルヌヴィエ、ジュール・ラニョー、ジャン・ポーラン、ユージェーヌ・ミンコウスキー、ガブリエル・マルセル、ジャン・ヴァール、レオン・ブランシュヴィックという、一般的にはほとんど無名と言ってもいい、20世紀のフランス哲学者たちである。

 著者は、明治大学文学部教授で、有名無名さまざまな思想家の訳書を手がけ、思想家に関する著書も多数の合田正人氏。本書の中で「その道の頂点を極め、一躍脚光を浴びた時代の寵児たちが、知名度もはるかに劣り、さして評価もされていない人物を、敬愛する師として、あるいは、及びがたい目標として語ることがある。そんなとき、『ああ、いいな』と感じる」と語る合田氏は、知名度は低いものの、知る人ぞ知る“名脇役哲学者”たちの知られざる人生、周囲に与えた影響などをひも解いていく。

 本書では、基本的な哲学の知識の説明は一切入らず、主役たち以外にも次々と登場人物が出てくるため、読み進めるには哲学に関する知識が必要とされる。そのため、私のような凡人は、1ページ読み進めるのにかなり苦労する。だが、その分、この手の話が好きな人にとっては知識欲が存分に刺激される良書なので、じっくりと時間をかけて読み解いてほしい。
(文=上浦未来)

●ごうだ・まさと
1957年、香川県生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課中退。琉球大学講師、東京都立大学助教授を経て、現在、明治大学文学部教授。著書に、『レヴィナスを読む』(ちくま学芸文庫)、『吉本隆明と桐谷行人』『田辺元とハイデガー』(ともにPHP新書)、『幸福の文法』(河出ブックス)など。訳書に、レヴィナス『存在の彼方へ』(講談社学術文庫)、ジャン=クレ・マルタン『ドゥルーズ』(河出文庫)など。有名無名さまざまな思想家の著書を訳し、日本に紹介している。

最終更新:2014/07/19 15:00
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