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アスリート列伝 第16回

「セ・リーグを背負ってほしい」ダルビッシュが“マエケン”前田健太に託した想い

51dJD7YaupL.jpg『エースの覚悟』(光文社新書)

 今日から始まるプロ野球オールスターゲームで、ファン投票第1位に輝いた広島東洋カープ・前田健太には、苦い夏の経験がある。

 2006年、夏の甲子園では、3連覇のかかった駒大苫小牧と早稲田実業の決勝戦が行われていた。駒大苫小牧のエースは田中将大、対する早稲田実業は斎藤佑樹。彼らの投げ合いによって、試合は1-1のまま延長15回で引き分け。翌日の再試合の結果、3-4で早稲田実業が駒大苫小牧の3連覇を阻むこととなった。

 PL学園のエースだった前田は、この夏、甲子園の土を踏むことはなかった。PL学園は大阪府予選ですでに敗退しており、代わりに大阪府代表として出場していたのは、現・北海道日本ハムファイターズの中田翔を擁する大阪桐蔭だった。

「あの大会の輪の中に入れなかったことが、非常に残念でした。(中略)あの決勝での引き分け再試合。何年も伝説として語り継がれるような大会の輪の中に、自分は参加できなかった。その悔いはずっと残りました。『この悔しさを消すには、自分がプロに入って活躍するしかない』心の中でそう誓いました」(前田健太『エースの覚悟』光文社新書)

 悔しさだけが残った夏から8年。前田は、押しも押されもせぬ広島カープのエース投手として活躍をしている。現在セ・リーグ3位と、昨年の勢いのまま好調を維持している広島カープ。1998年から続いた15年連続Bクラスという暗黒時代がウソのような成績だ。もちろん、この好調を支えている要因が、前田の存在だろう。今季もすでに9勝を挙げており、防御率は2.08(7月18日現在)と、セ・リーグトップの記録を誇っている。

 07年、ドラフト1位の指名を受けて広島カープに入団した前田。ルーキーイヤーこそ2軍からの出発だったが、持ち前のコントロールのよさやストレートの伸びが評価され、2年目からエースナンバーである背番号18を託されると、1軍のローテーションピッチャーに昇格する。4年目となる10年には最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠と共に、投手にとって最高の栄誉となる沢村賞を受賞し、その才能を一気に開花させたのだ。

 そしてこの年、前田にとって忘れられない試合が生まれた。

 5月の交流戦で、広島カープは日本ハムと対戦することになった。相手の先発はダルビッシュ有。憧れの先輩だったこともあり、前田自身もこの対戦を心待ちにしていた。バッターとしても打席に立ちながら、当時日本球界のエースとして君臨していたダルビッシュがいったいどのようなボールを投げてくるのか、その球筋はどのようなものなのか、少しでも盗み取ろうとしていたのだ。

 そんな前田に対して、ダルビッシュは渾身の力を込めて投球を行っていく。ダルビッシュにとってはピッチャーを打ち取ることなどたやすいはずなのに、ストレート、スライダーのほか、ツーシーム、フォーク、チェンジアップなど、自分の持つほとんどすべての変化球を投げてきたのだ。前田はこの時の記憶を振り返り、「何かねらいでもあるのかと不思議に思った」(同)と記す。そして、その「ねらい」は、ダルビッシュのブログで明かされていたのだ。

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